避難所
フェリスたちがクラスメイトを守りながら講堂にたどり着くと、そこには既に大勢の生徒が集まっていた。
講堂内を見て回っていた校長が、フェリスに気づいてやって来る。
「おお、ミドルクラスAも無事に来たようじゃな。ロッテ先生が捜しに行ったきり帰ってこないから様子が掴めんかったが、よかったよかった」
「ロッテ先生、いないんですか!? だいじょぶでしょうか……」
フェリスは心配する。
「なぁに、あの子なら心配は要らぬよ。おおかた、どこかで昼寝でもしとるんじゃろ」
のほほんとした校長先生。
「この状況でお昼寝なんてできたらびっくりしますわ……」
ジャネットが呆れる。そんなことができるのは、歴戦錬磨のウィルト卿――校長先生ぐらいのものだ。
今も講堂には次々と生徒が避難してきていて、それを入れるときだけ先生たちが結界に穴を開け、くぐり終えると再び閉じている。
恐怖に青ざめながらも生徒の多くは五体満足だったが、中には負傷している者もいて、呪術医や生活魔術の先生などが治療に追われていた。
フェリスと話している校長先生のところへ、他の先生が駆け寄ってくる。
「校長先生! 解呪薬のストックが切れてしまったのですが、どこかに備蓄はありませんか!?」
校長先生は首を振る。
「ワシも方々に聞いて回ったんじゃが、ないようじゃの」
「そうですか……早急に手当てが必要な生徒がかなりいるのですが……」
「困ったのう……水や食料も足りぬようになってきたし、ここは一度、講堂の外に部隊を派遣して必要物資を回収してきてもらった方がよいじゃろ。ワシは結界の維持があるから離れられんし、お主らでやれるかの?」
「それが……私たちも治療や防衛で手が一杯でして……とても外に出る余裕が……」
すまなそうに語る先生は消耗しきっており、自分も怪我をしているのに手当てを受ける暇もないらしい。
フェリスが手を挙げる。
「は、はいっ! じゃあわたしがやりますっ! ごはんとおくすり取って来ますっ!」
「よいのか? 危険じゃぞ?」
「だいじょぶです! わたし、狭いところに隠れるの得意ですから!」
「……ハムスター?」
アリシアが小首を傾げる。
「それじゃ、わたくしについて来なさい! フェリス!」
「はい! ジャネットさんについて行きますーっ! たのもしーですーっ!」
「そそそそそそうですわ! わたくしは頼もしいのですわ!!」
などと胸を張って先陣を切るジャネットの膝はがくがくである。
ぶっちゃけもう二度と講堂から出たくない、安全な結界の中に閉じ籠もっていたいレベルだが、フェリスを一人でいかせるわけにはいかないし、怯えているところを見せるわけにもいかない。
そんなジャネットを、フェリスは、
――ジャネットさんのそばにいれば安心です! かっこいーです!!
と、きらきらした瞳で見上げていた。




