1.一方その頃
本日(2019/3/4)書籍版発売です!
そちらもよろしくお願い致します!!!!
「ダース、助けにきたぞ!」
牢は館跡地の端にあった。
地下への階段を降りるとそこには無数の檻。そして朽ち果てた拷問具が並んでいた。レミアは【ファイア】でそれを照らして瞬間、尻込みする。
後ろに続くエリオ、ハリエットも同じく。三人は緊張した面持ちで先を行く。
声を張り上げて、ダースを探した。
「ダース! いたら、返事をしろ!!」
しかし、答えはない。
すると自然に、まさかという気持ちが湧き上がってくる。
レミアは唾を呑み込んで、深呼吸をし、もう一度大きく声を発しようと――。
「レミ、ア……ちゃん?」
――した、その時だった。
向かって右手の牢の中から、彼の掠れた声が聞こえたのは。
「ダース! 大丈夫か!?」
「ふふっ、大丈夫、よ。特になにかされたわけでは、ないから……」
少女が駆け寄ると檻の向こう側には、手足を拘束されたダースの姿。
口調は余裕を見せているが、目に飛び込んできたのは明らかに衰弱したそれだった。食事を与えられていないのだろう。もしかしたら、眠れてもいないのかもしれない。目の下には大きなクマが出来ており、無精髭が生え、なんともみすぼらしかった。
「待っていろ、今すぐ出してやるからな――エリオ!」
「はい、分かりました!」
レミアは思わず目を逸らしそうになりながらも、少年に指示を出す。
すると声をかけられたエリオは、何やら懐から細かな道具を取り出して、牢の鍵を開けようと試みるのだった。そして――ガチャン、という重々しい音と共にそれは開く。三人は我先にと中に飛び込み、各々小さな身体で大きなダースの身体を持ち上げた。
「歩けるか……?」
「ふふふっ、これでも元はヴァンパイアハンターだったのよ? とは言っても、思ったよりも衰えてるようね。ごめんなさい……」
「謝るな。妾たちはお前を助けるために来たのだからな」
「…………そう。ところで――」
細々とした声で、支えられながらダースはこう口にする。
「カイルちゃんは、どこ……?」
「うむ、カイルか。カイルは――」
それに少女は緊張した表情で答えた。
◆◇◆
大鎌が、弧を描くように迫りくる。
ボクはそれを寸でのところで回避して、後方に飛び退った。
呼吸が乱れている。酸素が足りなかった。思考が判然とせずに、視界は狭くなっている。それでも相手――レーナは止まることなく、ボクに躍りかかってきた。
「あはは! カイル兄さん、そんな戦い方じゃ――オレは倒せないよ!」
「く……っ!?」
気付けば眼前に迫っていた少女。
その攻撃を杖で、どうにか防いだ。でも、その一撃でボクの身体は後方へと吹き飛ばされる。壁に激突して、腹の底から何かがせり上がってくるのを感じた。
それを堪えて、なんとか膝を折らずに踏ん張る。
「…………これが、四魔神」
――間違いなく、強い。
それはもはや、一介の冒険者に相手が出来るものではなかった。ランク付けなんて不可能な、そんな領域の相手だ。ボクは改めて、魔族の恐ろしさを知る。
そして、こう思うのだ。
これは、勝てないかもしれない――と。




