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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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はじめてのお手紙

 魔法学校の生活が戻ってきた。


 王都での騒動から一転、授業や友人たちとのお喋りを楽しむ穏やかな日々。


 静かといえば静かだが、王都の強烈な刺激に消耗したフェリスにとっては、その暮らしがなによりもありがたかった。


「ふぁぁ……おひさま、きもちーです……」


 なんて、授業中についつい机に小さな体を伸ばしてしまい、


「フェリスちゃーん? お昼寝はお休みの日にしようね~」


 とロッテ先生に注意されたりする。


 周囲はくすくす笑ってみているし、ジャネットは「かかかかかわいいですわー!!」と悶絶しているし、フェリスは恥ずかしくて死にそうになる。


 そんなある日のこと、女子寮に帰ると、寮母さんがフェリスに一通の封筒を差し出してきた。


「はい、これ。フェリスに届いてたよ」


 クリーム色の上質な紙を用いた、気品溢れる封筒。


 裏面には、真紅の封蝋に王家の印章が押されている。


「……なんですか?」


 フェリスは目をぱちくりとさせた。


「送り主は……ロゼッタ・ジ・バステナって書いてありますわ! 姫殿下からのお手紙ですわ!」


 ジャネットが跳び上がった。


「わー! お手紙!? これがお手紙なんですね!? わたし、お手紙もらったの初めてですー!」


「良かったわね」


「はい、良かったですー!!」


 アリシアに微笑まれ、無邪気に喜ぶフェリス。


「じゃ、確かに渡したからね。まったくもー、こっちで預かっとくなんて怖いったらありゃしない」


 寮母さんは肩の荷が降りた様子で、そそくさと厨房に戻っていった。


 フェリスは受け取った封筒をじーっと見つめる。


 表から眺めたり、裏から眺めたり、横から眺めたりし。


「…………? なんにも、書いてないですけど……」


 きょとんと、首を傾げた。


 アリシアがくすりと笑う。


「お手紙は封筒の中に入っているのよ。ジャネット、開けてあげて」


「ええっ!? 間違って破いてしまったらどうしますの!?」


「姫殿下に謝りに行くしかないわね」


「そんな重責をわたくしが……!?」


「ジャネットだからこそよ。ジャネットにしか……頼めないわ」


「そうですわよね! わたくしはジャネット・ラインツリッヒですもの!」


 簡単に乗せられてしまうジャネットである。


 とりあえず風に飛ばされる危険性を考え、三人で室内に退避。


 ジャネットは緊張に震えながら、慎重に慎重に封を開けていく。


 中に入っていた良い香りのする便箋を、フェリスはわくわくしながら開いた。


 なにせ、人からこんなに改まって連絡をもらうなんて初の体験。


 どんなことが書いてあるのだろうかと、小っちゃな胸を期待に膨らませる。


 そこには、こう書かれていた。


『親愛なるフェリスへ。


先日はわたくしとわたくしの都を救ってくださり、本当にありがとうございました。


お陰様で王都には平和が戻り、わたくしは今日もお勉強に精を出しています。


父君たちがなにも知らないのが、ちょっとおかしくて、わたくしだけがフェリスのことを知っているのが嬉しいです。


本当ならあなたを父君に紹介して叙勲すべきなのに、嬉しいだなんて駄目ですよね。


また学校がお休みになったら、是非わたくしの部屋に遊びにいらしてください。美味しいケーキをご用意してお待ちしています


愛を込めて ロゼッタ・ジ・バステナ』



「わー! 美味しいケーキです! 楽しみですー!」


 ぴょんぴょん飛んで喜ぶフェリス。


「愛を込めて、ってどういうことですの!? 不埒ですの!?」


「落ち着いて、ジャネット。普通に手紙の結びの言葉でしょう」


 混乱するジャネットをなだめるアリシア。


「こんな素敵なお手紙を頂いたら、しっかりお返事を書かないといけないわね」


「はい! いっしょーけんめー書きますっ!」


 アリシアが封筒や便せん、蛾ペンなどを用意してくれ、フェリスは武者震いしながら机に向かった。


 ……が、左右からアリシアとジャネットに興味津々で見守られ。


「は、恥ずかしいからまだ見ないでくださあいっ!」


 手紙に覆い被さって隠すのだった。



 そして、翌日。


 学校が終わると、フェリスはドキドキしながらトレイユの街にある飛脚ギルドに向かった。


 ギルドの受付で、眼鏡のお姉さんにロゼッタ姫への手紙を渡し、受領のハンコを押してもらう。


「お願いします!」


 ぺこりとお辞儀をして、飛脚ギルドを後にした。


 しかし、すぐに受付へ舞い戻り、カウンターに手を乗せてお姉さんを見上げる。


「あのあのっ、大切なお友達へのお手紙なのでっ、ちゃんと届けてくださいね?」


「ええ、大丈夫ですよ」


 優しくうなずいてくれる受付のお姉さん。


「ほんとにほんとに、お願いしますっ! 大切なこと、いっぱい書いてるんです!」


 心配で仕方ないフェリスが念を押すと、


「うちの飛脚たちは命をかけて運んでいますから。安心して任せてくださいね」


 お姉さんは頼もしく請け合ってくれた。


 そんなフェリスを、付き添いのジャネットが後ろから羨ましげに眺める。


「いいですわね、ロゼッタ姫。フェリスからお手紙もらえるなんて……」


「ジャネットもフェリスに書いてみたら? きっとお返事くれるわよ」


「そ、そうですかしら」


 アリシアがうなずく。


「ええ。お手紙が楽しくて仕方ないはずだもの」


「分かりましたわ! 試してみますわ!」


 ジャネットは手の平を握り締めた。




 数日後、フェリスが寮母さんから差し出されたのは、とてつもなく巨大な封筒だった。


 フェリスが両腕で抱えないと持てないサイズ。


 しかも、中身がぱんぱんに詰まっている。


「まったくもう……同じ寮にいるんだから、自分で渡せばいいじゃないかい」


 寮母さんから呆れ気味に封筒を渡され、フェリスはよろめく。


「こ、これ……ジャネットさんからです! 今度はジャネットさんのお手紙です!」


 アリシアがため息をついた。


「ジャネットったら……いくらなんでも大きすぎると思うわ」


「か、書きたいことが多すぎて、一枚じゃ収まりきれなかったんですわ!」


「何百枚書いているのよ……」


「数えきれませんわ! フェリスに伝えたいこと、たくさんありますもの!」


「口で伝えればいいんじゃないかしら……」


 呆れるアリシアだが。


「ありがとうございます! わたし、頑張ってお返事書きますっ!!」


 フェリスは巨大な封筒を抱え、笑顔で意気込んだ。

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