雨の温度
アニメの背景美術のウタタネ先生が、応援のファンアートを描いてくださいました!
幻想的です!
https://twitter.com/UtataneLolicoco/status/1081644044705357824
突如として外から響いた悲鳴に驚き、フェリスたちは食堂を飛び出す。
悲鳴と破壊音をたどって走ると、教室から瘴気が溢れているのが見えた。
教室の中は瘴気に満たされて闇色に淀み、その中で数人の生徒がもがいている。否、瘴気の最奥に引きずり込まれそうになって足掻いている。
「たいへんです!」
「フェリス!? 近づいちゃ危ないですわ!」
「だいじょぶです! わたし、瘴気とか平気ですからっ!」
フェリスは無我夢中で教室に飛び込み、生徒たちを助けようとする。
だが、その瞬間、生徒たちの姿が消えた。
「え……あれっ……?」
戸惑うフェリスの周囲で瘴気も消え、代わって黄金の鳥籠が、轟音を響かせて天井から墜落してくる。
あまりにも突然の襲撃に、フェリスは魔導で対抗する暇もない。
そのとき。
「…………ッ!!」
フェリスのかたわらに黒い影が舞い降り、体内から漆黒のカマイタチ――瘴気の顕現せし狂気の刃――を噴き出させて鳥籠を両断した。
砕け散って黄金の霧と消える鳥籠。
「魔女め、余計なことを!」
しわがれた罵声が天井から聞こえ、悪辣な気配が去る。
そして、フェリスを腕に抱くようにして立っているのは……レイン、黒雨の魔女だった。
「ふえ!? レインさん!?」
目を丸くするフェリス。
「フェリスを……助けてくれたのよね……?」
「いかにも。まったく、今のこやつはバカなのだから、そなたらがしっかり見張っておかぬか。探求者たちの罠にみすみすはまるような真似をさせおって……」
「ごめんなさい……」
「どうしてわたくしたち、黒雨の魔女に説教されているのですかしら……」
相手はかつて人類を絶望のどん底に叩き落とした大厄災である。
「レインさん、どこにいたんですか!? どうしていなくなってたんですか!?」
「教師共に疑われた状態で、あの場に留まっておっても埒があかなかったのでな。わらわに攻撃する人間は殺さねばならんが、フェリスの学校の人間を殺すわけにもいかんし……」
「優しいのか残酷なのか分かりませんわ」
「一応……優しいんじゃないかしら……」
「レインさんは、やさしーですっ!」
フェリスはぎゅーっと黒雨の魔女にしがみつく。そんなフェリスを黒雨の魔女は振り払おうとはしない。
「今回のことは、わらわの責任でもある。探求者たちがフェリスを狙っていることは分かっておったのに、襲撃を防げなかったのじゃからな」
「もしかして、レインさんって……フェリスを守るため、魔法学校に来ていたのかしら?」
アリシアが尋ねると、黒雨の魔女はぷいと顔を背ける。
「フェリスには世話になったからのう。借りは返さねばならぬ、それだけじゃ」
「……ジャネット、仲間ができたわね」
「どうしてわたくしの仲間なんですの!?」
憤慨するジャネットである。素直になれない仲間だという自覚はない。
「そなたらと別れてから、わらわは校内を行き巡って探求者たちの目的を調べておった。無闇に殺すわけでもなく、破壊するわけでもなく、どうも不審な点が多かったゆえな。そして……見つけたのじゃ、連中の真意を」
「な、なんですか……?」
フェリスは手の平を握り締めた。




