ねこもーど
邪悪な術師の魔力を追って壁の中を駆け回るフェリスたちだが、術師はなかなか尻尾を掴ませず、目まぐるしく居場所を変えていく。
慣れないサイズの体を操っているということもあり、フェリスたちはすぐにバテてしまった。
ホコリだらけの屋根裏部屋で、フェリス、アリシア、ジャネットの三匹は腹ばいになって伸びる。
普段から猫の姿で行動していることが多いレインは、呆れたように三匹を見やった。
「やれやれ、情けない連中じゃのう。年か?」
「最年長者に言われたくありませんわ……そもそもあなた何歳ですの……」
「乙女の年を尋ねるのは失礼じゃ。わらわに消されたいか?」
「なんさいなんですか?」
「二千十四歳じゃ」
「フェリスに聞かれたらあっさり答えるのね」
「理不尽ですわ……」
しかしながらジャネットもフェリスに聞かれたらラインツリッヒ家の機密でもなんでも話してしまいそうなのでおあいこである。
「このままじゃ、いくら追いかけても埒があかないわ。なんとか作戦を考えないと」
「えとえとっ、メギドプリンでおびき寄せるのはどうでしょうか!?」
「それはフェリスが食べたいだけよね」
「えへへ……」
「お腹空いたのね」
「おなかすきました!」
切迫した状況に似合わぬゆるい空気に、周りも気が抜けてしまう。
が、今こそラインツリッヒのリーダーシップを発揮せねばとジャネットは奮起する。
「そんなこと言っている場合じゃありませんわ! 敵が逃げるのなら、逃げ道を塞げばいいんですわ! まずは壁の中に煙をたくさん流し込んであぶり出しましょう!」
「私たちもあぶり出されそうね」
「ぐぬぬ……だったら、どうしたらいいんですの!? あなたも意見を言いなさい!」
ジャネットが憤慨して尻尾を振り回していると。
「にゃー!!」
「きゃー!?」
ジャネットの尻尾に、フェリスが全力で飛びついた。
「ちょ、ちょっと、なにするんですの!?」
「あっ、すみません……目の前で動いてると、つい捕まえたくなって……」
「狩猟本能!? 心まで猫になってはダメですわー!」
心配するジャネットの前で、アリシアがちょいちょいと尻尾を動かす。
「にゃおーん!」
我慢できずアリシアの尻尾に飛びつくジャネット。
「人のことは言えないわね」
「う、うううううるさいですわ!」
「放っておくと、身も心も猫になってしまいそうで怖いわね」
「だったら誘惑しないでくださいましー!」
右に左に尻尾を振られ、ジャネットは釣られて駆け回る。
と、そのとき。
屋根裏部屋の端を、ネズミが走って行くのがフェリスの視界に映った。
「ネズミさん……おいしそうです……」
「そこまで猫になってしまったら本当にいけませんわー!」
「いや、魔力からして、あれが目指すべき敵じゃ! やるぞ!」
「にゃー!!」
フェリスたちはネズミを追って駆け出した。




