1.これは一人の少女の話
今回は物凄く短いです。
彼女――リリスが見たのは、炎に包まれる故郷だった。
黒煙が立ち上り、空を埋め尽くす。まだ昼間であったはずなのに、それは太陽を覆い隠してしまっていた。だからといって寒いか、と。
そう訊かれれば無論、その逆であった。
『………………』
リリスは諦めの気持ちで、仰向けになって倒れていた。
大の字になって。それこそ、このまま命尽き果てても構わない。そう思っていた。何故なら幼い彼女は生きる理由というモノをすべて失っていたから。
家族は燃え盛る家の中に取り残された。自分だけが生き延びた。
そうとなれば、若干十歳にすぎない彼女に生きる意味などあっただろうか。
むしろ、自分も家族のもとへと逝きたい、と。
子供ながらに『死』を意識した。
『あぁ――良かった』
だが、その時。
そう呟いて、彼女を抱きしめる人物があった。
その人は美しい銀の髪をなびかせる。赤い瞳が、リリスを映した。
『まだ、生きている子供がいたのか。本当に、良かった――』
――言って、彼は少女の柔肌に歯を突き立てた。
その刹那にリリスの身体には、何かしらの異変が起こる。
言葉では言い表せられないがそれは、すなわち命を救われたのだ、と。
『貴方の、お名前は……?』
思わず、彼女は口にした。
見つめ合う男性の顔は、霞んで良く見えない。
それでも、彼は真摯な態度でこのように名乗るのであった……。
『私の名前は、ヴィトインだよ。お嬢さん』――と。
その瞬間に、リリスの意識は遠退くのであった。
これが彼女にとっての分岐点。大切な、最愛の人との出会い。
そして『眷属』としての生涯の始まりであった――。
やがて少女は成長し、戦士となる。
ヴァンパイアハンターを名乗り、彼の人を探す旅に出る。
これは、その物語の序章。始まりの記憶の断片であった――。




