サバイバル
是非ともついて来たいと主張するロゼッタ姫にはなんとか安全な講堂に留まってもらって、フェリス、アリシア、ジャネットの三人は魔境へと出発した。
魔境といっても、普段生活している学校なわけではあるが、その事実に確信が持てないぐらい、廊下はドロドロのぐちょぐちょだった。
グロテスクな魔物たちが徘徊し、瘴気に侵された壁が半ば溶けたようになって、眼玉のような模様が渦巻いている。
アリシアは火魔術で魔物を焼き払いながら思案する。
「うちのクラスのお化け屋敷よりクオリティが高いわ……」
「感心してる場合じゃありませんわ! 相手はホントの化け物ですのよ!」
ジャネットは左手でアリシアの袖を掴み、右手でマイステッキを握り締めて、攻撃用の風魔術を放っている……しかし。
「ジャネット……目をつぶっていたら攻撃は当たらないと思うわ」
「ししし仕方ないでしょう!? これでもこのわたくし、ジャネット・ラインツリッヒは、お化け屋敷で目を開けたことは一度もありませんの!」
「誇らしげに言うことかしら……でもいるわね、そういう人」
アリシアは呆れる。
「ふぁぁぁ……次から次へと出てきますぅ……」
フェリスは光魔術で魔物を倒していくが、さすがに疲れは否めない。
そんなフェリスの頭の中で、レヴィヤタンの声が響く。
『女王様……もはやこれは学校ごと浄化した方が早いかと。消し飛ばしましょう』
「消し飛ばしたらダメですよ!!」
いきなり叫ぶフェリスに、ぎょっとするジャネット。
「えっえっ、ダメですの!? どうしてなんですの!? なにがどーなってますのーっ!?」
「ジャネット、諦めて目を開けなさい」
ジャネットのまぶたを無理やり開けようとするアリシア、まぶたの力で抵抗するジャネット……カオスである。
そんなこんなで保健室から解呪薬を回収し、続いて食糧を手に入れるため、食堂の倉庫に急行する。
初めて食料庫に入ったフェリスは、中の光景に目を見張った。
「ふわあああああ……メギドプリンがいっぱいですうううう……!」
大きな木箱にぎっしりと詰まったメギドプリン。
きらきらと黄金に輝き、かぐわしい香りで少女たちを誘っている。
ヴァルプルギスの夜に備え、魔法学校が特別に大量発注しておいたのだ。
結構かさばるデザートなので、木箱一つでも運ぶのは大変なのだけれど。
「こ、これっ、持っていかないとダメですよねっ! みんなメギドプリン食べたいですよねっ! 元気出ますよねっ!」
「フェリスが食べたいだけよね?」
「え、えとっ、それもありますけどっ……あぅぅ……」
お腹をくーくー鳴らすフェリス。素直である。
そのとき。
近くの教室から、爆発音と悲鳴が響き渡った。




