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十歳の最強魔導師  作者: 天乃聖樹


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待ち人

 深い、深い、永劫の闇の中、光を帯びた少女がいる。


 一見、その光は弱々しく見えるが、決して揺らがず、確かな熱を秘めて燃え盛っている。


 少女は闇に包まれてもうずくまることなく、静かにたたずんで、フェリスのことを真っ直ぐに見据えていた。


 物柔らかだが、芯の強そうな顔立ち。


 かつて黒雨の魔女の幻で亡びたはずの村娘が、災厄の魔女の愛した少女が、往年と変わらぬ服をまとっている。


「待っていたわ、女王様。あなたが来てくれるのを」


 少女――ライラは、穏やかに告げた。


「わたしのこと、知っているんですか?」


 フェリスは尋ねる。


「知っているわ。わたしは『向こう側』への渦に呑み込まれないようずっと精錬界の辺境に隠れているけど、たまにこの辺境に迷い込んだり、探索して入ってくるひとがいるの。『探求者たち』の術師が死んでここに来たこともあって、その人から聞いたのよ」


「探求者たち……! 今、その術師さんはどこにいるんですか!?」


 ついさっきまで戦っていた勢力の話に、フェリスは思わず身構える。


「百年ぐらい精錬界を探索してたみたいだったけど、ここからは真理への扉を開けないと分かったらしく、来世に賭けて『向こう側』に行ったわ。どのくらい転生に時間がかかるのか知らないけど、もし転生していたら根性で前世の記憶を保ってまた探求者になっているんじゃないかしら」


「そうなんですね……」


 安堵の息をつくフェリス。精錬界でまで探求者たちと鉢合わせになりたくはない。


 ライラが微笑んだ。


「ありがとう、女王様」


「え?」


「わたしはここから現世のすべてが見えるわけじゃないけど、あの子――レインが闇に堕ちたのは感じていた。わたしはあの子と深く繋がっているから」


「はい……それは、知ってます」


「悲しくて、悲しくて、ずっと現世のレインに呼びかけていたわ。もう暴れないで、自分を傷つけないでって。でも、わたしの声もレインには届かなかった。闇が深すぎたのね。だけど最近、あの子の闇が消えたのを感じたの。あれって……女王様が救ってくれたのよね」


「救ったわけじゃ、ないですけど……アクセサリー、返しただけです。レインさんとライラさんの、お揃いのペンダントを」


「なるほどね。あの子……そんなことで暴れてたのね。ホント……バカなんだから」


 バカ、とつぶやくライラの声には、甘い響きが滲んでいる。


「ライラさんは、どうしてずっとここにいたんですか。一人で、長い長いあいだ……」


「探求者たちの術師の魂に、聞いたから。もしわたしが万に一つでも、記憶を保ったままレインのところに戻れる可能性があるとしたら……それは女王様に会うことだけだって」


「だから二千年も……真っ暗闇で待っていたんですか……?」


 フェリスは目を見張った。


「ええ。レインのためなら、何万年だって、何億年だって、待つつもりだったわ。わたしを喪って狂ったレインを、絶対に助けなきゃいけないって思ったから。二千年なんて、予想より早かったわね」


 ライラは朗らかに笑う。


 二千年の闇に浸されても今なお消えない光。それこそが、黒雨の魔女を惹きつけ虜にしたものなのだろう。


「そして女王様、あなたは来てくれた。さあ、わたしはレインのために、なにをしたらいいのかしら?」


 二千年の愛を込めて、ライラはささやいた。

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