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SS⑦ 冒険者ギルドで初めての討伐訓練(子供専用)

 マルクは10歳になる年にギルドで冒険者登録をした。同じ家に住む陽葵も一緒だ。


 冒険者登録をすると最初はランクEからのスタートだ。ランクEは街の中での依頼だ。掃除や片付け、荷運びなど、子供でもぎりぎり出来る仕事を二束三文だが受ける事ができる。と言うか、依頼料が安すぎて大人の冒険者には人気がない依頼だ。


 しかし冒険者としてランクを上げていくには誰もが通らなければならない道である。

 街中での仕事を幾つかこなしてランクがDへと上がると、漸く街の外での依頼が受けれるようになる。街の近場の草原での採取や獣の狩りなどだ。


 ランクEの冒険者は街の外の狩りを禁止されているわけではないが、ギルドは推奨をしていない。個人の責任においてはどこで何を狩ろうが自由だ。しかしギルドの掲示板にはランクE冒険者の依頼は街中の仕事しか貼り出していない。


 成りたて冒険者がそのまま外に出ると、魔物どころか獣による死傷がダントツに増えるからだ。


 そこでギルドは考えた。若い冒険者を鍛えようと。


 数年前まではそこまで手が回らなかった。ムゥナの街は小さな街の割に、近くに死霊の森がある事で高ランクの冒険者がやってくる事が間々あった。それにより王都から離れているにも関わらず街の人は増えていった。


 とは言え流れてくるのは冒険者崩れも多く、宿屋、食堂は多くても『定住する街』と考える者は少なく、スラムが膨らむ一方だった。

 だが、街の近くに開拓村を建て始めた時、稀人が大量に現れた。


 稀人は街に色々なモノもたらした。そのひとつが死霊の森ダンジョンだ。


 もとはただの森だった。アンデッドが湧きやすい事から『死霊の森』と呼ばれていた。そこに102人稀人が落ちてきた。稀人は建物ごと森に落ちてきたのだが、その建物がしばらくするとダンジョンになったのだ。


『死霊の森ダンジョン』 そう呼ばれるようになった。


 死霊の森ダンジョンは地上19階、地下22階の塔型ダンジョンだ。地上1階はただの通路になっており、魔物はいない。2階はスライムだ。スライムは街でも有用されており小金稼ぎに人気のフロアだ。


 3階にあたるフロアにはゴブリンしか出ない。ゴブリンは街の外の草原でも森でもどこにでも出る。外のゴブリンは、ともすると集落を作って増えていたりする。その割に退治しても使える部分はなく人気はないのだが、見かけたら殲滅しておかないと旅人や小さい村が襲われるのだ。


 ダンジョンのゴブリンも不人気で冒険者は3階を素通りする。何しろ、街の外のゴブリンは一応討伐したら証として耳を持っていけば小銭程度だが貰えるが、ダンジョンのゴブリンは倒すと消えてしまい耳さえも残らない。全く金にならないのだ。


 しかし、稀人達が子供の訓練で3階を使っている事を聞いたギルドも、若い冒険者を育てるために動き出した。


 ゴブリンは倒しても何も落とさないが、コンスタントに湧くので訓練にはもってこいだ。

 ギルドはもうすぐランクDに上がる冒険者向けに、3階での訓練の実施を始めた。


 無料で5回まで、合格したらランクDになれる。5回で卒業出来なかった者も、有料にはなるがさらに訓練を受ける事が出来る。(因みに銅貨1枚だ)




-------------(ここからカオ視点話になります)------------



「ランクDの試験? そんなんあったか?」



 俺がギルドに冒険者登録をしたのはかれこれ8年以上前か。あの頃は試験なんて無かったよな?最近出来たのか?



「試験じゃないよ、お父さん」



 マルクが俺に何かの紙を見せてくる。



「ふむ?……ゴブリン討伐訓練、ダンジョン3階にて? ああ、あそこでギルドが訓練を開いてるのか」


「うん。5回受けられるの! 行ってもいいでしょ? これに合格したらランクDになれるんだよ!」


「おお、それは凄いな。うん、頑張りなさい。ひとりで受けるのか?」


「ううん、ひまちゃんも一緒。あとね教会の子もふたりいるよ?」


「そかそか。うん」


 

 あれだな。陽葵ちゃんも受けるなら、これはパラさんと相談せねば。俺は慌ててパラさんに連絡をした。


 俺とパラさんはギルドへと急いだ。もちろんマルク達と同じ訓練に参加申し込みをする為だ。募集メンバーが満員になる前に申し込まねば。



「無理だ」



 眉間に皺を寄せたゴルダに瞬殺で断られた。



「え? もう満員なのか? 俺とパラさんのふたりくらい追加してもいいだろ?」


「ダメだ」


「そこを何とか。頼む」



 俺とパラさんは両手を顔の前で合わせてゴルダを拝むように頭を下げた。



「ダメなもんはダメだ」


「何でぇ? 歳か? 俺らが爺いだから若いもんに混じるのがダメなんか?」


「歳じゃない、Sランクだろが!」



 ゴルダがパラさんの方を見て吐き出した。



「あ、俺、Sじゃないから大丈夫だ」


「ダイジョーブじゃねぇ! お前もAだろが! ゴブリン討伐訓練はEを集めた訓練だ。高ランクは邪魔だ」


 

 しまった!そう言う事か。ギルドの依頼は「ランク◯以上推奨」となっている事が多いので、てっきり今回も「E以上はOK」と思い込んでいた。



「「そっか、ランクEオンリーなのか…」」



 パラさんとハモった俺達にゴルダが被せてきた。



「それ以前に、『子供用』だ!」



 ゴルダに怒られてギルドを後にした。


 仕方ない、第二作戦に移行だぜ。そう、第一作戦「一緒に行く」がダメだった場合の第二作戦だ。


 第二作戦は訓練当日の朝に決行する。第二作戦は「武器装備万端」作戦だ。パラさんも俺も、持てる限り武器装備を子供に装備させた。もちろんアクセサリーもだ。


 リビングでマルクと陽葵に重装備をさせている横を通りかかった店の警備のバズッドさんが大きなため息をついた。



「あのぉ、今日マルク達はランクEの討伐訓練ですよね? あれは全員同じ装備が用意されてるみたいですよ?」


「うん。ギルドで着替えるんだってー」



 マルクが追い討ちかけた。

そ、そうなんだ?折角ガッチリ着替えさせたのに。



「リボンとか可愛いヘアピンはいいって言ってたわよね?」



 陽葵ちゃんもパラさんを追い込んでいた。



「ヘアピンヘアピン…リボン……」



 パラさんはブツブツ言いながらアイテムボックスを探っているようだった。あのゲームにヘアピンやリボンは無かった気がする。

 とりあえず服の下にミスリルシャツとミスリルズボンを重ねて履かせた。



「きついよう」

「可愛くなぁい」



 マルクも陽葵ちゃんもブツブツと文句を言っていた。



 最終手段「第三作戦」に移行だ!

 第三作戦、それは、「ダンジョンでこっそり変身するぞ」大作戦だ。


 俺達には変身リングがある。ゴブリン変身するなんて朝飯前だ。(いや、朝飯は既に食ったが)

 スライムフロアでゴブリンに変身して、ゴブリン階までダッシュで走り抜け、そこでマルク達を待つ。


 パラさんは『ナイト』で防御力半端ないが、俺は『ウィザード』だからちょっと不安はある。


「カオるん、大丈夫だ。ウィズとは言えゴブリンなんて屁でもない。マルク達に斬られても直ぐにヒールすれば良いだろ?」



 うん、まぁそうだな。あ、死んだ振りはしないとな。


 そう、俺はうっかり忘れていた。ダンジョンの魔物は死ぬと消えるんだよ。死体が消えない事で直ぐにゴルダにバレてしまった。



「てかさぁ、何でギルド長ともあろうお方が初級冒険者の訓練に来てるんだよ」


「ふん。お前らは絶対来ると思ったからな」



 くそ、バレてた。


 俺とパラさんはギルドのゴルダの執務室で絶賛正座中、&こってり叱られるのだ。床に正座させられるパラさんを見てちょっと笑いが込み上げてしまった。Sランク冒険者の正座。



「……ぷっ、レベル92超のナイトがw」

「この国一のウィザードに言われたかないぞ」


「反省しろ! 親バカども!」


「「はい! すみません!」」




------------------------------


マルク:カオが異世界で養子にした子供

陽葵(ひまり):カオのゲーム仲間であったパラさんの末娘

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