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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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暗中模索

「ジャネットさん、どこまで行ったんでしょう……」


「早く見つけないと危ないわ……彼女、一人じゃなにをするか分からないし……」


 フェリスとアリシアは手を繋ぎ、壁や街路樹らしきものを手探りしながら、闇の中を進んでいく。


 そのとき、すぐそばから憤慨した声が聞こえた。


「なにをするか分からないとは失礼ですわね! わたくしはいつだって賢明で聡明なことしかしませんわ!」


 ジャネットの声である。


「ジャネットさん!? どこですか!?」


「ここですわ!」


「ここ……? あら……なにか足下に生温かいものが……?」


「それがわたくしですわ!」


「どうしてジャネットは地面にうずくまっているの?」


「あ、あまり歩き回ると危険だと判断したからですわ」


「どうしてジャネットは震えているの?」


「さささ寒いからですわ!」


「た、確かに賢明で聡明ね……」


「なんで笑うんですの!?」


 確実に顔を真っ赤にしているであろうジャネットだが、幸いにと言うべきか、周りが真っ暗すぎて顔が見えない。


「ジャ、ジャネットさん、手を繋いでもらえますか? 迷子になったら大変ですし……」


「そうね、ジャネットが迷子になったら大変ね」


「わたくしは迷子になりませんわ!」


「えっと、これがジャネットさんの手……ですか? なんか、すごくやわらかいですけど……」


「きゃー!? それは手じゃなくて胸ですわー!」


 ごたごたしながらも、三人はなんとか手を繋ぎ合って歩き出す。


 だが、なにも見えないものだから、あちこちにぶつかりまくりである。何度も転びそうになっては他の二人が慌てて支え、何度も三人一緒に壁に激突する。


 十分くらい進んだ頃には、フェリスもアリシアもジャネットもぼろぼろになっていた。


「うう……痛いですぅ……」


「お洋服が破れてしまいましたわ……」


「このぬるぬるしたモノはなにかしら?」


 まさに暗中模索。


 いつ高いところから落ちてしまうか分からないし、常に触覚と聴覚を研ぎ澄ましていなければならないしで、気力の消耗も激しい。


「なにか、周りを見る方法とか、ないんでしょうか……」


 フェリスが途方に暮れていると、急に凄まじい熱波と共に、炎の塊が目の前に出現した。


「ひゃあああああっ!?」「なんですのー!?」


 びっくりして尻餅を突くフェリス、釣られて震え上がるジャネット。


 アリシアだけは冷静に、


「フェリスの召喚獣ね。レヴィヤタンって言ったかしら」


「ほう、覚えていましたか。人間にしては良い記憶力を持っているようですな」


 炎の塊は、馬鹿にしたように笑った。いや、ただの炎ではない。それは翼の生えた人の姿をしており、真っ黒な瞳と口のような部分も存在している。


「あ、レ、レヴィヤタンさん。おひさしぶりです」


「お久しゅうございます、女王様」


 レヴィヤタンはフェリスに向かって深々とお辞儀した。


「こ、これが召喚獣……? どうしてフェリスを女王って呼ぶんですの……?」


 ジャネットは目を丸くしている。


 レヴィヤタンはその言葉が聞こえているのかいないのか、フェリスに告げる。


「女王様。お困りのようでしたら、わたくしの力をお使いください」


「えっ? 周りを明るくとか、できるんですか!?」


「ええ、できますとも。わたくしの炎は、ゲヘナの炎。どんな魔術の闇であろうと、わたくしの炎を掻き消すことはできません」


「……本当だわ。カンテラも照明魔術も使えなかったのに、レヴィヤタンの炎はちゃんと見えている……」


「じゃ、じゃあ、お願いします!」


「お任せください。直ちにこの穢らわしい都市を火の海に変えてご覧に入れましょう」


「火の海はだめですうううううっ!」


 震え上がるフェリス。


 結局、安全策を採ってレヴィヤタン自身が照明代わりに先を進むことになり。


「……便利なランタンですわね」


「戦闘能力も高いし、素晴らしいわね」


「ぴかぴかです!」


「……解せませんな」


 凶暴な召喚獣は物言いたげな表情で王都を練り歩いた。

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