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5.まみえし者







「ハリエットは、夢の中で決まってその男の子、なんだね……?」

「はい、そうなのです。しかも自分のことを女神の子供だとか、おかしなことを言っているしなので――少し気味が悪いというか」

「ふむ……」


 ボクとハリエットは互いに、部屋にある椅子に腰かけてそんな話をした。

 不思議な夢。それでも、どこかで経験したことのあるような、不思議な感覚のする話を。彼女はどこか怯えているようで、説明している間もずっとうつむき気味だった。たしかに、自分の知らない記憶が連続して出てくるなんて、いい気分はしないだろう。


 だけど、それを聞いてボクには変な確信があった。

 理由は分からない。けれど、少なくともそれで良いのだ、と理解できた。

 そして同時に、以前かけた言葉を思い出す。ボクは改めて、それを伝えることにした。


「それでも、ハリエットはハリエット、でしょ? 仮にその男の子がなにか、キミに関係があることだとしても。いまのハリエットの気持ちには、関係ないと思う」


 この少女の存在、心までは誰にも奪えないはずだ、と。

 以前にも言った『自身』を持つということ、それが大切なんだという話だった。もっとも、いまはボクもそれについて迷っている。

 だから、少しばかり躊躇してしまったところは否めない。


「先生……」


 しかしハリエットは、素直にそれを受け取ってくれたらしい。

 ボクのことを見つめて、安心したように微笑んだ。


「………………ん?」


 その時だった。

 ボクの中に、おかしな感覚が生まれたのは。

 ハリエットの話を聞いて、その笑顔を見ると、胸の奥にある何かがざわついた。自分の中に別の誰かがいると、そう思えるような馬鹿げた感覚だ。

 だが、それは確かにそこにある。


「え……!?」


 そうして、少しすると不意に視界が歪んだ。





 ボクは一人で立っている。

 そこはまた、あの場所だった。

 以前見た夢と同じ、あの男がいた場所。


「ここは、どこ……?」


 思わずそう呟いた。

 誰に向けた問いでもない。しかし、それに応える者があった。



「ここは、お前の『記憶の内側』だ――カイル」

「貴方、は……」



 ボクの名前を呼ぶ人。

 振り返ると、あの男の人がいた。

 顔立ちはハッキリとは分からないが、存在感がある、不思議な人物。ボクは以前にそれを見て、この者が誰なのか、それを確信した。

 ヒントも何もなしに、それは分かったのだ。

 彼はそう、間違いなく――。



「私は魔王。そしてカイル、お前の――」



 決定的な言葉が出てくる。



「……父親だ」


 ボクは息を呑んだ。

 顔の分からぬ父との再会。

 記憶の内側という、変哲な空間での出来事だった。


 


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