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【完結】亜人の王 〜過酷な異世界に転移した僕が、平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
19章 創世期の終わり

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第540話 亜人の王


「--タツヒトお兄ちゃん、朝だよ。起きて、タツヒトお兄ちゃん……」


 微睡の中、エマちゃんの声が聞こえる。

 あれ、僕は王城の自室で寝ているはずなのに、なんで彼女の声が…… これ、夢か……?


「ねぇ起きて。起きてくれないと……」


 しかし声は止まず、誰かがベッドに乗り、その息遣いが間近に感じられる程近づいて来たのが分かった。

 そこで目を開けると、その距離僅か数cm、至近距離にエマちゃんの顔があった。


「「わっ……!?」」


 驚いて僕が声を出すのと同時に、僕の顔を覗き込んでいたエマちゃんもワタワタとベッドから降りていく。


「お、おはようエマちゃん。 --あれ、もうこんな時間か…… ありがとね、起こしにくてくれて」


 上半身を起こして枕元のスマホを見ると、すでに朝食と昼食の間くらいの時間だった。昨晩は遅かったのと、本日は午前休なので気が抜けていたらしい。


「う、うん。おはよ、タツヒトお兄ちゃん」


 エマちゃんは、赤い顔を少し僕から逸らしながらそう言った。

 そうだった。彼女はつい一週間くらい前から王城で働いてくれているんだった。

 成人までまだ一年あったのだけれど、エマちゃん本人の強い希望とヴァイオレット様達の後押しで、侍女見習いとして勤めてくれている。

 最近ますます綺麗になって、今着ているお給仕服もとても似合っている。


「えっと、お着替えする? て、手伝おっか……?」


 恥ずかしげにこちらをちらちら見るその姿に、僕は自分の鼓動が速くなっていくのを感じた。

 原因は分かっている。彼女が装備しているケモ耳とケモ尻尾だ。

 お妃さん達の勧めで付けているそうだけど、正直効果が抜群すぎる。めちゃくちゃ可愛い。


「あ、いやいや、大丈夫だよ。ありがとう。先に食堂に行っててくれる? すぐに僕も行くから」


「そっかぁ…… 分かった。待ってるね!」


 少しほっとしたような表情を見せた後、エマちゃんはいつもの人懐っこい笑顔を浮かべながら部屋を出て行った。


「うーん…… やばいなぁ」


 寝室で一人呟く。これだけされたら、流石の僕でもエマちゃんやお妃さん達の意図に気づく。

 でも僕、めちゃくちゃ小さい頃から彼女を知ってるんだよなぁ…… どうにもそういう目で見る事に罪悪感があるというか……

 --まぁ、今すぐ結論を出さないといけない話じゃない。昔からの仲良しの子が側に居てくれる事を、今は嬉しく思おう。






 寝室を出て食堂に向かう途中、僕はふと思い出した。

 創造神ジュバール、シュハルさんが逝去したあの日から、今日でまる一年経つのだ。


 我が国と戦争状態にあった帝国、馬王国、魔導国の三国とは、終戦直後は相当ごたついたものの、現在は無事国交が正常化している。

 ちなみに帝国におけるヴェラドの公爵領は、正式にお取り潰しになった。

 それは喜ばしいのだけれど、奴の腹心だった黒狼騎士団長グラティアなどはまだ捕まっていない。彼女はヴェラドに心酔していたから、きっと僕を恨んでいるだろうな……


 アラク様と勇魚の神獣(ナヒィル・イルフルミ)様の元へは、あの日の後も遊びに行かせてもらった。

 ただ、大災厄の経緯を知った僕らに対して非常に気まずそうにしていたので、素直に感謝しかしていないと伝えさせてもらった。


「いやー、よかったわい……! お主らに嫌われたら、妾、多分千年くらい不貞寝しておったからのぉ」


「蜘蛛の。それではこの者達と今生の別れになってしまうぞ。全く……」


 そんな掛け合いをするアラク様と勇魚の神獣(ナヒィル・イルフルミ)様は、相変わらずとても仲良しに見えた。多分十年来どころか、億年来レベルの大親友なんだろうな。


 僕の王様友達、緑鬼(ホブゴブリン)のエラフ君については、無事にハーレム友達にもなる事ができた。

 彼のお妃さんのマガリさんの手腕により、豚鬼(オーク)魔人、シュカーラも彼のお妃さんになったのだ。

 以来エラフ君とは、ハーレムにおける適切な振る舞いについてよく議論するようになった。が、議論しても答えが出ない場合の方が多いんだよね……


 呪炎竜(ファーブニル)親子は、あの日以来結構な頻度で王城を訪ねるようになった。

 どうやら子供魔竜にせがまれて来ているようで、親の方は毎回ちょっと面倒くさそうにしている。ちなみに子供魔竜には、その鳴き声から勝手にキューちゃんという愛称をつけた。

 キューちゃんと呼ぶと、駆け寄ってきてキューキュー鳴いて甘えてくれるので、王城のみんなはあの子にメロメロだ。キューちゃんには、いつか僕らの子供達とも友達になって欲しいと思う。


 一番心配だった二プラトはというと、僕らに復讐するでもなく、あの人工島に聳え立つ塔にただ引き篭り続けている。

 彼女のところには、同僚のカサンドラさん、アシャフ学長、ペトリア猊下がちょくちょく様子を見に行っているし、僕らもたまに会いに行く。シュハルさんも彼女の事を気にかけていたし、なんだか放って置けないのだ。

 カサンドラさん達とは島を訪ねた際によく話すのだけれど、彼女達はシュハルさんの遺言通り好きに生きているようだった。ただ、カサンドラさんには頻繁に手合わせを所望されてしまうので、結構大変だ。

 さておき、目下の目標は、ニプラトにシュハルさんの墓参りをしてもらう事だ。

 シュハルさんには、みんなとよく話し合って、王城にあるレシュトゥ様の隣のお墓に入って頂いた。

 なのでニプラトには、まずあの人工島から出て来てもらう必要があるのだけれど…… 先は長そうだ。


 そんなふうに細々とした変化や、少しの不穏の影はあるけれど、今のところ世界は平和だった。






 食堂で遅めの朝食を摂った僕は、その後子供部屋へと足を運んだ。


「「ぎゃぁぁぁぁん!」」


 すると扉を開けた瞬間、子供達の元気すぎる泣き声が僕の鼓膜を揺らした。


「おぉ、今日も皆元気だな」


「あぁ、陛下。ようこそお越し下さいました」


 忙しそうに僕を出迎えてくれたのは、侍女のアマートさんだ。部屋には彼女の他にも侍女が何人かいて、非番のお妃さん達の姿もある。


「うむ。どれアマート、我も子供達のおしめを替えよう」


「きょ、恐縮です……!」


 今この部屋には実に十二人もの幼児、乳児がいる。ベビーベッドが十二も並んでいる様は結構壮観だ。その男女比はほぼ半々。全員が僕の子供である。

 一年前のあの日。全てに片が付いた開放感から、僕らはその、沢山頑張ってしまったのだ。その結果がこの子供部屋である。

 まさか、ヴァイオレット様と当時妊娠中だったフラーシュさん以外の全員が同時に懐妊するとは……

 幸い、二ヶ月ほど前にその全員が無事に出産を終え、子供達は日々元気にすくすくと育ってくれている。


「はーい、気持ち悪いの替えたよー」


「あぶー」


 ベビーベッドで泣いている子達のおしめを一通り取り替えると、子供部屋の中はだいぶ静かになった。


「ふふっ。陛下、だいぶ取り替えるのが上手くなったのでは? とても国王の手際とは思えませんでしたよ」


 声に顔を上げるとメームさんだった。僕と彼女の子供を愛おしそうに抱いている。

 この子の性別だけは、諸事情でいまだによく分からない。もしかしたら両方という可能性まであるのかも。


「ふふっ、もし国王の座を追われたら子守の仕事に就くとしよう。おや、その子の服…… この辺りでは見ないものだが可愛らしい柄だな」


「あぁ、この間コメルケル会長が贈ってくれたものです。出産祝いにと」


「なるほど、コメルケル会長が…… 会長の子供も数ヶ月後には生まれるだろう。たっぷりと出産祝いを贈らねばな」


 コメルケル会長と僕らの友情、それから国家規模の商取引は今だに続いている。

 先日訪ねてくれた彼女のお腹は少し膨らんでいて、いつも彼女の側に侍っている双子との子らしかった。大変におめでたい。


「ふぇぇぇぇっ!」


 再度響いた泣き声に振り返ると、カリバルが泣いた子を抱っこしながらあやし、その隣で同じく子供を抱えたアスルがおろおろしていた。


「おー、よしよし、痛かったなぁ。 --おいアスル。なんでてめぇのガキは俺のガキを殴るんだよ。他のガキには手ぇ出ささねぇってのに……」


「ご、ごめんカリバル。私にも分からない…… めっ。どうして殴ったりするの。殴っちゃだめ」


「えぅー?」


 アスルが腕の中の子供の言い聞かせているけど、その子は不思議そうに首を傾げるだけだった。

 どうやらアスルの子がカリバルの子を叩いてしまったらしい。

 うーん…… 子供って親の行動をかなり見ていて、すぐ真似るからなぁ。その点、アスルはすぐカリバルに暴力を振るうから……


「--説得力がねぇとよ」


「そ、そんな……」


 僕と同じことを考えたらしいカリバルにそう言われ、アスルはがっくりと肩を落とした。


 一方、とてもほのぼのと交流する親子もいた。

 ティルヒルさんとフラーシュさんだ。二人は子供を抱き抱えながら、お互いの子が触れ合えるほどに近い距離で立っている。


「あはっ。あーしの子、やっぱりフーたんの子の金髪がお気に入りみたい! きれーだもんねーー!」


「えへへ…… あたしの子も、ティルヒル氏の子の黒い羽が大好きみたい。格好いいもんね」


 あはは、うふふと彼女達が話す傍ら、彼女達が抱える子達も、相手の頭を優しく撫でたり、翼をさすったりしている。うん、平和だ。


「あぁ、幸せだなぁ…… でも、もっともっと、沢山の子供達に囲まれたいなぁ……」


「んふふ…… じゃ、タツヒト君にもっと頑張ってもらおーね!」


 次に、ベビーベッド群の小脇に作られたキッズスペースを見ると、エリネンが自分の子供を抱えながらアレクシスと遊んでくれていた。

 三人の元へ向かうと、僕に気づいたエリネンが声を上げた。


「お、アレクシス。おまはんのとーちゃんが来よったで」


「とーちゃっ! おはよー!」


 ぱからぱからと突進してきたアレクシスを、僕は優しく抱き抱えた。

 この子は最近目鼻立ちもしっかりし始めていて、すでに超絶イケメンに成長する片鱗が見えている。


「はーい、おはよー。朝ごはん、ちゃんと食べた?」


「あいっ! たびた!」


「そっかそっかー、たびたかぁー。 --いつもすまないな、エリネン妃」


 アレクシスはエリネンのウサ耳が大好きらしく、僕とヴァイオレット様以外では特にエリネンによく懐いているのだ。我が息子ながら良い趣味をしている。

 しかし感謝の言葉を述べた僕に、エリネンは吹き出してしまった。


「ぶはっ……! や、やめてーな陛下。アレクシスあやした直後に王様口調に戻るの、おもろ過ぎるわ!」


 そ、そんな事言われても…… 子供と会話していると、ついつい抜けちゃうんだよね。だって可愛いんだもん。






 午前中はそんな風に幸せなひと時を過ごし、午後からは会議だった。

 少し遅れ気味に会議室に入った僕に、ヴァイオレット様が微笑みかける。


「陛下、アレクシス達のご機嫌はどうでしたか?」


「うむ。今日も子供部屋は戦場のようだったが、皆良い子にしていたぞ。ではラビシュ宰相、初めてくれ」


「はっ。では宮廷会議を始めます。本日の議案は、前回に引き続き世界秩序構想に関するものです」


 世界秩序構想。名前の通り、世界の平和を守るための何が必要か考え、小規模に実践していく取り組みだ。

 シュハルさんの遺言。亜人(あじん)達を、世界を頼むという言葉に、僕はうっかり頷いてしまった。

 頷いたからにはやるしかないので、みんなに手伝ってもらいながら手探りで進めているのだ。


「早速だがアプトゥ外務長官。先日聖国で開催された会合について報告を」


「は、はい! 我が国、吸血族(きゅうけつぞく)の王国、吸精族(きゅうせいぞく)の共和国の三国で、高官級の会合を行いました。

 我が国からは私アプトゥと、ゼル妃、ロスニア妃にもご参加頂きました。

 本会合の目的は、我が国が仲立ちする事で、残りの二国間の国交樹立に向けた顔合わせ行う事でした。それで、結果なのですが……」


 アプトゥ外務長官が言い淀み、その先をゼルさんとロスニアさんが続けた。


「いやー、全然だめだったにゃ。ウチらの顔を立てて会合に来てくれたみたいにゃけど、あいつら、にゃかよくする気はさらさらにゃいみたいだったにゃ」


「その…… 聖教の司教と言う立場からも和合を説いてみたのですが、力及ばず……

 両国の高官同士の口論が激しくなり、殺し合いに発展しそうだったため、会合は途中で解散となってしまいました……」


「そ、そうか…… しかし、まずは会合が成立した事を喜ぼう。三人ともご苦労だった」


 困り顔で肩を落とす三人を、僕はできるだけ優しい声色で労った。

 なぜ僕らが吸精族(きゅうせいぞく)吸血族(きゅうけつぞく)の仲を取り持とうとしているのか。

 それは、只人(ただびと)の絶滅を招く崩界(シャフルクトゥ)を防ぐ上で、この二種族がとても重要だからだ。


 両種族は生きる上で、それぞれ只人(ただびと)の血と精を定期的に摂取しないといけない。なので、只人(ただびと)が絶滅したら両種族も滅びる定めにあるのだ。

 大分マッチポンプ的ではあるけれど、彼女達なら僕らの取り組みにもきっと協力してくれると思うんだよね……

 しかし、この二種族は歴史的に大変仲が悪い。三国で連携するには、まずは二国の仲を取り持つ必要があるんだけど、かなりの難行のようだ。


 ちなみに、それぞれの国からのアウロラ王国への印象はすこぶる良い。

 吸精族(きゅうせいぞく)の国は、過去に大きなトラブルの解決を助けた事で、僕らに恩義を感じてくれている。

 吸血族(きゅうけつぞく)の国も、長年の仇敵だったヴェラドを滅ぼした僕らを英雄視してくれているらしい。


 どうしたものかとみんなで唸っていると、軍務顧問のケイさんとローズさんが口を開いた。


「両種族には類似点もありますが、それが逆に嫌悪感を煽っているのでしょうね。お互いがお互いに根強い偏見を持っているという話ですし……」


「ああ、長年骨肉の争いを続けてきた国同士、雪解けにはまだまだ時間を要するだろう。

 --会合は定期的に開催するとして、その、陛下が例の話をお受けすれば、状況は変わるかもしれませんが……」


「あー、うむ…… それは、わかっているのだが……」


 彼らの言葉に、僕は曖昧に頷いた。例の話とは、両国から僕に寄せられた縁談である。


 吸精族(きゅうせいぞく)の共和国からは軍務高官のディーナさんが、吸血族(きゅうけつぞく)の王国からは未婚の王女が候補として挙げられている。

 どうやら各国の首脳部が僕の体質、一線を超えた女性の位階上昇を加速させる特性に勘づき始めたようで、他の国からも縁談の話が多数寄せられている。

 血縁関係を作って国同士が仲良くするのはよくある事だから、世界の平和のためにはどんどん受けるべきだろう。もんむす好きの僕個人としても嬉しい話だ。

 けれど、一国を受け入れたら際限なく縁談が増えていきそうなので、まだ覚悟ができていない。


 コンコンコンッ!


 そこへ大きなノックの音が響き、諜報部隊のナノさんが息を切らして会議室に入ってきた。


「急報にて、失礼致します! キアニィ副士団長!」


 彼女は上官であるキアニィさんの元へ足早に歩み寄ると、ぽしょぽしょと耳打ちした。


「--わかったわぁ、ご苦労様。皆様、残念なお知らせでしてよぉ。

 北東の鉱精族(こうせいぞく)の国で叛乱が勃発。女王は幽閉され、同国は叛乱の首謀者である第四王女の手に落ちましたわぁ。

 そして今回の叛乱の裏には、逃亡中のグラティアの影もあるようですの。未確認ですけれど、第四王女側は古代の巨大兵器を擁しているという話もありますわぁ」


 彼女の報告に、その場の全員の表情が強張り、プルーナさんが早速見解を口にした。


鉱精族(こうせいぞく)ですか…… 彼女達は地魔法と火魔法に高い適性を持っていて、製造する武具の品質は世界最高とも言われています。

 グラティアの目的は僕らへの復讐でしょうから、そのための武器と戦力を確保するための叛乱でしょうね……」


「むむむ…… ならばシャム達のためにも世界の平和のためにも、叛乱軍は早めに鎮圧するべきであります。その古代兵器が地脈を利用するものだったら超危険でありますし!

 でも軍隊を派遣するのは時間がかかるし、距離的にも政治的にも困難が伴うであります。ならば……」


 シャムを始めとしたお妃さん達の視線が僕に集中する。

 そう、こう言う時に力を発揮するのは、フットワークの軽い少数精鋭部隊なのだ。


「うむ。我々『白の狩人』の出番だ」


 そう言って席を立った僕に、宰相を始めとした重臣達が呆れと心配の混じった表情を向けてくる。


「陛下、皆様方。もうお止めは致しませんが、どうかくれぐれをお気を付け下さい……」


「うむ。皆、すまぬがあとは任せたぞ」


 宰相達に後を任せて会議室を出ると、僕の後にお妃さん達も続いてくれた。

 そしてヴァイオレット様がすっと隣に並び、揶揄うように僕に笑いかけてくる。


「ふふっ。困難が予想される状況だというのに、なにやら楽しそうだな、タツヒト?」


「あ、バレちゃいました? 王様なんてやってますけど、僕は所詮成り上がりの冒険者です。

 やっぱり、ヴァイオレット様達と一緒に槍を振ってる方が性に合ってるんですよ」


 僕の言葉にみんながニヤリと笑う。気持ちは同じらしい。

 トラブルはいつもどこかしらで起こっていて、平和な日々はこんな感じに突然終わってしまう。

 それでも一つ一つ解決していけば、世界はちょっとずつ良くなっていくはずだ。

 一人でやるのは絶対に無理だけど、幸い、僕の周りには頼りになるみんなが居てくれる。


「さぁ…… 今日も世界の平和のため、お節介を焼きに行きますよ!」


「「応!」」






***






【以下は、建国千年を記念したアウロラ王国全史の一部抜粋である】


 --以上が、突如として馬王国の開拓村に現れた少年タツヒトが、数々の冒険の果てにアウロラ王国を建国し、建国から数年の大混乱期を乗り越えるまでの記録である。

 タツヒト王はその後も様々な形で世界に影響を及ぼしたが、中でも以下の二点は特筆に値する。


 一点目は、自身の妃達だけではなく、多くの亜人国家の元首とも血縁関係を持ち、世界に大量の亜人男性を生み出した事である。

 以降、当時まで女性のみだった亜人(あじん)に男女が揃い、只人(ただびと)亜人(あじん)の関係には大きな変革が訪れる事になった。しかし、当時から懸念されていた只人(ただびと)の絶滅という悲劇が起こる兆しはまだ無い。

 これは、タツヒト王が設立したある組織の貢献による所が大きいが、それについては後述する。

 備考として、現代の価値観では当時のタツヒト王の行動を、男娼外交などと揶揄する声もあるが、彼の王なら甘んじて受け入れるものと筆者は考える。


 二点目は、タツヒト王が血縁関係を結んだ亜人国家群から成る、世界秩序共創機構の設立である。

 本機構は、独自の情報網により紛争を察知し、国家の垣根を超えて早期に紛争を解決する機能を有する。

 そして周知の通り、本機構は設立から千年近く経つ現在も正常に機能しており、全世界の九割を超える国家が加盟している。

 これほど長く組織を維持できた理由は、加盟国の国家元首の殆どがタツヒト王の子孫であり、それによる連帯感が組織内で醸成(じょうせい)されて来た為と考えられる。


 ところで、タツヒト王には多くの二つ名がある。建国から間もない時期には傾国、雷公などが有名だったが、後世においては前述の二点を踏まえたこの二つ名が最も有力だろう。

 亜人の世界に大きな変革と秩序をもたらし、数多の亜人国家に強力な影響力を持つ王への、畏敬と尊敬を込めた二つ名…… 即ち、『亜人の王』である。


 --最後に蛇足として、タツヒト王に対する筆者の個人的見解を記す。

 彼の王は、多くの著名な学者が述べているような崇高な思想や、大衆が語るような英雄的大義などは持ち合わせていなかった。

 彼は自身が愛する人達を、その周囲の大切な人々ごと守る事に必死なだけだった。

 その結果、一国どころか世界の平和まで抱え込む事になってしまった、ただの亜人好きの男だった。


 著者:アウロラ王国 王宮筆頭書記官 ニプラト


約190万文字。ここまでこの長い物語を読み続けて頂き、誠にありがとうございました。

今後番外編なども書いたりしてみたいですが、ひとまず本編はこれにて完結とさせて頂きます。

完結まで辿り着けたのは、一重に読者の皆様の応援のおかげです。重ねて感謝申し上げます。

また、一月中に次回作の投稿を開始する予定です。よければそちらも覗いて頂けますと幸いですm(_ _)m

最後に、画面下の「☆☆☆☆☆」にて本作を応援して頂けますと大変嬉しいです。次回作への大きな励みとなります!


※ちょっと下に作者Xアカウントへのリンクがあります。

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