5.リリスの症状
リリスの意識は酷く混濁していた。
なにかを探さなければ、と。その意識だけが働いていた。
しかし、それ以上に乾く。酷く喉が渇いていた。なにかを飲まねば死に絶えると、そう直感するほどにリリスの喉は乾いていた。
それでも彼女は外に出ることを恐れる。
なにが恐ろしいのか。それすら曖昧だが、強いて言えば光が怖かった。
「カイ、ル……さん」
そんなリリスの目の前に現れたのは、一人の青年。
命の恩人として大切な存在であるその人は、狂っても憶えていた。何故かは分からないが、心安らぐのをリリスは感じる。今すぐにでも、手を伸ばして触れたいと。彼女はすがるような手つきで、彼へと手を伸ばした。
だが、しかし――。
「カイル、危ない!」
――それを遮る者が現れる。
深い闇を背負いし少女であった。
彼女の名は、いったい何だったであろうか。愛おしいとさえ思った時もあったのに、今は忌々しく感じてしまう。
何故なら、このニオイをリリスは知っていたから。
「ヴィ、トイン……っ!」
そう、それは――狂おしいほどに焦がれた相手と同じそれだった。
驚き目を見張る少女。だがすぐに、その少女は手に持った傘を構える。
そして、こう口にした。
「【ライトニング】」――と。
◆◇◆
眩い光が放たれる。
レミアが使用した魔法は初歩魔法の一つである【ライトニング】。
稲妻の名を冠するそれは、主に強い光を発して相手の目くらましをするものであった。しかしボクが見るに、いまレミアが放ったそれはそれ以外に目的があるようにも思われる。洞窟内が瞬間の真昼へと変貌を遂げ、次いで夜へと移り変わる時――そこに変化があった。
「あれ、リリスさんは……?」
先ほどまであったリリスさんの姿が見当たらない。
ボクはそのことに首を傾げ、魔法を放ったレミアを見た。
すると少女は眉間に皺を寄せて、何かを考え込んでいる様子である。
「……レミア、今のはいったい」
「やはり、か。リリスも――」
そして、こちらがその理由を訪ねようとした時であった。
赤髪の少女がおもむろに口を開いたのは。
彼女はこう言った。
「――『眷属』、だったのだな」
そう、心痛な面持ちで。
傘を仕舞い、先ほどまで彼女がいた場所を見つめながら。
「『眷属』……? リリスさんが?」
「うむ。あれは、間違いない」
訊ねると、レミアは静かに口を開いた。
「『眷属』は、年月を経るとその体内に秘めた魔力を消耗していく。そして、その発作が抑えきれなくなった時――なにかの拍子で、あのように狂うのだ」
「狂うって、そんな……」
動揺してしまった。
それもそのはず。仲間の一人がヴァンパイアの眷属であったという事実。それと同時に、その眷属の迎える末路を語られたのだから。
言葉を窮する以外に、いったいどうしろというのか。
「こうなると、もう手が付けられない。リリスは血肉を求めて魔物を喰らうのだろう――そして、その魔力さえも尽きた時には……」
しかし、少女は語るのをやめない。
それでも最後の言葉だけは。決定的なそれだけは、濁した。
それを口にしてしまえば、それこそ結末を決めてしまうような、そんな気がしたから。仲間を越えた家族という認識を、彼女もまたリリスさんに持っているのだろう。
そのように思われた。
「もう、細かい話はいいよ。助ける方法はないの!?」
「………………」
ボクの悲痛な叫びに、レミアは黙する。
そして、意を決したようにこう言った。
「探すしかない。もう一人のヴァンパイアを」
「え……?」
少女は、こちらに向かって続ける。
それはおそらく、現状で考えられる最後の手段。
「リリスを『眷属』としたヴァンパイアを探すしかない」
そして、それの意味することを理解していたのは他でもない。
レミア本人だったと、そう言えるだろう。
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