でえと
翌朝、ジャネットが目を覚ますと、体の上になにか小っちゃい生き物が載っていた。
「ジャネットさん。ジャネットさあんっ! 朝ですようっ!」
ゆさゆさと優しく体を揺さぶられるのが心地よく、ミルクのような甘い匂いが快い。ジャネットは夢うつつでつぶやく。
「あと一ヶ月……眠らせてくださいまし……」
「一ヶ月もお休みしたら先生に叱られちゃいますようっ! でぇと、行かないんですか?」
「っ! デート!?」
ぱちっと目を開けるジャネット。体の上に載っていたのは、フェリスだった。お出かけ用の服を身にまとい、脚を畳んでちょこんと座っている。
「フェリス!?」
ジャネットは眠気が瞬時に消え去るのを感じた。こんな朝っぱらからフェリスの可愛い顔を至近距離で見るのは刺激が強すぎる。
朝っぱらといっても、日はすっかり昇りきっているけれど。
「おはようございます、ジャネットさんっ!」
にこっと笑うフェリス。
「ご、ごめんなさい! すぐ準備しますわ!」
「はいっ!」
元気にお返事しながらも、フェリスはジャネットの上から退かない。
――そこにいらしたら準備できないんですけれど……。
思いつつも、これはこれで幸せなのでなにも言えないジャネットである。
「あ! わたしジャマですよね! すみません!」
フェリスが自分で気づいてジャネットの上から降り、ジャネットはようやく動けるようになる。
ジャネットは身だしなみを整え、鞄の中身をもう一度確認してから、フェリスと二人で自室を出た。
「今日はでぇと、いーっぱい楽しみましょうね!」
「え、ええ……」
ジャネットは自分のほっぺたをぎゅーっとつねる。
「どうしたんですか? ほっぺたがジャマなんですか?」
「フェリスとデートできるなんて、夢でも見てるんじゃないかと思って……。痛いかどうか確かめていたんですの」
ジャネットとフェリスは女子寮の玄関を出て、トレイユの街へと向かった。学校の外出許可証は、予定が決まったときに早めに取得している。
「でぇと♪ でぇと♪ ジャネットさんとでぇと~♪」
ご機嫌で歌いながら、フェリスは大きく手足を振って歩く。
「フェリス、その歌は……」
「なんですかっ?」
「いえ……」
恥ずかしすぎて死んじゃいますわ、と言いたくても言えないジャネット。フェリスとのデートは嬉しいし、全校生徒に自慢したいくらいなのは事実だが、全住民に宣伝するのは開けっぴろげすぎる。
一方、フェリスは。
――ジャネットさんの『こいびと』だなんて、すっごくオトナっぽいです! わたし、オトナになっちゃいました!
と胸を弾ませていた。
恋人がいったいどういうものなのか、具体的なところはよく分からないが、その響きには憧れを感じる。常日頃から素敵なお姉さんだと思っているジャネットの恋人になれるのは、自分までお姉さんになった気がしてワクワクした。




