表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/133

6.これはとある過去のお話 3

一迅社様から書籍化予定です!

よろしくお願い致します!!






「師匠は――敵討ちのために、闘ってるのですね……」

「まぁ、そういうことになるかな?」


 リリスは一連のヴィトインの話を聞いてから、少し悲しげな表情で言った。

 師もまた同じく、過去に思いを馳せ、寂しげなそれを浮かべる。屋外での鍛錬を終えて、二人は小屋の中に入っていた。外は昼だというのに薄暗く、間もなく雨が降り出しそうな、そんな空模様。ヴァンパイアと、その眷属である少女にとって、それはあまりよろしいものではない。


 決して広くはない一室の中で、二人は無言のままただうつむいていた。

 しかし唐突にリリスはこう口を開くのである。


「でも、どこか安心しました」


 そう、胸に手を当てて。


「私だけではなかったのですね。師匠も、私と同じだった……」

「………………」


 心の底から安堵するようにして。

 幼いリリスは、小さな笑みを浮かべてヴィトインを見つめた。

 一人ではないということ。孤独ではないということ。同じように家族を失い、同じ目的を持つ存在がそばにいること。


 それが、少女にとってどれほど心強かったことだろうか。


「どうか、これからも――」


 ――よろしくお願い致します。

 リリスは消え入るような小さな声でそう言った。


「あぁ、私に出来ることがあるのなら……」


 ヴィトインは数秒の間を置いてから、彼女に対してそのように答える。

 やや目を伏せて。まるで、何かに迷うようにして。


「……私は、私のしたことの『責任』を取るよ」


 そのように、口にしたのだった。



◆◇◆



 それからまた、どれだけの月日が流れただろうか。

 リリスは少しずつ成長し、外見年齢的には微かに成長を見せていた。

 眷属の成長速度はヴァンパイアほどではないものの、通常の人間よりも遅くなる。それでも十年単位で月日を経れば、それなりに大人びるものだ。


「レミアは、どうしているかな……」


 そんな我が子のような存在を見て、ヴィトインは本当の娘のことを思い出す。

 片時も忘れたことはなかった。忘れるはずがなかった。ただそれ以上に、自分には為さなければならないことが、その『責任』が出来たのである。

 それを今は、語るべきではないのかもしれなかった。

 それでもいつかはリリスにも、そしてレミアにも告げることにしよう。


 そう、思っていたある日のこと……。


「今日は早く帰れそうだな。リリスもだんだんと眷属としての身体に馴染んできたみたいだし、食事も血肉の多いものに変えていかないければ……」


 狩りを終えて、ヴィトインは帰路についていた。

 そうして間もなく、二人の暮らす小屋へとたどり着く。その時だった。


「し、師匠……っ!」

「なんだ……?」


 行く先から、リリスの声が聞こえてきたのは。

 目を向けるとそこにあった光景は――。


「――リリスっ!?」


 重装備で固めた数人の冒険者。

 そして、その冒険者に取り押さえられるリリスの姿だった。


「おや、どうやら本命が帰ってきたみたいだな」


 冒険者の一人がそう口にする。


「何者だ……!?」


 ヴィトインはその冒険者たちに向かって声を荒らげた。

 だが、それを受けても彼らはまったくもって動じることなく答える。


「分かっているだろう? 我々は――」


 静かに、ニヤリと口元を歪めて。




「――神に使わされし、ヴァンパイアハンターだよ」



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2019/3/4一迅社様より書籍版発売です。 ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=408189970&s 「万年2位が無自覚無双に無双するお話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ