2.かつての居場所
「また、あそこなのか……」
「………………」
ボクはエリオに示された場所を確認し、そう呟いた。
隣にいるレミアは、どういうわけかそれを確認して無言になる。
少年が調べ、ヴィトインという名のヴァンパイアの居場所として提示したのは、あの館だった。忘れもしないクリムとの戦い、そしてレオを助け出したあの場所だ。
「そういえば、さっきから黙ってるけど。どうしたの、レミア?」
その場所を目指して歩きながら、ボクは赤き少女にそう問いかけた。
するとそこに至って、レミアは小さくこう言う。
「もしも、だ……」
こちらを見上げて、真っすぐに。
「この先にいた人物が、妾の想定する者だった場合――しばし、時間をくれないか?」
「え、それってどういう……」
「すまぬ。まだ確証がないから分からないが、カイルには話しておくべきことだったかもしれないな。なんということはない、この先にいるかもしれぬヴァンパイアは――」
レミアは、ふっと息をついた。
「――妾の父、かもしれないのだ」
◆◇◆
館の前にたどり着いた。
そこは以前と変わらずに、とても殺風景で。
しかしその反面、どこか荘厳な印象を抱かせるものだった。
「レミア? もしかして、前に言っていたのって……」
ボクは、隣にいる少女に語りかける。
彼女は以前に、この場所を知っているようなことを言っていた。
そのことが少し気にかかってはいたが、今まで特別に掘り返すことはしないでいた。それは彼女が話したいと、そう思った時で構わないと思ったから。
だけど、今ばかりは聞かずにはいられなかった。
そして話さなければならないと、レミアもまた思っているのだろう。
「あぁ、そうだ。ここは妾が三百年の時を過ごした場所だ」
そのように、小さく語りだす。
「母とは死別し、父とは別れ――その生死も分からなくなっていた」
ほんの少しだけ、赤い瞳を潤ませて。
「それが、どうしてだろうな。今さらこうやって、なくなったと思っていた可能性と対面することになったのだから。どうして、今さら……」
彼女は少しだけ肩を揺らしながら、しかしすぐに前を向いた。
その真っすぐな瞳からは迷いが消えている。深呼吸をしてから、こう言った。
「妾は、父と会ったらなにをするか分からない。それだけは、覚えておいてくれ」
「うん、分かった。そこはレミアに任せるよ」
ボクは彼女にそう答える。
すると、レミアはにっこりと、見た目に相応しい無邪気な笑顔を浮かべた。
愛らしい。本当に美しい。相反するような二つの言葉が同居しているような、そんな眩しい表情だった。そしてそれを最後にして、ボクたちは歩き出す。
それはきっと、一つの決着を付けるために。
「おや、こんな辺鄙な場所にお客さんとは珍しい……ん?」
中に入ると、一人の男性がいた。
その人はこちらを見ると、そう口にして、しかしすぐに大きく目を開く。
「キミは、もしかして――」
そうして、続けて彼は――ヴィトインさんは、こう言う。
「レミア、なのかい……?」――と。
いつもありがとうございます!!
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