関所破り
仕事の修羅場続きで更新がだいぶ遅れてしまって申し訳ございません。
ようやく少し時間ができましたので、更新を再開させて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
関所の正門から離れた壁のそばで、少女たちは森に身を潜める。荷袋と装備を背負い、兵士の哨戒に警戒している。
魔法のホウキ代わりに使うのは、ジャネットが風魔術で手近の木から切り出した木材だ。先端には枯れ草をツルで縛りつけてホウキらしい外観にしている。
魔法のホウキは杖と同じく呪物であり、魔術師の集中力を高めるのが目的だ。有名な工房の品は制御支援の魔術が付与されていたりもするが、とりあえず形状を似せておけば急場はしのげる。
魔術に杖を使わないフェリスにホウキは不要、アリシアとジャネットはそれぞれ一つずつホウキに乗り、ジャネットはロゼッタ姫を抱えている。
「お願いしますね、騎士さん」
ロゼッタ姫はジャネットの腕の中で笑った。
「わ、わたくしは魔術師なのですけれど……」
ジャネットは緊張で身をこわばらせる。王国の守護者を自認するラインツリッヒ家でなければ果たせない重責、全力で頑張らねばと武者震いが走る。
アリシアが友人たちの顔を見回した。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい!」「ええ!」
少女たちが森から飛び出した。飛行魔術の魔法陣が、フェリス、アリシア、ジャネットの周囲に発生する。
少女たちは関所の上空を通過した。そのまま山の頂に向かって飛び、背後の関所が小さくなってから地面に降り立つ。プロクス領に近づきたくはないのか、番兵たちは追ってきていない。
「な、なんとか……お役目果たせましたわ……」
ジャネットはロゼッタ姫を下ろすや、息を切らしてへたり込む。まさかここまで長距離を飛ぶとは思っておらず、腕は痺れきっている。
「すみません……わたくし、重かったですよね……」
悲しそうな表情のロゼッタ姫に、ジャネットは慌てる。
「い、いえ! 姫様は重くなんてありませんわ! 吹けば飛ぶくらい軽かったですわ! 紙切れのようなものですわ!」
「それは逆に失礼じゃないかしら」
アリシアは危惧した。ロゼッタ姫はジャネットにお辞儀する。
「ありがとうございます。お陰様で、素敵な空の旅を楽しめました。王宮を抜け出して街で遊ぶときなど、また飛びたくなったらジャネットを呼びますね」
「あ、ありがたき幸せ……ですわ」
ジャネットは震えた。光栄ではあるのだが、そう何度も王族の命を預けられては心臓が保たない。そもそも王宮脱出の片棒を担がされたらたまらない。
森は途切れ、山の頂に至る獣道は岩場になっていた。
少女たちは手を貸し合いながら、急な傾斜を登っていく。動いているはずなのに、指先が冷たい。高度が上がるほどに、空気が研ぎ澄まされていく。少女たちは持ってきていたコートとミトンを身につける。
やがて坂が尽き、四人は頂上にたどり着いた。
そこに広がるのは、一面の白。遠大な山脈の端から端、峰から峡谷に至るまで、純白のドレスに覆われている。樹冠も白を被ってクリスタルのような柱を垂らし、空からは薄片がきらめきながら降ってくる。
フェリスは目を丸くした。
「すごいです……山が真っ白です――――――っ!!」
「綺麗ね……」
アリシアも息を呑んで立ち尽くす。バステナ王国より北に位置し、地脈の加護も薄いプロクス王国は、一年の半分を雪に包まれて過ごすと言われている。
「プロクスに来るのは初めてですか?」
ロゼッタ姫から問われ、アリシアはうなずく。
「あまり旅行する気にはなれなくて」
「獣神戦争の残り火は、まだ燃えていますね」
ロゼッタ姫が痛ましそうにアリシアを見る。アリシアの母が獣神戦争で亡くなったことを知っているのだろう。
「だけど……もう少し早く、来ても良かったかもしれません」
アリシアは雪景色を眺めてつぶやく。かつての争いを塗り消してしまいそうなほどに、北国の山々は美しかった。
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