結界
フェリスたちとナヴィラ族の部隊は、周辺の物音に警戒しながら魔法結界に近づいた。
ナヴィラの戦士が結界を突っ切ろうとするが、入れない。普通に谷の景色は続いているように見えるのに、不可視の壁にさえぎられている。
「困ったな。無理やり壊すしかないか」
ナヴィラ族の戦士が斧を振り上げると、ミランダ隊長が慌てて告げる。
「壊すのはやめておいた方がよいかと! 結界を張った魔術師に気付かれる危険があります!」
「ならば、どうしたらいいのだ? このままで通れんぞ」
「ここだけ魔力の流れをせき止められれば、結界の穴をくぐり抜けることもできると思うのですが……そのためにはまず魔力の流れを分析しないと……」
ミランダ隊長の言葉に、ジャネットが焦った。
「のんびりしてて大丈夫なんですの!? いつガデル族が出てくるか分かりませんわよね!?」
「しかし、他に方法が……」
一同が難しい顔をしている横で、フェリスはおずおずと魔法結界に近づいた。
「どうなってるんでしょうか……」
ちょっと触って確かめてみようと魔法結界に手を伸ばすと。
まるでフェリスの手を避けるかのように、魔法結界のど真ん中に丸い穴が空き、向こう側に集落が見えた。
「え………………」
アリシアが手で口を覆って目を丸くする。
「あっ、ご、ごめんなさい! 勝手に触って! 触れませんでしたけど!」
フェリスは急いで手を引っ込めた。
すると、魔法結界の穴も塞がってしまう。
「フェリス、それでいいんです! そのまま!」
「ふえ!?」
「こう、手を魔法結界に突っ込んでおいてください!」
ミランダ隊長がフェリスの手を握って魔法結界に近づけると、結界の中に再び穴が広がる。
「なるほど……魔法耐性が無限だと、結界も一瞬で無効化できてしまうのね……」
アリシアは少し呆れたようにつぶやいた。
「よく分からんが、今のうちだ! 全員、突撃!」
ナヴィラ族の戦士たちが結界の穴に飛び込む。
「入らせてもらうわね」
「し、失礼しますわ!」
「手を動かさないでくださいね!」
「あっ、置いてかないでくださあああいっ!」
アリシア、ジャネット、ミランダ隊長も結界の穴をくぐり抜け、フェリスも急いで仲間たちの後を追った。その後ろで穴が音もなく閉じる。
結界の向こうには、張り出した岩盤と、その周辺に寄り集まった粗末な掘っ立て小屋の数々があった。
ナヴィラ族の戦士たちは、物陰に身を潜めつつガデル族の集落の方へと進んでいく。
アリシアが杖を握り締めた。
「私たちも行きましょう。絶対に見つからないよう、隠れながらね」
「はいっ! かくれんぼですね!」
意気込むフェリス。
「そんな平和なものじゃないと思いますわ!」
震えているジャネット。
「皆さん、無茶だけはしないでくださいね!」
ミランダ隊長を先頭に、少女たちはガデル族の村を目指して駆け出した。




