魔女の復讐
ロッテ先生が教壇に立ち、生徒たちの顔を眺め回す。
「それじゃー、今日はヴァルプルギスの夜の出し物を決めまーす! ミドルクラスAでなにをやるか、みんなしっかり考えてきたかなー?」
はーい! と元気に手を挙げる生徒たち。
「うぅぅぅ……なんにしましょう……」
フェリスはまだ悩んでいた。フロストキャンディーやさんとか、アクセサリーやさんとか、おひるねやさんとか、やってみたいことが多すぎて、一つに決められないでいるのだ。
「やっぱり食べ物系がいろいろな人に喜んでもらえると思うわ。私は創作料理のお店をやりたいのだけれど、どうかしら?」
「却下!! ですわ!!!!」
アリシアの意見に、ジャネットが全力で反対した。
「あら、どうして? 確かに食べ物のお店は多いだろうけど、だからこその創作料理なの。今までにない料理のアイディアを考えているから、それをお客さんに無理やり食べさせることで未知の体験を……」
「だからこそタチが悪いのですわっ! まだ普通にワッフルでも焼いていた方が安全ですわ!」
そもそも無理やり食べさせると述べている時点で不穏だった。アリシアの壮絶な料理(料理……???)でヴァルプルギスの夜に惨劇を引き起こしてしまってはいけない、断じて、とジャネットは心を引き締める。
ロッテ先生が笑って頬に人差し指を添える。
「ちなみに、今年は意外とお化け屋敷が優勢のクラスは少ないみたいだよ~? みんな工夫を凝らそうとしすぎて、逆に普通のは減ってるみたい。もしかしたらそういうのも狙い目かもねっ!」
「お、お化け屋敷だけはダメですわっ!! ひ、人様を怖がらせて楽しむなんて、そそそそそんなの悪趣味ですわっ!!」
ジャネットは震え上がった。
「大丈夫、お化け屋敷に来る人は怖がらせてもらって楽しむんだし!」
「そ、それでも! ね、フェリスもお化け屋敷は嫌ですわよね!?」
助けを求められ、フェリスはこくこくとうなずく。
「は、はい……びっくりしちゃうのは、ちょと……」
ためらいがちに小声で答えるが、そのとき。
『わたし、お化け屋敷がいいですっ!!』
フェリスの声が、大きく教室に響き渡った。
「フェリス!? わたくしを裏切りますの!?」
涙目になるジャネット。
「ふえ!? わ、わたしじゃないですけど……」
フェリスは慌てて周りを見回す。
すると再度。
『お化け屋敷とか、すっっごく楽しそーですーっ!! わたし、にゃーさんの格好でお客さんをびっくりさせたいです! にゃーにゃーっ!』
フェリスの声が響く。
生徒たちはそれを聞いて顔を見合わせる。
「フェリスちゃんがしたいなら……ねえ?」「だねー。フェリスちゃんの希望だし!」「猫の衣装着たフェリスちゃんとか、絶対かわいいよ!」「これはもう決まりだねっ!」
あっという間に、教室の空気が作られてしまう。本人が訂正する隙もない。
「な、なんでえ……誰なんですかあ……」
フェリスが必死になって声の主を捜すと、見つかった。
机の引き出しの中に、黒雨の魔女が化けた猫が潜んでいるのが。
「ふふん、わらわにとって声真似ぐらい容易いものじゃ。わらわを好き放題に弄んだ(撫でた)お返しじゃ」
おひげをピンと跳ねさせて得意気な黒猫。恐るべき復讐である。
「魔女さあん……」
「なに、案ずるな。この厄災の魔女たるわらわが、持てる力の限りを尽くして恐怖の煽り方を叩き込んでやろうぞ。呪術の道具も用意してやる。お化け屋敷に入り込んだ愚かな生徒共が逃げ惑う姿が目に浮かぶのう、くくく」
「黒雨の魔女はあいかわらずね……」
アリシアは肩をすくめた。




