5.新たな旅立ち、その道中
ボクは『勇者パーティー招集』に応じることにした。
話を聞くに、どうやら今回は魔王が相手ではなく四魔神の一人――フーガが相手であるとのこと。それならボクには戦う理由があった。
必ずやフーガを打倒して、レミアたちを助け出さなければならない。
それだけは欠くことのできない至上命題だった。
「だけど、それにしたって……」
「カイル様、いかがなさいましたか?」
「いや、うん。その呼び方からして、ツッコみたいんだけどさ」
ボクはやけに恭しい態度で接してくるアビスに、寒気を覚えている。
彼は今まで相容れないと、そう思ってきた相手だった。それなのに先日はいきなり、仲間に入れてほしいと願い出てきたのだから、驚きを隠せない。
加えて、どうして『様』付けなのか。
思い当たる節はあるが、それにしても露骨すぎやしないだろうか。
「魔王の息子かもしれない、って――分かっているんだよね?」
「えぇ、もちろんです。初めてお見かけした時から、分かっておりました」
「…………そう、だったのか」
頭を抱えた。やはり、このアビスという魔族は読めない。
ボクの素性を察知した上で、今まであのように振る舞っていた。その思惑が読めないし、なんなら目的がどこにあるのかも分からない。
訊いたところで教えてはくれないだろうし、閉口するしかなかった。
「カイルさん。もうすぐ、王都に到着するそうです!」
「あぁ、そっか。ありがとう、エリオ」
「いえいえ!」
そう話していると、エリオが声をかけてくる。
ボクとアビス、そしてエリオの三人はいま、王都へと向かう馬車に乗っていた。辺境であるボクらの街から、それに揺られること二日間。
ようやく、目的地に到着というところだった。
しかし到着間近になって、ボクはあっちに残してきたみんなを思い出す。
院長にニナ、そしてココの三人は見送りにきてくれた。けれども、ニナに至っては大粒の涙を流していて、まともに別れの挨拶も出来なかったのだ。
「大丈夫ですよ。フーガがあれ以上、あの街を襲うことはありません」
それを思い返していると、アビスが淡々とそう口にした。
冷静な言葉に、ボクは逆に反感を抱いてしまう。だが、ここでそれを表に出しても仕方ない。そのため一つ息をついてから、馬車の行く先に目をやった。
広大な平原の先に、小さく城のような建物が見える。
おそらくは、あれが王都――ガリア。
「まさか、王都にやってくるなんて思いもしなかったな……」
ボクは唾を呑み込んで、深呼吸。
そして、気合を入れるために頬を叩くのだった。




