まじょのおるすばん
「レインさん、レインさん! みんなでカードゲームしませんか?」
なんとか黒雨の魔女の気を紛らわそうと、フェリスはカードを持って歩み寄る。
「カードゲームか……食べたことはないのう……」
「ふあっ……」
が、魔女はぼんやりとした様子でカードを頬張ってしまう。
「食べちゃダメですわー! フェリスじゃないんですから!」
すぐさまジャネットが魔女の口からカードを取り返す。
「わたし、カードは食べたことないです」
「あっ、ごめんなさい。いかにもフェリスがやりそうなことだと思って……」
「でも食べてみたいです!」
「ダメですわ! 食べられませんわ!」
きらきらと目を輝かせるフェリスからジャネットがカードの束を隠す。
さっきからなんとか黒雨の魔女を落ち着かせようと頑張っている少女たちだが、なかなか上手くいかない。
可愛いぬいぐるみを渡してみても効果はなかったし、フェリスの歌も効かなかった――ちなみにジャネットには効果が抜群で、ジャネットはしばらく感動で床に倒れて動かなかった――し、とっておきのメギドプリンも魔女の喉を通らなかった。
いつパニックになって瘴気が出てくるか分からないので、フェリスたちは一時たりとも黒雨の魔女から目を離せない。
「こうなったら、魔法結界でライラさんが帰ってくるまで封印するしかないんじゃないかしら?」
「可哀想ですよ!」
「ちょっとした冗談よ」
「アリシアが言うと冗談に聞こえませんわ……」
額を寄せ合って話し合う少女たち。
「あっ! いいこと思いつきました!」
「なんですの?」
「お耳、貸してください」
「み、耳ですの……? こう……?」
ジャネットは照れながら身を屈め、フェリスの口元に耳を持っていく。フェリスの小さな息がかかってくるのがこそばゆい。
フェリスは口元を手の平で覆い、ジャネットとアリシアにささやく。
「こしょこしょこしょ……」
「ふんふん」
「こしょこしょこしょ……」
「ふんふんふん」
フェリスの内緒話にうなずくジャネットとアリシア。フェリスは爪先立ちして一生懸命背伸びしている。
「どうですかっ?」
「面白いわね」
「フェリスがやりたいなら、まあ……いいと思いますわ」
フェリスの願いならなんでも叶えてあげたいジャネットも同意する。フェリスがやりたいなら王国の転覆だって厭わない覚悟である。それがラインツリッヒの娘である。
「じゃあ、布が要るわね。オーガンジーが綺麗かしら。それと綿? 寮母さんに借りに行きましょうか」
「楽しそーですー!!」
少女たちはいそいそと女子寮の廊下へ出て行った。




