6.歯車一つ。
「……して。この娘はどうして、一週間に渡り滞在しているのだ?」
「んー、それはボクも分からないんだよね。なんで? ハリエット」
「もちろん。先生から吸収できることは、すべて吸収しようと思っているからです! 少なくとも、あと一週間はここにいたいと、そう考えています!!」
「――だ、そうですよ。レミア?」
「……ギルドに返してこい」
「また子犬みたいに……」
冷たい視線で、ボクの袖にしがみ付いてる少女を見てレミアがそう言う。
冗談だとは分かっているものの、苦笑いしか出来ない。
「ニナも同意見ですねー……あるいは、家賃ぐらい払ってほしいです」
「僕もそう思います。さすがにこれ以上、無償で居座られるのは、ちょっと」
だが、そうしているとニナとエリオも半眼でそう口にした。
どうやらこの場でハリエットを客と思っているのは、ボクだけのようだ。さすがにこうなると、旗色が悪い。どうにかして、彼女の滞在を認める方法は……。
「……あ、そうだ!」
と、そこまで考えたところで。
ボクは一つの案を思い付き、ポンと手を打った。
「む、どうしたのだ。そのように晴れやかな顔をして」
「いやいや。簡単な話だな、と思ってさ」
「カイルさん? まさか……」
ボクの表情を見て、何かに感付いたらしい。
エリオは口角をひくつかせて、呆れたような声を出した。そんな彼に頷いてから、腕を組んで自信満々に意見を口にする。それというのは――。
「ハリエットを臨時のパーティーメンバーにすればいいじゃないか! 前線戦力の補強にもなるし、居候問題の解決にもなる! 一石二鳥だと思わない!?」
そう。それは、あまりにも単純なものだった。
そして同時に、他の面子の不満を一掃するに相応しい方法。
考え付いた自分が誇らしく思えて、ついつい胸を張ってしまうボクだった。
が、しかし――。
「カイル、お前……」
「カイルさま、そうじゃないのです……」
「いや、うん。間違ってないんですけど、間違っているというか……」
何故だろう。
三人は、口々にそう肩を落としながらそう言うのだった。
「…………ん?」
――あれ? ボク、なにか変なこと言ったのかな。
◆◇◆
されども、当のハリエットは大いに乗り気であり。
「先生! 明日は何を討伐するのですか!?」
翌朝からギルドに届けを出してからは、このようにボクの後ろをくっついて歩いていた。とりあえずの肩慣らしとして、アークデイモンの討伐をした帰り道。まだまだ元気が有り余っていると言わんばかりに、彼女はこちらに声をかけてくる。
ちなみに、戦闘についてはやはり問題なし。
ややスタンドプレイ気味なのは気になったけど、それも徐々に改善されていくだろう。一時的な加入ということを考えれば、勿体ないくらいの戦力だった。
「それはまた、明日になってから考えよう。とりあえず今日はお疲れ様」
「はい! では、ひとまずはギルドのニールに報告しましょう!!」
「ははは……。うん、そうだね」
他――レミアとエリオの冷ややかな視線を背中に受けながら、ボクは頷いた。
まぁ、とりあえず彼女の言う通りにギルドへ行こう。
それで、今日のクエストは終わり……。
「おや……? ちょうど噂をすれば」
「あれ、ニールさん。噂って、もしかしてボクのことですか?」
「あぁ、いや。キミのこともあるんだけど――正確には、ハリエットさんかな」
こちらを見ていた彼は、おもむろに視線を下ろす。
辿り着くのは、袖にぶら下がった青髪のエルフ少女だった。
「む……。ニールよ、ハリエットがどうかしたのか?」
その会話に、レミアも加わる。
赤髪の少女の言葉に、眼鏡の位置を直しながら彼はこう口にした。
「そうですね。やはり、貴方たちのパーティーが相応しい。EXランクのカイルさんに、Sランク魔法使いのレミアさん。そして他でもないハリエットさんがいる……」
そして何度も頷く。
省かれたエリオは唇を尖らせていたものの、輪に入ってきた。
それを確認してからだ。ニールさんは一つ息をついてから、こう告げた。
「皆さんに、調査を依頼します」――と。
ボクたちは顔を見合わせる。
そんなところに、さらにこんな言葉が投げられた。
「四天王――四魔神の一人。宵闇のレーナが、動き始めました」――と。
書籍版は3/4発売。
キャララフが、活動報告で公開中です!!
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