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バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

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第二百二十五話 瀕死の仲間達

 俺は最下層から走り抜け、魔獣をワザと破壊せずに上階層へと向かう。最下層前にいる人工龍を治したことで、魔獣達の役割をようやく理解したためだ。古代遺跡を建造した奴らは、あえて危険な場所に作っていたのである。誰かが不用意に破壊する事の無いように、そう考えるのが妥当だった。本来は、エクバドル王都にあるような古代遺跡が不自然だったのだ。


 なぜ王都はあんなに浅い場所にあるんだ。


《長い年月をかけて、この神殿ダンジョンのような場所を開拓したか、もしくは元々防衛機構があったものが滅びたのかもしれません。そこに都市が出来て、今に至る可能性があります》


 シュトローマン伯爵のところにあったダンジョンはどうなる?


《あれは採掘途中で、これといった機能がありませんでした。問題になるのはここや王都のように、ワームホールを発生させたり、レーザー兵器のトリガーが残っている場所です》


 ワームホールを発生させる、リバンレイを破壊したのは正解だったな。


《本来は王都の古代遺跡も、この神殿ダンジョンの遺跡も、破壊するべきですが、そうすれば住んでいる人間ごと滅びます》


 難しい問題だ。


《そのようです》


 話しながらも、仲間達がいる階層へと近づいて行くが、三十階層に到達すると同時にアイドナがアラートを鳴らした。


 ピピッ!


《戦闘が行われております。戦闘準備をしてください》


 戦闘音がするな。魔獣か?


《何かがおかしいです》


 アイドナが俺に身体強化を施し、急加速で上を目指す。仲間達がいるところへ到着すると、なんと皆があちこちに倒れており、ボルトが吹き飛んで崖に激突しているところだった。


《未知生命体確認》


 そこには二体の人型がいた。一人はボサボサの黒髪にヘアバンドのような物を付けた、小柄な男のように見える。もう一人は体のラインからすると女で、ぴっちりした灰色のボディスーツを着ている。青い髪の毛をした、美しい顔をした女だ。


 小柄なボサボサの黒髪が、こちらに気が付いてぎろりと大きな目を向けた。


「あれれぇ。もう一匹いるでら」


 それを聞いたグレーのぴったりしたボディスーツを着た女も、こちらを見た。

 

「あらん? 本当だわねえ」


 皆は?


《微弱ながら生体反応あり。致命傷を受けているのもいます》


 一人も死んでないな?


《はい》


 腹が立つ。


《冷静さを失えば危険。抽出物コントロールします》


 すると怒りが軽く収まって来た。そして俺がギロリと二人を睨んで言う。


「なんだ貴様らは?」


「いっちょまえに口きいて来るんじゃねえぇよお。お前のようなゴミクズがよう」


「本当だわねえ。下等生物だわね」


「そうでら」


《行動準備、ゼロゼロニで接触》


 ガッシィィィ!


 次の瞬間、離れていたところにいたボサボサ黒髪のチビが、棘の生えた拳を俺に叩きつけていた。


「うけたぁ?」


 もちろん、アイドナの予測演算により既に予測済みで、俺は難なくそれを手で受けている。どうやら縮地よりも早く動く事が出来るようだ。だが、驚いた顔をしていても余裕があり、すぐに追撃をしてくる。


 ギンッ!


「あれぇ!」


 そいつは短剣を飛び出させて、関節部分に正確に攻撃を突き入れて来る。だがその前に手で短剣を持つ手首部分を掴み、攻撃を寸前で止めていた。


《地龍強握》


「グッ!」


 そいつは俺を振りはらおうとしたが、俺の身体強化された握力で飛び出す事が出来ずに体がビン! と伸びた。


「な!」


 俺はそいつの腹に拳をつけて、爆裂魔法パンチを出した。


 ゴン!


「ぐえっ」


 効いたらしい。俺の鎧は特製で、何発も爆裂パンチを繰り出す事が出来る。


 ゴンゴンゴンゴン!


「がぁ!」


 そいつは青い血反吐をまき散らし始めたが、横から突然打撃が入れられる。俺は黒髪のチビから手を離し、一気に距離を置いた。すると俺がいた場所に、うっすらと女が浮かび上がってきた。


《ステルス機能です。サーモグラフ及びエックス線透過を行います》


「どうなってるのよお。おかしいんだわこんなの」


 女が慌てて黒髪のチビを引きずって、その場所から走り去った。


「げほっげほっ! こ、コイツなんかおかしいでら! ごほ! 気を付けるでら!」


 そしてボサボサの黒髪チビが、ヘアバンドから何かを引っ張り出して目につけた。その状態で俺を見て言う。


「なんだあぁ! こいつぜんぜん動揺してねえでら!」


「この状況でかしら? なんなの」


 俺は黙って一番近くに倒れている、ベントゥラに歩みよりしゃがむ。どうやら回復薬を使う暇もなくやられたらしく、気を失ってしまっているようだ。背負子に手を突っ込み、回復薬を取り出してベントゥラのフェイスをはがした。そしてそのまま口に薬を突っ込み流し込む。


 コクリ。


「う……うう……」


「起きろベントゥラ」


「こ、コハク……」


「あれは俺が押さえる。なんとか動いて回復薬を皆に」


「分かった……」


 ずるずると、ベントゥラが這いずりだすと、それを不思議そうな目で女が見ていた。


「動いたわねえ。あんなにズタボロにしたのにおかしいわねえ」


「ここで直されちゃ面倒でら」


「そうねえ」


 そう言ってスッと女が消えた。ステルス機能を使ったのだが、俺には丸見えだ。


《龍翔飛脚》


 ドン! 俺はすぐにステルス女の側に行き、抜きざまにジェット斧を振るった。


 ゴゴン!


「ぎょあ!」


 女は吹き飛んで、壁に激突した。


「イラ!」


 最初にボコボコにした黒髪のチビが、一気にステルス女に駆け寄ろうとする。だが俺はそれを見逃さずに、急接近して斧を振りかぶる。


「トリス! あぶなっ!」


 ゴボン!


 俺は構わずに、そのもじゃもじゃの黒髪のチビを斧で吹きとばす。だが、そいつは半分自分から飛んで体勢を崩しながら地面を転がった。そのままイラの所に歩み寄る。


「ハアハアハア。お前……なんだら? 下等生物のくせに」


「俺が下等生物だと思うなら、何とか対応してみたらどうだ? ルクステリアもグラドも、もう少し頑張ったぞ」


 俺がそう言うと、トリスと呼ばれた黒髪も、イラと呼ばれた女も目を丸くした。


 そしてイラが言う。


「なぜ……二人の事を」


「前に会った」


「う、うそ……じゃあお前が……」


「殺した」


 それを聞いて二人は途端に、体をこわばらせる。


「うそ……あの二人が死ぬなんてありえんでら」


「そうだわさ」


「嘘じゃない」


 そう言うと二人の動きが止まる。そしてじりじりと起き上がり、俺に向かって睨むように立った。


 どうかな?


 《まもなく解析が終わります》


 よし。


名前  トリス

体力  354

攻撃力 876

筋力  1101

耐久力 357

回避力 258

敏捷性 426

知力  98

技術力 899


名前  イラ

体力  308

攻撃力 841

筋力  363

耐久力 374

回避力 417

敏捷性 321

知力  192

技術力 610


 なるほど。ルクステリアやグラドより多少劣るが、優れている部分もあるという訳だ。


《同じ種族です》


 何故このタイミングで仕掛けて来たのか。


《ここまでの労力を省く為だと推測》


 二十九階層で止まったから、ここで断念したと思って襲ってきた。


《その可能性が高いです》


 俺が見ている前で、イラの両手からスルスルと光る鞭が伸びてきた。トリスの体の全体からは、短剣のような物が生えだしてハリネズミのように変わる。


「油断してたわねえ」


「ああ、こんなのがいるなんて聞いてねえでら」


 さっきとは気配が変わる。


《では新しい魔力の配合と強化試験をします》


 わかった。


 そして俺と二人の間には、目に見えるかのような殺気が立ち込めて行くのだった。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しみにしています! ところで誤字報告 「なんだあぁ! こいつぜんぜん同様してねえでら!」 動揺では?
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