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【完結】亜人の王 〜過酷な異世界に転移した僕が、平和なもんむすハーレムを勝ち取るまで〜  作者: 藤枝止木
18章 黎明の王国

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第490話 n回目の結婚式(1)


 時間はさらに過ぎ去り春となった。僕らのアウロラ王国は、順調に地上の世界に順応し始めていた。

 お隣の三国とは平和的な関係を維持できていて、メーム商会主導の貿易も順調で人の行き来も活発だ。

 そのせいで船便は激増したけど、アスルとカリバル率いる群青(ぐんじょう)士団がフル稼働で海の平和を守ってくれている。


 国内に関しては、農民の皆さんは慣れない本物の冬を無事乗り切り、春の種まきを始めていた。

 そして、建造中だった地下性の魔物に対する防衛設備、王都を円環状に囲む地下都市もようやく完成した。

 現在は、エリネン率いる警邏(けいら)士団第二大隊がその警備に当たってくれている。

 蒼穹(そうきゅう)士団の基地に関しては、順調にその数を増やし、王国西側のかなりの範囲を制空圏に収める事ができた。

 どの士団も人手が足りていない状況だけど、他国からの人材流入でそれも徐々に改善しつつあった。


 全てが順調。だけど、竜王残党の本隊らしきものはいまだに発見できていない。宮廷では、流石にもう国外に逃亡しているのでは、という説が濃厚になってきている。

 西の宝石公達の叛乱疑惑に関しては、諜報部に相当する警邏(けいら)士団第三大隊、キアニィさんとナノさん達に結構突っ込んだ調査も行ってもらった。

 けれど、宝石公と周辺領主が不穏なやり取りをしているといった事は確認できず、それぞれの領主が、魔物対策のために慎重めに軍備を整えていると言った様子だった。

 宝石公は極めて怪しいけれど、我々の考え過ぎかもしれない。今の宮廷ではそんな意見が多数派になっていた。

 そんなふうに、ひとまずは平和と言える状況だった事もあり、僕らは後ろ倒しにしていた大きなイベントを決行する事にした。


「--創造の母神と父神。偉大な二柱の融和によりこの世界が誕生し、我々人の子が生み出された。そしてまた、今日のよき日に、二人の男女の神聖なる融和が成されようとしている。慈悲深き創造神よ--」


 場所は王都の大聖堂。祭壇で(おごそ)かに祝詞(のりと)を読み上げているのは、聖教を束ねる教皇、ペトリア四世猊下その人だ。

 麻痺していた体はすでに快癒されている。世界的巨大宗教組織のトップとして超多忙な中、遥々聖国から足を運んでくれたのである。


 そして彼女の前には、今日のためにめかし込んだ僕とヴァイオレット様が向かい合っていた。

 僕はちょっと露出が多くて恥ずかしい中性的なドレス、ヴァイオレット様は貴族の礼服を格好よく着こなしている。

 穏やかな微笑みを浮かべて僕を見つめる彼女の頬は、ほんの少しだけ赤く色付いていた。

 そう、今日は僕はヴァイオレット様の結婚式だ。フラーシュさんとの式からおよそ五ヶ月後、ようやく側妃のみんなとも式を挙げられるタイミングになったのだ。


 会場の中に目を走らせると、国内外から多くの人々が列席してくれていて、最前列には僕らと特に縁の深い人達が座っている。

 まずはフラーシュさんを始めとしたお妃さん達。そしてヴァイオレット様のご家族も総出で来てくれている。

 僕らの第二の故郷であるベラーキの村からは、僕の義理の両親であるボドワン村長とクレールさん、そしてエマちゃん達一家も来てくれている。

 みんな、涙ぐんだり目をキラキラさせたりと、それぞれの姿勢で僕らの式に注目してくれていた。


「--では、誓いの口付けを」


 祝詞(のりと)が終わり、僕とヴァイオレット様は猊下に促されるままに自然に口付けした。


『--タツヒト、愛している』


『僕も愛しています、ヴァイオレット様』


 瞬間、ほとんど無意識に共鳴(ともなり)が発動した。

 ヴァイオレット様から暖かな洪水のような感情が押し寄せ、危険なほどの多幸感が僕を満たす。

 僕も溢れるほどの気持ちを彼女にぶつけると、また彼女から増幅されたかのような好意の津波が返ってくる。

 お互いの感情が際限なく高まっていく中、列席の皆さんの祝福の拍手が聞こえ、僕らは我に返った。

 や、やべー…… 危うくキスの先まで行く所だった。

 僕らは素知らぬ顔で拍手に応えながら、手を取り合って会場から中座した。


 その後、揃って控え室に引っ込んだところで、僕とヴァイオレット様は小さく息を吐いた。


「あ、危ない所でしたね、陛下。あのような公衆の面前で我を失いかけるとは……」


「う、うむ…… 最近はかなり気軽に共鳴(ともなり)が発動してしまう故、公的な場では特に気を付けねばならないな……」


 共鳴(ともなり)は特殊な身体強化の技の一つで、お互いの感情や感覚を共有する事ができる。

 戦闘では色々とメリットの多い技なのだけれど、心が通じ合うことが心地良過ぎて、さっきみたいに感情が暴走してしまう事もあるのだ。


「ともあれ、今後ともよろしく頼む、ヴァイオレット妃。末長くな」


「ええ、陛下。こちらこそ、(とこ)しえに…… よし、では次だな」


 ヴァイオレット様がそう言った瞬間、控え室の扉が開き、シャムが入ってきた。


「二人とも素敵だったであります! そして次はシャムであります! 侍女の皆さん、着替えをお願いするであります!」


「承知しました。こちらへどうぞ、シャム妃」


 シャムの声に、控え室にいた侍女さん達が彼女を衝立(ついたて)の向こうへ誘導していく。

 すると、同じく控え室にいた侍男さん達が僕の方に寄って来た。


「失礼致します陛下。あちらで次の衣装にお召替えを……」


「む。そうか、我もだったな。ではな、ヴァイオレット妃」


「ええ。私は会場に戻っております」


 誘導されるままシャムとは別の衝立(ついたて)へと移動すると、侍男さん達が寄ってたかって僕の衣装チェンジに取り掛かった。


 そう。今日僕が結婚するのはヴァイオレット様だけじゃない。『白の狩人』のレギュラーメンバー、その六人全員と式を挙げるのだ。

 ちなみに、『白の狩人』の準レギュラーであるエリネン達やメームさんとは、明日式を挙げる事になっている。はっきり言って情緒も何も無いと思う……


 当初は、せめて全員日を分けようという話もあったのだけれど、側妃のみんなは十一人もいるのだ。

 心配が無くなりつつあるとは言え、竜王の残党や宝石公の叛乱を警戒しながら十一日間連続でイベントをやるのは流石にきつく、この日程に落ち着いた形だ。

 お妃さん達には非常に申し訳ないのだけれど、この二つの大問題がいつ片付くか分からないし、あまり式を先延ばしにするの避けたかったしね……


 そんな事をつらつら考えながら侍男さん達にされるがままにしていると、シャムがひょいと衝立(ついたて)越しに覗き込んできた。


「ぅわっ…… シャム妃よ。淑女がそのような事をするものではないぞ」


「ごめんであります! 陛下は衣装替えは終わったでありますか? シャムは出撃準備を完了したであります!」


 そう聞いてくる彼女は、可憐さが強調された礼服がとても似合っていた。


「うむ。こちらも準備完了だ。とても可愛らしいぞ、シャム。では、会場に行こう」


「うふふっ! 了解であります!」


 上機嫌なシャムに引きずられるように、僕は本日二度目の結婚式へと向かった。


遅くなりましたm(_ _)m

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【日月火木金の19時以降に投稿予定】


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