1.謎の少女剣士
書籍版は3/4発売です。
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さてさて。
リリスさんのいなくなったパーティーは、大幅な戦力ダウンだ。
そんなわけなので、ボクとレミアの二人はギルドにやってきたのだった。理由は言うまでもなく、新たなメンバーの募集をかけるため。
リリスさんは戦士だったから、バランスを考えると前線で戦える人が無難だろうか。――と、考えているとレミアがこう言うのだった。
「お主が得物を持ち替えて、前線に出れば良かろう」――と。
それに対して、ボクはこう答えた。
「え、いや? だってボク、魔法使いだし」
こちらの言葉を聞いた少女は、愕然としていた。
額に手を当てて、呆れ返る。まるでボクが間違いを口にしたかのように。
「それにしても、リリスさんほどの戦士は滅多にいないからなぁ……」
「その点は致し方あるまい。お主には及ばないが、リリスもSランクだったのだ。いかな冒険者の街と呼ばれるここでも、なかなか出会える才ではなかろうな」
「だね。それに、一番大切なのはチームワークだし」
「うむ、そうだな。しかし――」
仕切り直して、ギルドの談話室でそんな話をしていると、だ。
頷いたレミアがこう言った。
「どうして今日は、こんなに人が多いのだ?」
それは、周囲の状況について。
ボクもそのことは気になっていた。たしかに昼時のギルドには、多くの冒険者が集う。しかしそれにしても、今日は人がまさしく波のようにうねりを見せていた。
その隅っこでボンヤリと様子を眺めている、ボクとレミア。
腕を組みながら首を傾げていると、声をかけてくる人があった。
「やあ、カイルくん。ちょうどいいところに」
ニールさんだ。
にっこりと笑った彼は、ボクらを認めると近付いてくる。
軽く会釈をしながら、気になっていることを訊ねてみることにした。
「どうも。ところで、この騒ぎは何なんですか?」
「あぁ、これかい。これは――」
こちらの質問に彼が答えようとした時だ。
ニールさんの言葉を遮るような勢いと音量で、こんな声がした。
「ええい! この中に、儂を満足させられる強者はおらぬのか!!」
幼い少女のそれで。
なにやら威勢のいいその声は、人の群れの一番奥から聞こえてきた。それと同時に、冒険者たちがざわざわとするのが分かる。微かに耳に届いたのは……。
「う、うそだろ? モーブだってAランクの拳闘士だったはずだ!」
「それが、こんな小さなエルフの女の子に?」
「冗談じゃ、ないよな……」
怯えに近いものだった。
しかし、これだけでは何が何やら分からない。
そのためニールさんに訊こうと、改めて彼の方を見る。すると――。
「おぉ、良いタイミングだ。――ハリエットさん! 少し、いいかな?」
突然に声を張り上げるのだった。
それに呼応するようにして人の波は綺麗に左右に割れる。一直線に、先ほどの声の主への道が出来上がった。ボクはゆっくりと視線を持ち上げる。
そして、モーブという冒険者を倒したとされる人物を見た。
「…………ん、ホントに小さい」
ハリエット――そう呼ばれた少女は、ホントに小さな女の子だった。
背丈はレミアよりも、さらに下だろうか。肩までの青い髪に、エルフ特有の長い耳には深い蒼のイヤリング。瞳の色は金色で、顔立ちは端正なものだった。
身にまとうのは白銀の鎧――なのだが、いまいちサイズが合っていないらしい。ちょっとだけブカブカになってしまっていた。歩くたびに上下に揺れている。
手には木刀を一本。
腰には、複雑な文様の刻まれた剣を携えていた。
「む――お前いま、儂のことを小さいと言ったか?」
「え、あぁ……その、ごめん」
そんな女の子はこちらにやってくるとそう言って、ボクのことを睨み上げる。
想定外に鋭い視線に、つい反射的に謝罪してしまった。
「――で、ニールよ。儂に声をかけたということは、この街で最も強い者を連れてきた、ということで間違いないな?」
だが、こちらに対する興味をすぐに失ったらしい。
ハリエットはニールさんの方を見て、腰に手を当てつつそう言った。
「えぇ、そうです。この街の伝説になろうとしている猛者ですよ」
「噂ではEXランクを与えられているようだが? この儂を差し置いてそのような高位に座するなど、許された話ではない。それで、その者はどこに?」
「いるではないですか、そこに」
「…………ん?」
少女がこちらをちらりと見る。が、すぐに視線を戻す。
「いないではないか」
「いえいえ、まさしく彼のことですよ?」
そう言われてもう一度、彼女はボクを見た。
そして――。
「――この、ちんちくりんな男が、か?」
こちらを指差してそう口にした。
ハリエットを挟んで向かいにいるニールさんは、穏やかに頷く。
「彼こそが、この街で名高い――カイル・ディアノスくんですよ」
彼は、改めてボクの名前を告げた。
ハリエットはどこか訝しげに振り返っている。
対してボクとレミアは、何が起きているのかと顔を見合わせるのだった。




