第二百三十五話 炎のアヴァリと邂逅
俺は単独で、山の上からシュバーン村へと下りていく。エックス線透過で見る限り、村人は集中して一カ所に集められており、それを未知の敵らしき存在が見張っているようだ。暗い森の中には月明かりは届いてないが、アイドナが俺の視界を確保してくれている。村人がこちらに目を向けても、俺達の事には気が付かないだろう。
《夜に、村人から逃げられないようにしているのです》
なるほどな。
村の裏手に行くと、アイドナが俺に警告する。
《止まってください。原始的な罠です》
足元に線が張ってあり、それに足を取られれば鈴がなるようになっているらしい。アイドナがガイドマーカーで、足を置く場所を指定して来た。枯れ木なども踏まないように、調整しているらしい。そしてまた警告される。
《また止まってください》
俺が足を止めると、どうやら屋敷から一人の人間が外に出てきたようだ。そいつがゆっくりと村の周辺を歩き回り始める。
なんだ?
《見張らせているのでしょう》
俺はスッと、壁の陰に身を隠した。しばらくすると、目の前を村人が通り過ぎていく。しかも足に鈴が括り付けられており、念入りに脱走をさせないようにしている。
《かなり疲弊しているようです。まともに食事をとっていないかと》
敵は自分では動かないのか?
《そのようです》
なぜだろう?
《単独だからではないでしょうか? 目を放せば、村人が逃げると考えているのかもしれません》
村人が元の場所に戻って行く。
《歩く鈴の音がなっている時がチャンスです》
俺はすぐに村に侵入し、その村人と一定の距離をとりながらついて行く。そして村人が大勢いる建物へと入っていくのを見て、俺は建物の陰に隠れて監視する。
敵がいるな。
《なぜ、村人を生かしているのでしょう?》
さて。
エックス線透過による視界には、建物の中の人間と未知の敵が映っている。
だが次の瞬間だった。
リン! と足につけた鈴の音がなる。すると歩いていた人間が、縄のようなものに吊り下げられるのが映った。ボタボタと血がしたたり落ち、その村人の心臓が鼓動を止める。
《どうやら、血と体液を吸収しているようです》
尻尾は、王都で切り離したはずだが。
《復活したのかもしれません》
あれで……生き延びてるのか。
《体の補修に使われている可能性があります》
養分に……してるのか?
《そのようです》
仕掛けよう。
俺がそう言うと、アイドナからガイドマーカーで動きを指定される。
《龍翔飛脚》
ガシャン!
ガラス戸を突き破り突入すると、吸収していたアヴァリが、吸っていた人間を投げ捨てて飛び去った。
「きゃあああああ」
「うわあああ」
「なんだ!」
村人たちは慌てているが、俺は一気にアヴァリに飛びかかる。だがアヴァリは直ぐに炎の剣を手に取り、一気にそれを振ってきた。炎は一部の村人にも襲い掛かり、建物に火を放つ。
《屋敷を壊してしまいましょう》
よし。
《瞬発龍撃》
燃えている場所に強力な剣撃を飛ばし、炎を一気に消しさる。壁も壊れ、外に出れる穴が出来た。
「皆、逃げろ!」
俺が言うと、もたもたと村人たちが動き出した。
《弱っているようです》
アヴァリが構えている!
《龍翔迅雷》
縮地よりも速い速度で、剣を振りかけたアヴァリに体当たりを食らわせ、壁を突き破って外に出た。
どうやら青い鎧に身を包んでいるので、俺だと気が付かないらしい。
「ぐぬう。この力は!」
慌てている。
ドスンとお互いが地面に転がり、距離を取って対峙する。アヴァリの剣からは炎が上がり、次の一撃を振るわんと構えているが、俺の力を見て様子を見ているようだった。こちらを探るように声をかける。
「青い鎧……珍しいな」
《揺さぶりましょう。まだ村人が避難できていません。トークスクリプト展開》
「貴様はまだ復活していないようだな」
「なん……だと?」
「せっかく真っ二つに斬ってやったというのに、しぶとい奴だ」
それを聞いてアヴァリの表情が、憎悪と苦痛に歪んだ。
「貴様……あの時の……」
「こんな所で、人食いをして体を戻していたか?」
「なぜ……ここが……」
《焦っています。まだ完全に治ってはいないようです。嘘の情報を流しましょう》
「お前の相棒のガラバダは死んだ」
「ちっ……役立たずが……」
「どうやらお前達は、二人一対で動くようだな? それに意味があるのか?」
「なぜそれを?」
「お前らと会う時はいつも、そうだからだ」
「……」
《動揺しています。更に揺さぶります》
「ルクステリアとグラド、イラとトリス。アイツらも二人一組で動いていた」
「な……」
「やはり仲間か」
「くっ!」
アヴァリは俺を睨んでいた。突然の事で、動揺を隠せないらしい。
「神殿都市にいたからな」
「貴様。まさか……」
「お前が知る必要はない。後を追わせてやる」
カッ! とアヴァリから炎が出る。既に予測演算により攻撃を予測していた俺は、ガイドマーカーに従ってそれを避けた。
「はっ!」
《弱っているので、アヴァリを捕らえられるかもしれません》
「試してみるか」
アイドナが攻撃パターンと動きを演算し始めた。アヴァリは頭に血が上っているらしく、逃げるような素振りを見せていない。
アイドナの動きは非常に論理的で、アヴァリを少しずつ追い詰めていく。相手がいくら炎を出したところで、オリハルコンの鎧を貫通する事は出来ない。特に俺の鎧は他の奴らのとは違って、魔獣の巨大な魔力に対応している。動きは、王都でアヴァリと戦った時の数段上だった。
「くっ! 貴様! 本当にあの時の奴なのか!」
「そうだ」
ガキィィィ!
とどめを刺そうと思えば直ぐに出来たが、アイドナはコイツの動きを監視し続けた。圧倒的な戦力差で追い詰めていると、明らかに、アヴァリが焦り始める。
次の瞬間だった。
バサァ! と背中から羽が生えた。
ドシュ! ドシュ!
アイドナはこれを狙っていたのだ。飛んで逃げようとしていたアヴァリが空中へ飛んだ瞬間、俺のレーザー剣は一瞬にしてアヴァリの羽をそぎ落とした。
「うぎゃあああああああ」
ドサリと地面に落ちて転げ回っている。俺は炎の剣を足で踏みつけて、レーザー剣をアヴァリの喉元に突き付けるのだった。




