表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/133

3.召集令状






「それで、今回はどんな要件なんですか?」


 ボクがギルドに赴くと、通されたのは例によってニールさんの執務室。

 彼は書類に視線を落としながら、こう答えるのだった。


「いや、すまないね。手続きが大変で――カイルくんを呼んだのも、この手続きと関係があるんだ。少しばかり待っていてくれないかい?」

「はぁ、それは構いませんけど」

「そこのソファーにでも、腰かけていてくれればいい」

「分かりました」


 そんな会話を交わして、ボクは着席する。

 するとニールさんが、これは関係ない話なのだが、と前置きをしてこう言った。


「宵闇のレーナ、彼女の様子はどうだい?」

「レーナの、ですか?」

「あぁ、そうだ」


 それは『元』四魔神である少女について。

 こちらが訊き返すと、彼は声だけでそう返してきた。


「様子もなにも、普通ですよ。ボクの家で給仕をしています」

「そうかい。他の四魔神と連絡を取っているようなことは?」

「ないですね。むしろ、こっちに情報を流してくれています」

「……ふむ、なるほど。それなら、問題はないのか」


 そう言葉を交わして、やはりギルドの役員として魔族の動向が気になるのだろう、と。ボクはそう思った。

 心苦しいが、レーナが元は人間の敵だったことは間違いないのだから。

 しかし、家族として最大限、偏見は取り除きたかった。


「彼女はもう、普通の女の子です。本人もそうありたいと、願っています」

「……そうか。それは、結構なことだね」


 ボクの主張に、ニールさんは少し手を止めて言う。

 やはり、そう簡単にはいかないのだろう。それを肌で感じて、一つため息。

 そうしていると相手は話題を変えようとしたのか、こんなことを言った。だがそれは、ボクにとってはとても大きな問題で……。


「しかし、魔族のレーナが普通の人間になるとは。カイルくんの力によるもの、という報告は受けているが――」

「……………………!」


 思わず、肩を弾ませてしまった。

 自分が何者であるのか、という疑問はボクの中でいま、一番大きな問題だ。

 ニールさんは雑談程度に振ったのだろうが、まるで心臓を鷲掴みにされたかのような感覚に陥ってしまう。冷や汗が頬を伝い、表情が硬くなるのが分かった。


 すると、そんなこちらの様子に気付いたらしい。

 ニールさんは手を止めてこう口にした。


「あぁ、気にしなくていい。カイルくんが何者であるかは、こちらとしては大きな問題ではないのだよ。その辺りは心配しないでくれ」

「……え。それは、どういうことですか?」


 ボクは不思議に思って、そう訊ねる。

 ニールさんはこう答えた。


「レミアさんは、ヴァンパイアだが人間に敵意がないために黙認している、というのと同じだよ。もっとも、より上層の人間には知らせていないけどね」

「つまり、それは……」


 仮にボクが人間でなくても、敵意がないから別にいい、ということか。

 そう言いかけて、口を噤んだ。だが、ニールさんはあえて続けた。

 彼の考えを、とくに気にした風もなく。


「これは信頼、そして信用だよ。カイルくんたちの功績は、人類にとってかけがえのない財産だ。それを種族などといった些末事で失うべきではない」

「ニールさん……」


 少し、いいやかなり驚いた。

 ボクは正直、彼は冷淡な思考を持っている人だと思っていたから。

 でも、それは思い込みだった。言葉の選び方は論理的であるものの、彼はもっと広い視野で物事を見て、語っている。そして、そこには慈しみがあった。


 種族など些末事だ、と。

 そう言い切れる人間は、いったいどれだけいるだろうか。


「さぁ、それでは話を進めることにしよう」


 ボクが感銘を受けていると、不意に彼はそう言った。

 どうやら書類関係のことが終わったらしい。


「それで、改めてボクに何の用なんですか?」


 立ち上がってそう問いかけると、ニールさんは再度、書類に視線を落とした。そして、それをこちらに差し出しながらこう告げる。



「カイルくん。キミに、王都から招集状が届いている」



 ボクは受け取った書類を見る。

 そこには、ハッキリとこう書かれていた。



『冒険者カイル・ディアノスを、勇者パーティーの一員として招集する』――と。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2019/3/4一迅社様より書籍版発売です。 ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=408189970&s 「万年2位が無自覚無双に無双するお話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ