漆黒のツンデレと紅蓮のツンデレ
「きゃーーーーーー!? 出ましたわーーーーーー!? フェ、フェフェフェフェフェフェリスだけは絶対に守り抜きますわよーーーーっ!!」
ジャネットはフェリスの前に立ち塞がって果敢に両腕を広げ、かつ恐怖に縮こまってうずくまる。
「めちゃくちゃね……」
「そなたは勇敢なのか臆病なのかはっきりせい」
アリシアと黒雨の魔女が呆れた。
一方、震え上がるどころか大喜びするのがフェリスである。
「黒雨の魔女さん! 会いに来てくれたんですね! 遊びに来てくれたんですねーっ!」
「ふん、そんなわけがあるか。そなたらがくだらぬ祭りをしようとしているから、ちと冷やかしに来ただけじゃ」
「おまつり……?」
「ヴァルプルギスの夜のことかしら」
「あれは古の魔女たちの大祭。かつては月の満ち欠けすらも操った偉大なる儀式の日であったのに、成れの果てが学校のお遊戯会とは情けない。せいぜいバカにしてやろうとな」
「ふええ……バカでごめんなさい……」
なぜか謝るフェリス。
「大丈夫、フェリスはおばかさんじゃないわ」
アリシアはフェリスの頭をよしよしする。
ジャネットがびしっと黒雨の魔女を指差した。
「ダウトですわーーーー!!」
「ダウト……? なんのことじゃ」
「冷やかしとか言ってますけれど、違いますわ! ええ、全然違いますわ! これまでのあなたの行動、すべて合点がいきましたの! フェリスのペンを盗んだのは、倒れてくる本棚から守るため! 食べ残しのパンを盗んだのは、フェリスの体を守るため! 傘を置いていたのは、雨でフェリスが濡れないようにするため! つまりあなたは、フェリスとお近づきになりたくて、でも今さら恥ずかしいから話しかけられなくて、こっそり助けていただけなのですわー!!」
「なっ……!!!!」
赤面する黒雨の魔女。
アリシアが感心する。
「さすがジャネット、仲間の気持ちは分かるのね」
「仲間ってなんですの!? 黒雨の魔女は敵ですわ!」
「同類って言った方がいいかしら」
「同類でもございませんわ!」
ジャネットは地団駄を踏む。
フェリスは黒雨の魔女に飛びついた。
「うれしーですっ!! やっとお友達になってくれるんですね!!」
「お、おともだちになど……なるものか! ただ、その……しばらくそなたに付き合ってもいいかと思ったのじゃ。時間だけはいくらでもあるからな!」
「付き合う!? やっぱり黒雨の魔女は敵ですわ!」
「ええい、やかましい! そっちの赤髪はさっきからなんなのじゃ!」
「気にしないで、悪い子じゃないから」
アリシアは微笑みながら、がるるるるっと威嚇するジャネットを取り押さえる。
「黒雨の魔女さんは、今どこに泊まってるんですか?」
「うむ……そうじゃな。墓場とか……墓場とか……墓場とかじゃな」
「ふえ……寒くないんですか?」
「霊体と肉体の中間みたいな存在じゃからな、どうとでもなる」
「でもでもっ、寂しいです! 女子寮に泊まってください!」
「大騒ぎになりますわ!」
「にゃーさんの格好ならだいじょぶですよぅ! アリシアさんとわたしのお部屋に来てほしいですっ! お願いしますっ!」
ぺこりと頭を下げるフェリス。
黒雨の魔女はぷいっと顔をそらす。
「む……ま、まあ、いいじゃろう。しばらく猫の姿でそなたの部屋に泊まってやろう!」
そういうことになった。




