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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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天使

 華々しい光が門から広がり、空を満たしていく。


 清浄な風が辺りの瘴気を吹き飛ばし、真っ白な羽が舞い散る。


「な、なんだ……あの門は! 私はまだ開いていないぞ!!」


 術師は愕然として空を仰いだ。


 圧倒的な光輝に包まれて、門の向こうから少女が現れた。


 白い衣、きらめく髪、純白の大きな翼。


 聖職者の錫杖のような装飾の施された大槍を握り締め、大空に屹立している。


 見上げているだけで畏怖に駆られるような、神々しい姿だが。


「やっと! やっと還ってきたわ! 久しぶり世界! ただいま世界! わたしの愛したレインの世界!!」


 少女――ライラは、なんの飾り気もない歓喜の声を響かせた。


「あ、あれ……天使、よね……?」


「う、美しいですわ……」


 アリシアとジャネットは目を見張って震えている。


 召喚獣と同じく、お伽噺の中にしか登場しない異界の存在。ただし、召喚獣と違って天使の伝説に特徴的なのは、なぜかそれらが少女ばかりだということ、そして神々の意志に従って動いているということだ。


「ライラさん!」


 フェリスが呼ばわると、ライラは顔を輝かせる。


「じょ――ううん、ご主人様! ピンチ? ピンチなのかしら? わたしが手伝った方がいいかしら?」


「お願いします!」


「りょーかい!」


 ライラは槍を真下に構えるや、大きく翼を羽ばたかせ、急降下した。


 衝撃波が発生するほどの速度。フェリスたちを襲おうとしていた触手の群体に墜落し、槍を叩きつける。


 ドオンと、大地を踊らす激震と共に、触手の群体が砕け散り、吹き飛んだ。


 魔法生物イジラクドラは絶叫を響かせて後じさる。


 天使ライラはフェリスのそばに飛び降りてひざまずく。


「ありがとう、ご主人様! 回廊の途中でちょっと迷っちゃったけど、なんとかたどり着けたわ! ここに戻ってこられたのは、ぜんぶぜんぶご主人様のおかげよ!」


「ご主人様……? この子、フェリスの召使いですの!?」


「召使いじゃないですっ、ライラさんです! ほらっ、黒雨の魔女さんが大好きだった人ですっ!」


 フェリスは慌てて言った。


 ――天使が召し使い……? それって……。


 アリシアは胸騒ぎがする。ずっと分からなかったフェリスの正体、その片鱗が覗いているような気がしたのだ。深く考えたらすべて崩れ落ちてしまうような、今の生活が否定されるような、激しい不安感。


 ガデル族や召喚獣たちからフェリスは真実の女王と呼ばれている。探求者たちは女王への扉を開くことを切望している。その女王とは、もしかしたら……。アリシアは考える。思考が呼吸を荒げていく。


「さーて、わたしのレインはどこ!? ひっぱたいて正気に戻してあげないとね!」


 ライラは勢いよく立ち上がり、戦場をぐるりと見回した。

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