5.まみえし者
「ハリエットは、夢の中で決まってその男の子、なんだね……?」
「はい、そうなのです。しかも自分のことを女神の子供だとか、おかしなことを言っているしなので――少し気味が悪いというか」
「ふむ……」
ボクとハリエットは互いに、部屋にある椅子に腰かけてそんな話をした。
不思議な夢。それでも、どこかで経験したことのあるような、不思議な感覚のする話を。彼女はどこか怯えているようで、説明している間もずっとうつむき気味だった。たしかに、自分の知らない記憶が連続して出てくるなんて、いい気分はしないだろう。
だけど、それを聞いてボクには変な確信があった。
理由は分からない。けれど、少なくともそれで良いのだ、と理解できた。
そして同時に、以前かけた言葉を思い出す。ボクは改めて、それを伝えることにした。
「それでも、ハリエットはハリエット、でしょ? 仮にその男の子がなにか、キミに関係があることだとしても。いまのハリエットの気持ちには、関係ないと思う」
この少女の存在、心までは誰にも奪えないはずだ、と。
以前にも言った『自身』を持つということ、それが大切なんだという話だった。もっとも、いまはボクもそれについて迷っている。
だから、少しばかり躊躇してしまったところは否めない。
「先生……」
しかしハリエットは、素直にそれを受け取ってくれたらしい。
ボクのことを見つめて、安心したように微笑んだ。
「………………ん?」
その時だった。
ボクの中に、おかしな感覚が生まれたのは。
ハリエットの話を聞いて、その笑顔を見ると、胸の奥にある何かがざわついた。自分の中に別の誰かがいると、そう思えるような馬鹿げた感覚だ。
だが、それは確かにそこにある。
「え……!?」
そうして、少しすると不意に視界が歪んだ。
◆
ボクは一人で立っている。
そこはまた、あの場所だった。
以前見た夢と同じ、あの男がいた場所。
「ここは、どこ……?」
思わずそう呟いた。
誰に向けた問いでもない。しかし、それに応える者があった。
「ここは、お前の『記憶の内側』だ――カイル」
「貴方、は……」
ボクの名前を呼ぶ人。
振り返ると、あの男の人がいた。
顔立ちはハッキリとは分からないが、存在感がある、不思議な人物。ボクは以前にそれを見て、この者が誰なのか、それを確信した。
ヒントも何もなしに、それは分かったのだ。
彼はそう、間違いなく――。
「私は魔王。そしてカイル、お前の――」
決定的な言葉が出てくる。
「……父親だ」
ボクは息を呑んだ。
顔の分からぬ父との再会。
記憶の内側という、変哲な空間での出来事だった。




