新居での出来事 Ⅰ
幕間、その一です。
さて。一連の騒動が解決して、ボクたちパーティーは再始動した。
レミアとリリスさんは、少し険悪だけど。それでも共同生活することに問題はなさそうだった。時間が解決してくれると良いのだけど、こればかりは分からない。
また、レオとイリアについて。
彼らはこの街を離れるらしい。そして様々なモノを見たり、学んだりしながら、絆を深めたいのだと話していた。共に歩めないのは寂しいけれども、それも二人が決めた道だ。今のボクに出来るのは、その二人の門出を祝い、見守ることだけ。
ただただ、無事を祈るだけだった。
そして、新たなことの報告として。
ボクたちパーティーは、あのボロ屋から引っ越してある家を購入した。
新しい拠点となるそこは、四人が住まうには少しもてあましそうな豪邸。なんだったら近いうちに使用人を数人雇わなければならないかもしれない。それほどの広さだった。――それもこれも、レミアが駄々をこねた結果だったりするのだけど、今回は割愛しよう。
今回はそんな新居での四人の生活について。
というか、その中で経験したボクの恐怖体験についてお話するとしよう――。
◆◇◆
「――――んん?」
「どうしたのだ? カイルよ」
「いや……。いま、なんか前にも覚えた違和感が……」
事の発端は、ほんの少しの気配からだった。
新居である豪邸の内装や、造りを改めてレミアと確認していた時。どこからだろうか、それは定かではないけれど、とにかく強い視線を感じたのであった。
とっさに振り返るが、そこには誰もいない。
「気のせいではないのか?」
「うーん。前からなんだけど、時々感じるんだよなぁ……」
レミアはそう言うが、ボクは首を傾げるのであった。
決して勘の悪くないこの少女が気付かない、となるとである。やはりその視線の標的はボクに限られているのであって、しかし危害を加えるそれではなかった。
そのことに大きな疑問を抱くが――ふむ。だけど、考えても仕方ない。
「まぁ、いっか。行こうか、レミア」
「うむ。そうだな! 次は庭でも散策するとしよう」
ボクは少女に言って、再び歩き出した。
そこでふと。こんなことを、意味もなく思い出す。
「そういえば最近、エリオの姿が見えないな……」――と。
しかし、ボクは思ってもみなかった。
その小さな疑問が、この問題の大きな要素の一つであることを……。
◆◇◆
次の場面は寝室での出来事。
一人に一つ与えられた広いそこには、まだ必要最低限の調度品しか用意されていない。ボクはその中でも、最初から備え付けられていたベッドに腰掛けていた。
なかなかに大きなそれ。その端の方で、ボクは次にレミアへと教える魔法理論の復習をしていた。彼女のポテンシャルなら、さらに難易度を上げても良いだろう。
「……っと。もうさすがに遅いかな」
そんなことを考えているうちに、相当な時間が経過していたようだった。
ボクは読んでいた本を閉じてそれを近くのテーブルに置く。そして、ベッドの中にもぞもぞと潜り込む。すると――。
「――――んん!?」
何故だろう。
すぐに、そんな疑問にぶち当たった。
その理由というのは、あまりに単純明快なもの。だって、
「なんで、こんなに温かいんだ……?」
そうなのである。
ベッドに入って、すぐに分かった。
誰もいなかったはずのそこには、何故かは分からないけれど人肌ほどの温もりが残っていたのである。ボクは跳ね起きて、周囲を見渡した。しかし、当然に人の気配はない。いま、この部屋にいるのは間違いなくボク一人だけ。そのはずだった。
「誰か、いるの……?」
温もりとは対照的に、ボクの頬には冷や汗が伝う。
心霊系の魔物であるならば、別段怖くはない。だがしかし、その事象と今回のこれは明らかに逆だった。だからきっと、これは人的なそれ。
正直な感想を述べるとするなら、薄気味悪くて仕方なかった……。
「どういう、ことなの?」
ボクは呟く。
しかし、その問いには誰も答えてくれることもなく。
ただただ、空虚の中に溶けていくだけなのであった――。




