表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

309/338

第三百八話 古代遺跡の起動に消える王都

 大型の要塞のデータをくまなく確認し、あの改造エルフから聞いた事を、全てインプットしたうえで、アイドナが演算処理をした結果が出る。算出したのは、やはり、王都のシステムを起動させる事だった。その為には、王都に残った民を全て、避難させる必要があると判断する。


 王都の騎士達と共に、次々にリンセコートに向けて、市民達が出発していった。


 オーバースが、オブティスマに言う。


「オブティスマ! 市民達をよろしく頼むぞ!」


「もちろんだ。今の俺は、戦力にならんからな。それでも、市民は守る!」


 腕が一本欠損してしまったので、オブティスマが自らその役割をかって出てくれた。


 そしてフィリウスが、オブティスマに手紙を渡す。


「妹に、これを渡してください。話は、全て通してあります」


「わかりました。パルダーシュ辺境伯、確かにお預かりいたします」


 そうして避難民を率いた、オブティスマが王都を出て行った。


「やるか」


 王都の騎士は八割が市民の護衛で出て行ったので、残っているのは青備えの方が多い。俺は教会の地下から布に包んだ改造エルフを出し、四つ足ドローンにのせて運ぶ。運び込む先は、古代遺跡がある場所。王都の騎士達も捕らえた騎士達も、青備えやルドルフやラングバイまでも王都の外で待機させていた。


 オーバースが俺に言う。


「どうなるだろうか?」


「わからん。だが、想定では、リンデンブルグの遺跡が動いてなければ、ここで完結はしないだろう」


「リンデンブルグの遺跡が動いているとなれば?」


「何らかの機能が発動する。だが、それはリンデンブルグ帝国が既に壊滅してる事を意味する」


「そうだな。遺跡が発動しているとなれば、リンデンブルグはやられたと考えるのが妥当か」


「そうなるだろう」


「憂鬱な話だ」


「ああ」


 入り口には警護の騎士達がおり、俺達が来るのを見て入り口を開ける。


 オーバースが王都の騎士達に言う。


「お前達も、リンセコート領に行った方が、安全だったかもしれんのにな」


 すると騎士達が言う。


「将軍。それは違います。皆が残りたかったのに、我々が皆に選ばれてここに居るのです。むしろ、これは光栄な事なのです」


「ふふっ。そうかよ、お前らは根っからの王宮騎士なんだな」


「ありがとうございます」


 クルエルとビルスタークとレイたち四人が、ガラバダの牢獄の警護についており、アーンの大型鎧とアラン、風来燕と、フィリウスが教会の地下を警護していた。システムを起動させて、万が一、サイバネティック・ヒューマン達が目覚めてしまった時に、封じこめるためだ。


 遺跡に来ているのは、俺とオーバース、メルナと魔導書のマージ、そしてワイアンヌ。ワイアンヌは、四つ足のドローンをコントロールするために来てもらっている。中に入ると、文官が俺達に道を開けた。そこで、オーバースが大声で言う。


「全員! 速やかにこの地下古代遺跡から出るんだ! 外に出たら、騎士達と共に王都の外へ避難しろ! 外では青備え達が待っている!」


 皆が急いで荷物を持ち、入り口から外に出て行った。


 そして俺が言う。


「万が一は、王都が吹き飛ぶ。そうすれば、俺達の負けだ」


「だが、起動させねば、いずれにせよ終わりなのだろう?」


「オーバースと俺、賢者、パルダーシュ辺境伯に天工鍛冶師が全員吹き飛べば、大陸はあっというまに、奴らに支配されるだろう」


「もはや、選択肢がないのが辛いところだな」


「ああ」


 そして四つ足のドローンに乗せた、改造エルフを見る。


「これが鍵か」


「ああ。まずはコイツに賭けるしかあるまい」


 メルナもワイアンヌも、覚悟を決めた顔をしており強く頷いた。パネルの前に立ち、メルナに言う。


「エルフの闇魔法を解いてくれ」


「うん……」


 改造エルフの闇魔法を解くと、ゆっくりと目を開けて俺達を見渡す。


「起動させる気になったみたいだな?」


 それには、俺が答えた。


「ああ。侵略者とやらが来る前に、何とかしなければならないのだろう?」


「そうだ」


「で、どうすればいい?」


「私を、動力の最深部に連れて行けばいい」


 俺が一度、入ったところ。あの縦穴に何の意味があるかと思えば、正真正銘の鍵穴だったという訳だ。


「わかった」


 布一枚だけを纏ったエルフを連れて、俺が後ろを振り向く。


「なら、行って来る」


「いい結果になる事を祈ってる」


「コハク! 私も行く!」


 俺は少し考えてメルナに言う。


「……そうだな。どうせ、同じことだ」


 吹き飛んだときは、どこにいても同じだ。最後にと思えば、メルナを連れて行った方がいい。


《まるで、ノントリートメントのような考え方です》


 なぜだろうな? そうしてやりたいんだ。


《非効率ですが、問題はありません》


 そして俺はエルフに入り口を教え、そいつは穴に入っていく。俺が後ろをついて、メルナがその後ろをついて来た。縦穴になり、それを下へ下へと降りて行った。そして、生体動力の核の部屋へと出る。


 エルフが言った。


「おお。ここが、そうか!」


「そうだ。だが、これが爆発すれば、都市が吹き飛ぶ」


 しかしエルフが首を振る。


「破壊してしまっては、フィールドの発動がしない」


「それは、侵略者用の防護フィールドだな?」


「そうだ。私はそれを起動させる鍵だ」


「そうか……」


 すると女のエルフは、うっとりした目で生体動力の核を見て言う。


「私は。これで、お役に立てる! 超越者様が、私に与えてくださった使命を全うできる!」


「どうするんだ?」


 するとエルフは、するすると服を脱ぎ始めた。白くて細身の、女の体が晒される。そしてゆっくりと、生体動力の核に向かって近づいて行く。触れる前に、くるりと俺達の方を向いた。


「貴様らには、感謝せねばならないのかもしれない」


「どういうことだ?」


「数千年もこれを守り続け、今日の日を迎えられた。貴様らも、超越者様の使命を全うしたのだからな」


「……守るように仕向けられていた?」


「そうだ」


 するとマージが言う。


「そう言う事かい……これで、辻褄があったようだね。わたしら人間は、たしかにこれらを守るようにして生きて来たからねえ……。結界石も、超越者の知恵だったんだろうねえ……」


 エルフが言う。


「そうだ。素晴らしい創造主。お前達も、その仕組みの一部と言うわけなのだ」


「なるほどねえ」


「お前達の寿命は、たかだか百年。私は千年以上この時を待っていた……」


「この日のために、それほどの時間を?」


「ああ……幸せだ。私は、やっと役に立つことができる」


 そう言って、恍惚とした表情をしながら、動力核に背中を持たれかけた。すると、動力核からスルスルと触手のような物が出て来て、パワードスーツと繋がっていた穴に入っていく。


「ああ……どうぞ……お役にたててくださいまし……」


 次の瞬間、エルフの表情が消え動力と一緒に輝きだした。体の半分が動力に沈み、ほとんど一体化した状態になっていく。


 ゴウンゴウンゴウンゴウン! と音を立てて、動力が活性化していく。俺はメルナを庇うように立ち、その光を見つめている。もう、眩しくて見ていられないほどになり、メルナを連れてそこを出た。


「出よう」

「うん」


 俺達が縦穴に入ると、その光がついて来るように光り輝いている。急いでメルナの尻を押し、横穴に入って一気に外に出ると、オーバースが慌てていた。


「来たか!」


「何かあったか?」


「その板が光ってる」


 操作パネルも光っており、どうやらそれも全て活性化しているようだった。


「ここを、出よう」


「わかった」


 俺たちは、慌てて外に出て行く。そして墓地を出て離れるとき、ワイアンヌが言った。


「お館様! あれを!」


 振り向けば、墓地全体が輝いていた。あそこに居たら、俺達も取り込まれていたかもしれない。だがそれは、まだゆっくりと拡大しており、墓地の外壁を乗り越えて迫って来る。


「これは……」


《動力が増強されています。更に範囲は拡大するかと》


「オーバース! クルエルのところに行き、闇魔法で封じたガラバダを連れて王都の外へ!」


「わかった!」


 俺とメルナとワイアンヌが、急いで教会へと向かう。教会に飛び込むと、フィリウスと風来燕達が驚いた顔で迎えた。


「コハク!」


「フィリウス! すぐに都市を出る必要がある!」


「な、どうした?」


「説明している暇はない。ボルト! 未知の敵を運び出すぞ!」


「おう!」


 俺達はキメラ・マキナの二人を、四つ足のドローンに積み込み、闇魔導士も連れて急いで教会を出た。既に光は更に拡大してきており、王都の中心を包み込んでしまっている。


「急げ! 拡大している!」


 門に向けて、走れば正門は開いていた。横からオーバース達が、ガラバダを担いでやってくる。


「お館様! あれは?」


 レイが聞いて来る。


「説明は後だ! とにかく走れ!」


 俺達が正門を飛び出すと、皆が王都の方を見ていた。


「皆! とにかく、王都から離れるんだ!」


 俺が言うと、皆が一目散に王都から離れていく。振り向けば、王都のほとんどが白光に包まれていた。


《どうやら拡大は止まったようです》


 もともと、王都の外壁がその範囲だったのか?


《その可能性が高いです》


 真白な光がドーム状になって、王都を包み込んでいた。それを見て、皆が呆然としている。


 すると、アーンが言う。


「あれを見るっぺ!」


 そのドームの頂上部分から天空に向けて、光の柱が立ち上っていく。それは雲を突き抜けて、更に上へと向かっていった。


 これは……。


《コロニーと繋がった可能性が高いです》


 ワームホールか?


《不明です》


 だが、ここまで来てしまったら、もうどうする事も出来ない。俺達は、ただ呆然としてそれを見つめるしかなかった。すると背負子を背負っていたワイアンヌが、俺に言う。


「お館様。多分、円盤が震えています」


「なに?」


 ワイアンヌが、背負子から超越者の金盤を出す。するとそれは、はっきりと震えていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ