天使の相談
「はあ……はあああああああ………………」
フェリスとアリシアの部屋で、ライラがタンスのそばに浮かび、ため息をついている。
部屋に遊びに来ていたジャネットがアリシアと顔を見合わせる。
「あの天使、さっきからずっとため息をついていますわね……すごく露骨に」
「なにか悩みがあるんじゃないかしら。ジャネット、聞いてみたら?」
「面倒事の予感がするから聞きたくありませんわ……」
平穏な日々を過ごしたい気持ちは、ジャネットもアリシアも同じである。ただでさえここのところ、紛争やら学校占拠やらで翻弄されている。
「ライラさん、息が苦しいんですか? だいじょぶですか?」
フェリスがライラの背中をさすさすとさする。
「女王様……わたしの悩みを聞いてくれるのね?」
「ふえ!? え、えとっ……」
「ありがとう! さすがは全知全能と慈愛の女王様だわ! 女王様に聞いてもらえれば安心だわ!」
「は、はいっ!」
ライラに肩をがしっと握られ、フェリスはうなずく。
「聞いてもいないのに語り出す気満々ですわ……」
呆れるジャネット。
しかしその押しの強さこそが、かつて黒雨の魔女の心を開く原因になったのかもしれないとアリシアは思う。
天使ライラはテーブルに頬杖を突いて嘆く。
「実は最近……レインのわたし依存が激しいの」
「…………たわしいぞん?」
フェリスはきょとんとした。
「わたし依存。ちょっとわたしがお出かけしてるだけで心配するし、どこに行っていたのかって気にするし、寂しがってヌイグルミをガジガジ噛むし、わたしが帰ってきたら人の言葉を失って『にゃーにゃー』しか言わなかったりするの」
「レインさんの話ですよね……?」
自信がなくなるフェリス。
「レインの話よ。そういう日は、わたしが耳かきして寝かしてあげるまで落ち着かないの。寝ているあいだもわたしがどこにも行かないよう、きゅって抱きついているのよ。レインってホント可愛いわよね」
天使ライラはほっぺたを抱えて顔を赤らめる。
「のろけにしか聞こえませんわ!!」
「のろけじゃないわ、相談よ。わたし、とっても困っているの。うふふ」
「うふふって笑ってるじゃありませんの!」
「嬉しいけど困ってるの。レインのためにもならないもの。嬉しいけどね」
「やっぱりのろけですわ!」
ジャネットがテーブルを手の平で叩く。
「のろけって、なんですか?」
フェリスが尋ねた。
「好きな人の話を楽しそうにすることよ」
「好きな人の話……じゃあ、わたしだったらアリシアさんとジャネットさんの話をするってことですね、ジャネットさん!」
「えっ!? そ、そうですわね! も、もしフェリスがわたくしのことを、す、好きだとしたら、そういうことになるかもしれませんわね!」
ジャネットは真っ赤になった。
アリシアはくすりと笑う。
「ジャネットがフェリスにもらった押し花の自慢を教室で延々としていたのもそうね。のろけね」
「わわわわわたくしは延々となんかしてませんわっ! たった三時間くらいですわ!!」
ジャネットは憤然と反論するが反論できていない。
ライラが真剣な顔をする。
「レインがわたしを愛してくれるのは嬉しいけど、レインにはもっと、いろんな人と仲良くしてほしいの。わたしたちが人間だった頃にできなかったこと、たくさん楽しんでほしいの。だから……レインのわたし依存、なんとかして治してくれないかしら」
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