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50話 困惑のギルド長

 -------(ギルド長 視点)-------



 俺の名はゴルダ。


 ムゥナと言う街の冒険者ギルドのギルド長になって10年が立つ。

 10年前までは俺もAランクの冒険者としてそこそこ名を馳せていた。


 10年前に起こったモンスターの氾濫によって俺は冒険者を引退したのだった。


 あの氾濫は街に大打撃をもたらした。街に住んでいた者達も冒険者も、大勢の人が帰らぬ人となった。

 その中に当時のギルド長がいた。


 あの人は最後の最後までみんなを守るために戦って、そして散った。


 王都からの応援がもう少し遅かったら、俺たちはひとりも生き残らなかっただろう。

 そして俺はあの時からギルド長の後を継いでギルドを束ねている。


 街はこの10年、あちこちからの移民を受け入れ、ようやく以前の賑わいを見せ始めていた。



 そんなある日のこと、王都からの早馬が到着した。

 神殿に呼び出されて行ってみると、そこには王都からの使者、神殿の神殿長や隣あわせで立っている教会の司祭らが集まっていた。



「すると王都の神殿においても同じ神託がなされたのですね」



 神殿長が深刻な顔で使者に問いかけていた。


 皆の話を集約すると、数日前に国中の神殿や教会の関係者に同じ内容の神託が降りたらしい。

 その内容は7日の後に稀人が落ちてくるので保護をして民として受け入れよ、との事らしい。



「稀人さまがどこに降りていらっしゃるのかは、前夜にその真上の空から導きの光があるそうです」


「という事は落ちる前夜までどこに落ちてくるか不明って事か」


「この街かどうかもわからないということですか?」


「ええ。ですから全ての大きな街へ国から早馬が走らされました」


「ここはそんなに大きな街ではありませんが…」


「まあ、死霊の森も近いしな、万が一に備えて…か」



「では、万が一この街の近くに稀人さまが降りられましたら、神殿で受け入れますのでその準備をすすめておきます」


「俺は何で呼ばれたんだ?」


「ギルドで鑑定のスキル持ちの方に稀人さまの鑑定をお願いしたいのです」


「神託によると稀人さまは普通の人であり、また稀なる力を持つ方もいらっしゃるとの事でした」


「もし、何らかの能力を保有している方がいらした場合、落ち着いたのち、いずれは王都へとの考えでしょう」


「ふむ、それ以外ならば普通の民と同様に扱ってよしという事だな、わかった。とりあえず鑑定スキル持ちを準備しておこう」



 ギルドに戻ると職員たちには大まかな話をしておいた。

 鑑定スキル持ち1名を神殿に向かわせる事にした。





 しかし、驚いた。

 まさか稀人が101人も落ちてくるとは。慌てて鑑定が出来る者をもう一名神殿に向かわせた。



 鑑定した結果、特殊な職業持ちは100人中たったの4 人だった。

 しかもその4名も職業に「剣士」や「騎士」とあるものの、スキルの表示はなかったようだ。

 王都の使者は残念そうな顔で引き上げていった。



 しかし困った。

 街にいきなり101人の民が増える事となったが、生活の場がない。


 とりあえず神殿長と司祭との話し合いで、21名を教会、20名を神殿で、残りの60名を開拓村で引き受ける事に決まった。

 最近近くに作り始めたばかりの開拓村があって助かった。


 しかし当の稀人たちは話し合いで揉め、結局80名が開拓村行きを望み、残り21名は神殿預かりとなった。


 教会の司祭はホッとしたようだった。

 教会は街やスラムの孤児の面倒を見ているので、いきなり21名の生活の保護というのはかなりの負担になるからだ。


 まあ、開拓村は家も畑もこれから自分達で切り開いていくのだから、60名が80名になったところで何の支障もない。

 本人達が望んで行くのだからな。



「大丈夫でしょうか?」



 鑑定のエスパードが心配顔で俺に聞いてきた。

 大丈夫とはどういう意味だ?



「何か問題でもあるのか?」


「ギルド長は彼らに会いましたか?」


「いや、俺はあれから神殿には行っていないからな。問題を起こしそうなやつでもいたか?」


「開拓村に向かった80名、いえ、神殿に残った者たちもですが、稀人というのは皆あんな感じなのでしょうか」


「あんな感じとは?」


「あ、いえ、すみません。勝手な…感想なんです」


「言ってみろ」


「あの、何ていうか稀人の方々を見ていて思ったんですが、親の金で遊んで暮らしている貴族の三男坊みたいだって」


「全員がか?」


「まぁ、ほとんど……が。空腹を訴えたり風呂を要求したり、ベッドや個室を当たり前のように欲しがるし、手指も働いたことがないように綺麗で、とても開拓村でやっていけるとは……」


「なるほど。この先何かを起こすかもしれないな、心に留めておこう」


「すみません」



 エスパードは俺に話したことで少しだけホッとしたようだった。



「いや、ありがとう」



 しばらくは稀人の動向に気をつけておいた方がよいだろう。



 ふと、ひとりの冒険者の顔が浮かんだ。


 101名の稀人を受け入れた日の午後、ギルドを訪れたアイツ。稀人達と同じ黒い髪、黒い目。どう見ても稀人だろう。

 だが、アイツはエスパードが言ってた稀人とは少し違って思えた。



 俺が食事交代からちょうど戻った時、手前に開けるギルドの扉を一生懸命押していた。

 最初はちょっと頭の弱い者なのかと思った。


 だが、無愛想で強面の俺を大して怖がるでもなく変わったヤツだとも思った。

 冒険者登録をしたいが金を持っていないと言い、途中で狩った物を買い取って欲しいというので、買取カウンターへまわした。


 驚いたのはヤツがマジックバッグを持っていた事だな。


 冒険者にとってマジックバッグは高嶺の花。ランクB以上で稼げるようになって初めて買うことができる。

 それでも手に入るのは容量がそんなに大きくないバッグである。


 しかしヤツはその中からイノシシを10頭、ウサギ7羽にさらに鳥を3羽出して見せた。

 かなりの容量のバッグだぞ。


 稀人だからだろうか?稀人はみなマジックバックを持っているのだろうか?その辺も少し誰かに探らせよう。


 やはり明日にでも再度神殿に行って神殿長と話す必要があるな。

 職業持ちの4人が開拓村とこの街のどちらへ行くのか。



 しばらくは稀人たちの行動に目を光らせておこうと思う。

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