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バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

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第百五十九日 男爵領での初日

 王宮からの使いに案内されて到着した男爵邸は、想像していたよりもかなり汚かった。この土地より東には道はなく、山々があるだけで宿場も無い。なので王宮の使者達も早々に帰っていった。


 ヴェルティカが言う。


「ボロボロね」


「だが穴は開いてない」


「まあ、そうね。贅沢は言わないわ」


「お嬢様…いくらなんでもこれは」


 するとヴェルティカが腕まくりをし始めて、使用人達に言った。


「いいの! さあ! 皆で掃除するわよ!」


「「「「「はい!」」」」」


 ヴェルティカの号令で、使用人と風来燕、俺とメルナも掃除をし始める。


 ここは一度、取り潰しとなった男爵領で、シュトローマン伯爵の管轄になっていた。ほったらかしにされていたらしく、領民もそう多くはない。もちろんこの男爵邸もほったらかしにされていて、荒れまくっているのだった。


「井戸はどこかしら?」


 すると使用人が言う。


「お嬢様! こちらです!」


 ボロボロの櫓が汲まれ、木で蓋をされている井戸があった。俺がそこに行って木の蓋を取り去る。

 

 ぴちょん!


「水はあるようだ」


 するとボルトが言った。


「ベントゥラ! 桶を荷物から持って来てくれ!」


「あいよ!」


「さて。壊れた櫓を治すとすっか! ガロロ! 木を切りに行こう!」


「そうじゃな! 幸いにも山はすぐそこじゃ!」


 そうして、ボルトとガロロが山に向かっていった。


 俺が井戸を覗く。


《底に泥やゴミが沈んでいるようです》


「ヴェルティカ。井戸の底が汚れている」


「ずっと、使われていなかったみたいだから」


 そこにベントゥラが戻って来た。


「桶持って来たぜ」


「よし、それを縄でつないでくれ」


「どうすんだい?」


「俺が潜って底をさらう、ベントゥラは上でそれを取ってくれ」


「あいよ」


 俺は服を脱ぎ下着一枚になった。メイド達が俺を見て目を逸らす。


 ベントゥラが言った。


「すっげえいい体してんなあ」


「そうか? とりあえず頼んだぞ」


 そして俺はすぐに井戸の中に飛び込んだ。


 ドボン!


 すると足がずぶずぶと沈み込む。


「下ろせ!」


 上から桶が落ちて来て、俺はそれを下の泥に潜らせた。


「上げろ!」


 スルスルと桶が上がっていく。そして空になった桶がまた落ちて来た。俺は再び泥をすくい上にあげてもらう。それを何十回も続けていると、ようやく硬い床が足についた。


「もう少しだ!」


「あいよ!」


 ボルトの声だった。どうやら彼らも戻ってきたらしい。俺が何度かやっていると、いよいよ泥が無くなった。


「よし! 綺麗になった!」


 するとボルトが言う。


「賢者様が浄化するとよ! メルナを降ろしてやる!」


「わかった!」


 メルナが桶の縄につかまってスルスルと下りて来た。下着姿になっており、濡れても良いようにしているみたいだ。とりあえず俺はメルナを肩車して上に言う。


「いいぞ!」


 すると上からマージが言った。


「メルナや、さっき教えた浄化魔法を詠唱しな」


「清き水よ、汚れを洗い流し、生命を蘇らせよ!」


 シャアアン!と光り輝き、水が透明になっていく。すっかり綺麗になったところで俺が言う。


「綺麗になった!」


「それで飲めるさね」


「よし。じゃあ! メルナを上げてくれ!」


「あいよ!」


 メルナが綱につかまりスルスルと上がっていく。そしてまた桶が下りて来たので俺が綱につかまった。


「頼む」


「よっしゃ」


 俺が地上に出ると、皆が水を汲み始めタライに移して運んで行った。男達は敷地内の草刈りをしており、さっきよりだいぶマシになっている。


 するとボルトが言う。


「馬を入れなきゃならねえが、馬小屋も汚ねえんだ」


「なら掃除しよう」


 俺達は水を汲み、何度も往復して馬小屋に水を撒いて行く。それをパルダーシュから持って来たブラシで掻きだし、馬小屋を磨いた。馬は馬車から外され、ベントゥラとガロロが一頭一頭連れて来る。


「餌がいるなあ」


「なるほど。餌は何処にあるだろう」


「干し草でいいと思うが、村人に聞いてみるしかねえな」


「わかった」


 そして俺はヴェルティカの所に行って、干し草の事を伝えた。


「あ、それじゃあご挨拶もあるので、私も行くわ」


「わかった」


 俺とヴェルティカが、見える先の家に向かって歩き始める。来るときもポツリポツリいた人々が頭を下げていたが、まだ正式に挨拶はしていなかった。


「こんにちはー」


 ヴェルティカが挨拶すると、中年の女が出て来る。


「こ、これはこれは! 領主様!」


「すみません。挨拶もきちんと終わっていないのに」


「いえいえ! どうなさいました!」


「干し草を売っていただける所をご存知?」


「それなら、牧場をやっているカパルラのところですねえ」


「どこかしら?」


「それでしたらご案内いたします」


 村民は俺達を連れて、村はずれの方に向かった。するとヤギのような動物を飼っている牧場に到着する。その牧場に入りしばらく行くと、ヤギを撫でている老人がいた。


「カパルラ! 新しい領主様が来たよ!」


「こ、これはこれは、こんな下々のところまでよく」


「すみません。馬の餌が欲しくて、干し草を売ってもらえないかしら」


「干し草でごぜえますか。それならいくらでもありますが」


 それを聞いてヴェルティカが言った。


「あの。可能ならば、お手当を出しますので、こちらで当家の馬の面倒を見ていただけないかしら?」


「男爵様の! そんな畏れ多い!」


「いいのです。馬も狭苦しいところに追いやられるより、こんな広々とした牧場で飼っていただいた方が喜びます」


「だ、男爵様がそれでよろしいのであれば」


 それに俺が答えた。


「よろしくおねがいする」


「わ、わかりやした」


 そこでヴェルティカが懐から財布を取り出し、農夫のカパルラに銀貨三枚を出した。


「は! こ、こんなにいただけやせん!」


「馬の面倒を見ていただくというのですから、当面のお金は必要です」


 すると案内してくれた女と、カパルラが顔を見合わせる。


「なぜ、お金をいただけるのです? わたしらは、男爵領の人間です。言われたとおりの事をするのは当たり前のことで、わたしらが税を納めるならいざ知らず、なぜ男爵様からお金をもらうのですか?」


「えっ? 前はそうだったの?」


「はい。シュトローマン伯爵様の方針で、貴族様に奉仕をするのは当たり前だと聞いとります」


「それはおかしいわ。やっていただいた事には対価を払うのが当然の事、一方的に貴族が奉仕されるなんてことは無いです」


「「えっ!」」


「とにかく。お金は受け取ってください。そして馬は後で引き取りに来ていただけますか?」


「わかりやした。伺います!」


 そうして俺達は牧場を出た。中年の女も不思議そうにしているが、ヴェルティカが女に言った。


「一度、領民を集めてお話したほうが良さそうです。今日は男爵邸のお掃除で手が離せないので、明日村長の所にご案内いただけないでしょうか?」


「わかりました! それでは明日」


「よろしかったらこれを」


 ヴェルティカは来るときに持って来た、腐食防止の葉っぱにくるんだ干し肉を渡す。


「そ、そんな。何もやっていないのにいただけません」


「あ、何でもない干し肉です」


「そんな御馳走を」


「大したものじゃないですから」


 女にそれを渡し、俺達は男爵邸に向かう。女はいつまでもお辞儀をし、俺達を見送っていた。


 ヴェルティカが言う。


「何かしら。この領民は、対価を受け取らないようになっているみたい」


「伯爵の方針とか言っていたな」


「なるほど……」


 俺達が男爵邸に到着すると、草むしりはあらかた終わり山積みにしてあった。男達も掃除のために、屋敷の外装を磨いているところだ。俺も桶に水を汲み、それを持って壁際に行く。


 ボルトが俺に聞いた。


「村人はどうだった?」


「馬を預ってくれると言っていた」


「おお、良い村人だな」


「銀貨三枚を渡したら、やけに驚いていた」


「ふーん。そうなんだな」


 そしてカパルラが馬を引き取りに来て、使用人数人と共に出て行った。


 俺達が掃除を終える頃、日が落ちて暗くなる。使用人達が急いで食事を用意し始め、俺達は男爵領での一日目を終えるのだった。

2024年はお付き合いいただきありがとうございました!

読者の方々には感謝しかありません!

来年も面白い話を書くために頑張ります!

よいお年をお迎えください。

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― 新着の感想 ―
気になる点: 「干し草でいいと思うが、村人に聞いてみるしかねえな」 使役する馬に草だけではカロリー不足。必ず飼葉に麦類を混ぜる必要があります。男爵の馬がガリガリの痩せ馬では悲しいですよね。それと、”…
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