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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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チーム

 フェリスたちはガズーラを三体倒して三人分のポイントを集め、二日の道のりを森の入り口まで歩いた。


 へろへろになりながらスタート地点に戻ったときには、既に生徒たちの多くが集合していた。魔物のパーツを教師に見せ、ポイントの確認を受けている。


 三人の姿を見るや、ロッテ先生が小走りに近づいてきた。


「お疲れ様~、フェリスちゃん、アリシアちゃん、ジャネットちゃん! ずいぶん消耗してるね~。怪我は大丈夫?」


「大丈夫ですわ……ちょっと歩き疲れただけですわ……」


 ジャネットは戦闘用の杖にすがりつくようにして立っている。膝がぷるぷる震えているのに、座り込もうとはしない。


「ジャネット、座って休憩したら? もうゴールしたんだし」


 勧めるアリシア。


「お、お断りですわ! ライバルのアリシアが立ってるのに、わたくしだけ座ったら負けた感じがしますわ!」


「もう、意地っ張りなんだから……」


 アリシアは呆れ笑いを浮かべてジャネットを眺める。


 そんな二人を見て、なんかいいなぁと感じるフェリスである。

 相変わらずライバル関係ではあるのだけれど、確実に距離が縮まっている気がする。いつの間にか呼び捨ての仲になっているし、ジャネットにも言葉ほどの敵意がない。


 フェリスは手を握り締めて微笑んだ。


「えへへ……二人が仲良しさんになって嬉しいです」


「な、仲良くなってなんかいませんわ! 二人はライバルですわ!」


 ジャネットは真っ赤な顔で腕組みし、ぷいっとそっぽを向いた。


 そんな三人の顔を、ロッテ先生が見比べてうなずく。


「ふむふむ……よく分かんないけど、よく分かったよ! それじゃあ、魔物を倒した『あかし』を見せてくれるかな?」


「はいっ! これです!」


 フェリスは皮袋から、ガズーラの頭部の骨を三つ取り出してロッテ先生に渡した。


「お、おお……重いね!? というか……これ……ガズーラの骨じゃない! しかも三つも!? これどうしたの!?」


 ロッテ先生は目を丸くする。


「もちろん、わたくしたちが倒したんですわ!」


 胸を張るジャネット。


「まあ、ほとんどフェリスが倒したようなものだけどね」


 笑うアリシア。


「そんなことないですよ! 三人で協力して倒したんですっ!」


 拳を握り締めるフェリス。


 集合していた生徒たち、教員たちの視線が、一気に集まる。


「ガズーラ!?」「あの、騎士団が全力で戦わないと倒せない魔物か!?」「ウソ……あんな小っちゃい子たちが!?」「どうやって……」「すごすぎ……」「マジかよ……」


 動揺のざわめき。


 羨望のまなざし。


「ふふんっ、ガズーラなんて、わたくしたちにかかれば子ネズミみたいなものでしたわーっ!」


 ジャネットは鼻高々である。


「ちょっとそれは言い過ぎなんじゃ……フェリスは食べられてたし」


 とアリシア。


「結構大変でしたよね。三匹倒すのに三時間かかりましたし」


 フェリスがうなずくと、ロッテ先生はさらに目を見開く。


「たったの三時間!? 普通は、騎士団が一日がかりで一匹倒せるかどうかって魔物だよ!? 生徒は近づかないようにって、しおりに書いてたはずなんだけど……」


「あ、ご、ごめんなさい! 近づいちゃいました!」


 慌ててフェリスはぺこりと頭を下げた。


「いや……無事に倒せたんならいいんだけど……そっか、これほどまでとはね……」


 ロッテ先生は顎をつまんで呟く。


「それじゃあ、仮設テントでタオルをもらって、体の汚れを軽く落としたり、食事を取ったりしてて。もうそろそろ次の馬車が出るから、それに乗って学校に帰るといいよ」


「はいっ!」


 フェリスたち三人は元気よく返事した。


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 魔法学校の外庭に、遠征から帰還した生徒たちが立ち並んでいる。


 多くの生徒が疲労をにじませ、汚れた服を着ているが、その表情はいずれも心なしか誇らしげだった。


 大勢の生徒を前に、校長が遠征完了のスピーチをしている。


「……お主らは、実に実によく頑張った。この遠征を通して、貴重な経験を積み、卒業後に繋がる自信も手に入れたことじゃろう」


 生徒たちがうなずき、校長は微笑する。


「これからも様々な授業で、チームが必要とされることになる。今回の遠征でしっくり行ったチームは、今後もチームを続けるとよかろう。それはきっと、冒険者や兵士となった後も、かけがえのない関係となるはずじゃ」


 校長が両腕を大きく広げた。


「では、これで遠征を終了とする。明日からは、ごほうびの休暇じゃ! しっかり体を休めるとよい!」


 杖を一振りするや、校長の体がひねったように歪み、外庭から消え去った。


 生徒たちはざわめきながら、各自の寮へと戻っていく。


 外庭に残ったまま、おしゃべりをしている者たちもいる。


「じゃあ……帰りましょうか。早くお風呂に入って、さっぱりしたいですわ」


「ええ。私たち、ボロボロね」


 歩き出すジャネットとアリシアに。


「あ、あのっ! わたし、二人にお願いがあるんですけどっ!」


 フェリスが声を放った。


 二人は足を止めてフェリスを見やる。


「あら、なにかしら?」


「フェリスのお願いなら、なーんでも聞きますわ! 遠慮せず言ってくださいまし!」


 ジャネットは頼もしく胸を叩いた。


「え、えっとですね……そのっ、これからも、三人でチームを組みませんか!?」


「え……フェリスと、わたくしと、アリシアの三人で、ってことですの?」


 フェリスはこくこくとうなずく。


「だって、わたしたち、相性抜群じゃないですか! ずっとチームでいたら、すっっっごく楽しいと思うんです!」


「でも……ライバルとなれ合いを続けるのは……」


 ジャネットはためらった。


「だめ……ですか……?」


 しかし、うるうると瞳を潤ませるフェリスに、うっとたじろぐ。


 アリシアが笑った。


「私は構わないわ。結構、バランスの取れたチームって感じはするしね」


「わあいっ! アリシアさん、大好きですーっ!」


 フェリスが小躍りすると、慌てたようにジャネットが告げる。


「し、仕方ありませんわね! フェリスのお願いなら、引き受けるしかありませんわ!」


「ジャネットさんも大好きですーっ!」


「そんな……大好きだなんて……そんな……」


 てれてれと頬を染めるジャネット。


「えへへ! これからは三人でチームですっ!」


 フェリスは大喜びでアリシアとジャネットの腕にしがみついた。


「ちょっ、フェ、フェリスっ! それはまだ大胆すぎますわーっ! いくらチームでも順番ってものがっ!」


 ジャネットは動揺のあまり意味不明なことを口走る。


 一方、アリシアは唇に指を添えながら。


「だったら、今度の休暇をチームで過ごすのもいいかもしれないわね。プライベートのジャネットのこと、見てみたい気もするし」


「わたくしは、学校でもプライベートでも同じく高貴ですわ! ですが! フェリスと一緒に休暇を過ごすのは大歓迎ですわ!」


 なぜかドヤ顔のジャネット。


「フェリスは、どこに行きたい? 屋敷に帰るのもアリだけど……どうせなら思いっきり羽を伸ばしたいわね」


「行きたい場所……? 行きたい場所……行きたい場所……」


 フェリスは困った。


 ずっと魔石鉱山で暮らしていたから、行ってみたいところはたくさんある。だが、たくさんありすぎて、その中から一つを選ぶのは難しい。

 なにより、自分が「ここ!」と指定したら二人に無理をさせてしまいそうで、なんだか申し訳ないのだ。アリシアもジャネットも二歳年上だから、どうもフェリスを子供扱いして甘やかしてくれちゃうところがある。


「うう……分からないですけど……」


 フェリスはすがるような目でアリシアを見上げた。


 アリシアは小さく笑う。


「じゃあ、海はどうかしら? 近くに砂浜とか、親戚の別荘があって、のんびり楽しめるようになっているの。体を休めるにはもってこいじゃないかしら。フェリス、海は行ったことある?」


「海って、水がいーっぱいあるところですよね!? 青くって、きらきらしてて、カニさんとかいるとこですよね!? 見たことないです! 行ってみたいです!」


「ふふ、良かった。ジャネットはどうかしら?」


「青い海、白い雲、白い砂浜……泳げないフェリス……泳ぎを教えるわたくし……手を繋いで波間を漂う二人……ああ……海ですわ……」


 既にジャネットは空想世界にトリップしていた。


 それを確認してアリシアはうなずく。


「大丈夫みたいね。そうと決まったら、新しい水着を買っておかないと。楽しみだわ」


「はいっ、楽しみですーっ!」


 フェリスたちは三者三様、期待に胸を躍らせながら寮に帰った。

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