二千年ぶりの二人
魔法学校の図書館の屋根裏部屋。
屋根裏といっても、そこは本校舎の教室より広く、様々な魔導具と太古の絵画、彫刻などで彩られている。
魔法学校は歴史が古く、裏側については校長すら全容を把握していないと言われる。ここは、そういった秘密の空間の一つなのだ。
今、その屋根裏は絨毯やカーテンで居心地良く整えられ、大きなベッドも運び込まれて女の子らしい部屋になっている。
猫脚の優雅なテーブルに座っているのは、黒雨の魔女レイン。不機嫌そうな顔で頬杖を突き、細い指でテーブルの天板を叩いている。
「ただいま、レイン! 女王様のお世話、終わったわ! 教室まで送っていこうとしたんだけど、ダメって言われたから寮の前でお見送りしてきたわ!」
開け放たれた窓から、天使ライラが飛んで入ってきた。
「……おかえり」
レインはぷいっと顔を背ける。
「どうしたの? なんで怒ってるの?」
「怒ってはおらぬ」
「怒ってるじゃない。……というか、すねてる?」
「すねてもおらぬ」
ライラが視線を合わせようとしても、レインはすぐに逆方向を向いてしまう。小走りで回り込むライラ、そっぽを向くレイン。奇妙な追いかけっこが繰り広げられる。
「もー! レインってば、こっち向いて!」
天使が黒雨の魔女の両頬を手の平で挟み、無理やり自分の方を向かせた。
「どうしたの? なにか気に入らないことがあるなら、ちゃんと言って。あなたのためなら、わたしはなんでもするんだから」
真っ直ぐな瞳で見つめられ、黒雨の魔女はたじろぐ。
「…………別に、気に入らないことなどない。ただ、目を覚ましたらライラの姿がなかったから、心配になっただけじゃ。また、わらわの元から消えてしもうたのかと思って」
「…………もう。レインったら」
「わぷっ」
天使は黒雨の魔女を胸に抱き寄せる。
「あなたって、本当に寂しがりやさんね。わたしはどこにも行かないわ。やっと不滅の体になって、あなたと釣り合う力を頂いたんだから。わたしはずっとずっとあなたと一緒。この世界が朽ち果てた後も、ね」
「ライラ…………」
レインはライラを抱き締め、その胸に顔をうずめる。
「どうしたの、甘えん坊さん。まだ眠いなら、一緒に寝る?」
「いや、とうに目は覚めた」
「だったら、二人で『裏側』のお散歩でもする? 表の生徒たちを見て回る? それとも、トレイユの街に行ってみる?」
「どこでもよい。そなたと共にいられるなら、わらわはそれだけで幸せじゃ」
闇の晴れた黒雨の魔女は、雨上がりの大空のように晴れ晴れと笑った。
明日7月30日は、第6巻の発売日です!
書籍版オリジナルキャラ・テテルと一緒に、
フェリスたちがナヴィラ族の村へ向かいます。
どうぞよろしくお願いいたします!
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