2.信じるべきは?
「どうですか、調査の方は?」
「はっ――現在のところ、王家直属の教会に動きはありません」
アビスの言葉にアーシアという女性は、静かな口調でそう答えた。
教会に動きなし、とはいったいどういう意味か。ボクとエリオは互いに顔を見合わせるが、まったくをもって意味が分からない。
それでも彼らは気にしないといった様子で、こう続けるのだった。
「そちらの方が、カイル様でしょうか?」
「えぇ、そうです。我々の希望の星たる御仁ですよ」
彼女の言葉に、何やら大げさな口振りで答えるアビス。
するとアーシアの鋭い眼差しが、ボクを捉えた。思わぬそれに若干ビクリとするが、次第に柔らかく細められる。
そして優しい声色で、それこそ神へと祈りを捧げるようにこう言った。
「カイル様――今はまだ、何も分からないかと思います。それでも、どうかこのアビスという御方については信用していただければ、と願います」
それはまた、少し意外なそれ。
ただ一つ分かったのは、アビスが何かしら人間と協力して動いているということだった。同時にアーシアが彼のことを信用し、敬意を払っていることも。
理由は分からない。それでも、そこに嘘のようなものは感じられなかった。
「………………」
だけど、それだけで首を縦に振ることは出来ない。
ボクは少しだけ考えてから、答えた。
「まだ、判断は避けます。それでも、今は手を取り合いたい」
「ありがとうございます」
するとアーシアは、恭しく頭を垂れて感謝を述べる。
次第にその姿は掻き消えていった。何かしらの魔法によるもの、だろうか。
そして、彼女の気配が完全に消えた時に、アビスは切り替えるようにこう言った。ここからが本番だと、そういう風に息を一つついて。
「それでは、王城へ行きましょう」
彼の瞳は、透き通るような青のそれに変わっていた。
◆◇◆
王城の門の前にいる門番に紹介状を見せると、すぐに奥へと通された。
控室というのか、それでもボクの家のそれより広い一室。そこで待つように言われて、とりあえずソファーに腰かけていた。そして十分程度すると、
「――先生!!」
青髪の少女が、勢いよく部屋に飛び込んできた。
言うまでもなくハリエットなのだが、彼女は鎧ではなくドレスをまとっている。髪と同じく青を基調としたそれに、あまりに急いでいたのか蹴躓いた。
結果として、ボクの座るソファーに……。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
思い切り、ダイブ。
これでボクがいなかったら、怪我をしていたかもしれない。
やれやれと、そう思いながらもひとまずは再会を喜ぶことにしよう。
「久しぶり、ハリエット――元気だった?」
そう思って、声をかけると勇者である少女は――。
「はい! 先生も、お変わりないようで!」
そう言って、満面の笑みを浮かべるのだった。




