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2.ヴァンパイアの力とは

あとがきにお知らせありです。






「もう一人の、ヴァンパイア……って。レミアが最後の一人じゃなかったの?」


 ボクとレミアは、二人で街を歩いていた。

 先日の一件をギルドに報告し、問題解決の役割を与えてもらったのである。その上で、もう一人のヴァンパイアを探すというレミアの提案を採用していた。

 しかし、先に述べたように疑問は残る。

 レミア自身が自分が最後の一人と語っていたのに、もう一人とはどういうことか。


「妾もそう思っていたのだがな。そうではない可能性が出てきたのだ」

「そうではない、可能性……?」


 そう考えていると、彼女は顎に手を当てながらそう言った。

 ボクはその言葉を繰り返し、首を傾げる。どうやらレミアの中でも確信を持てるモノではない様子だった。しかし今はそれにすがるしかない、のかもしれない。

 だけど、その前に――。


「その、レミアじゃダメだったの? 他のヴァンパイアである必要性は?」


 ――疑問も解決しておかなければならない。

 彼女の話を聞く限り、ヴァンパイアが力を与えればいいような気がする。


「妾ではダメなのだ。場合によっては、リリスを殺してしまうかもしれない」

「え……?」


 だがしかし、少女はすぐに首を左右に振った。

 神妙な面持ちでこちらを見て、おもむろに説明を始める。


「魔力の質――その言葉が、一番しっくりくるかもしれないな。あるいは、血液型の違い、とでも言えばいいだろうか。とかく、医術においても近しい者の血でなければならないだろう?」

「え、うん。そうだね」


 たとえ話に、ボクは一つ頷く。


「それと同じだ。その者の身体に適合した魔力――今回の場合だと、リリスに力を与えた者だな。それと同質のモノでなければ、拒絶反応が起こるのだ」

「なるほど。だから、レミアの力ではダメだ、ってことなんだね」

「むぅ。本当に申し訳ないのだが、な……」


 そんなつもりはなかったのだが、レミアはしゅんとしてしまう。

 慌てて、ボクは話題を変えるのであった。


「それにしても、今から行くのはその情報をくれた人のところだよね?」

「うむ、そうだな」


 それに彼女は、短く答える。


「それって、誰なのかな。この道……よく知ってるんだけど」


 そうだった。

 レミアと歩いている道。

 それはボクにとって、もう一つの家に帰る、そんなモノだった。


「このままだと、孤児院に着くんだけど。それでいいの?」

「それで良いのだ。用があるのは、他でもない――」


 こちらの問いかけに、彼女はハッキリとした口調で言う。


「――ダース・ミリガン。あの素性のはっきりしない、奇妙な男だからな」


 院長の名前を。

 奇妙な男と、やや距離を置くような言い方で。



 そして、やがてボクたちは孤児院に到着する。

 そこで待っていたのは、件の人物。ボクにとっては父であり、同時に――。




「やっぱり。来たのね、二人とも……」




 ――母のような、その人だった。



 


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