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206話 番外編ーファルビニアの戦い⑧

 司祭が上半身を出しているのが棺だとして、俺達は蓋を探した。


 直ぐにゆうご君が壁に立てかけてある分厚い石板を見つけた。大きさは高さ3メートルくらい、厚さは20センチはありそうだ。



「かなり重そうだが、カオるん、ウエイトライト使えたよな?」


「あ、うん。あるぞ」


「かなり重そうだがイケるんじゃないか?」


「ですが、問題は場所です」



 皆が立てかけられた石板を見る。


 そう、石板つまり棺の蓋は、棺を開けた時にそこに立てかけた。高さというか長さが3メートルくらいの分厚い石の蓋は、司祭の直ぐ横の壁に立てかけてあったのだ。



 この部屋は大理石(なのか?)の床だ。巨大な祭壇、まさに棺を隠すかのように祭壇が置かれている。


 そしてその祭壇の裏側に、大理石とは違う真っ黒にテラ光りしている鉱石で作られたような石畳、いや石の板か、幅1.5、長さ3メートル、厚さは30センチ程が床に置かれていた。


 闇の司祭は、その真っ黒い石板に腰から下を埋め込まれているように見える。(何故そこに嵌った?と聞いてみたい)


 そして、その石板の向こう側の壁に、蓋と思しき真っ黒な厚さ20センチの石板が寄りかかっている。



「あそこで蓋を持ち上げたら確実に司祭に命を吸われますね」


「くっそぅ、詰みか」


「そんな……ここまで来たのに、他に何か手は無いのか」



 皆が司祭を見て悔しそうに唇を噛む。司祭はこちらを小馬鹿にしたようなニヤリ顔だ。

 ちょっとムカついた。



「そんなとこに嵌まり込んでるくせに、上から目線のつもりか! こっちの方が目線は高いぞ!」



 俺が司祭に向かって怒鳴った事で司祭の気に触ったのか、司祭は石板から抜け出そうと身体を捻り始めた。



「カオるん、落ち着け、アイツを怒らすな。どんな攻撃を仕掛けてくるかわからんぞ!」


「いや、報連相の情報だと、アイツは相手に触れてチューチュー吸うんだ。触れなければ吸えまい」



 そこまで言ってふと気がついた。そうだよ、今ならアイツは嵌ってて抜けられない、んだよ。



「タウさん、今ならアイツは動けない。今だからチャンスだ」


「わかってます。けど、蓋があそこにある以上…」


「大丈夫だ。任せて」



 俺はそう言って祭壇の裏へと歩きながら派遣魔法を使う。



「力仕事!」



 派遣魔法の『力仕事』、草原で試した時は水や巨大な岩には通用しなかった。


 だって、持つ所が無かったから。


 俺は壁に立てかけられた黒い石板の端っこまで行った。


 ヤツは3メートルの棺の中央に嵌っている、腕を伸ばしてもここまで届くまい。ヤツの腕が1.5メートル以上あったらヤバいけど、残念。


 俺は黒い石板(蓋)の端っこを両手で掴む。


 派遣魔法のおかげか、軽い。【力仕事】どんな物でも持ち上げられる 持続時間60分、だもんな。厚さ20センチの石板なんかチョロいぜ。



 石板を持ち上げた俺を見た司祭の顔は、引き攣っているように見えた。

 思いっきり石板でぶっ叩きたいところだが、蓋が壊れたら大変だ。

 俺はそんなところにも気が効く良いヤツだぜ。(自分で言うのも何だが)



「おやすみ」



 そう言って、そっと上から石板を下ろしていった。


 司祭は両腕を上げて蓋を回避しようとしていたが、バチバチと何かに弾かれて腕を引いた。

 蓋に押されるように司祭が棺の石板の中へと押しやられていく。



 蓋が土台の棺とピッタリ重なった。


 しかし、まだ、中から押し上げようとガタゴトと振動がする。



「ダメか? これだと封印は出来ないのか?」



 このままだと俺は一生ここで押さえ続けないとならない。そんな一生は嫌だ。可愛いマルたんが待ってるんだ!



「タウさん、助けて」



 タウさんを涙目で見ると、タウさんは力強く頷いたあと部屋を見回した。



「あそこに、黒い石板があります! カオるん皆にウエイトライトを! 手を離さずに、かけてください!」



 タウさんの声で皆が寄ってきた。



「ウエイトライト、ウエイトライト、ウエイトライトウエイトライト」



 かかった者から床置きされていた石板を取りに走った。



「カオさん、こっちにも」


「ウエイトライト! ウエイトライト、ウエイトライト、頼む」



 あの黒くテラった石板は見た目以上に重かったらしく、パラさん、ミレさん、カンさん、アネさんの4人で何とか運んでいた。

 もうひとつの石板へはゆうご君とタウさんとリンさんが向かった。

 俺はサモンでKBBを召喚した。力ならコイツらだ。



「KBB、あの石板を運んで来い! 慎重にな」



 ドンドンと下から突き上げる振動がする。闇に帰れぇ、帰ってくれ。


 パラさん達が運んできた石板を俺が押さえていた蓋の上に重ねた。



グンっ



 ん?棺が沈んだ?棺は床の上に置いてあったのではないようだった。

そうだよな?棺にしては深さが30センチなんて、普通に考えても浅すぎる。


 どうやら、棺は床から生えて?いや、埋められていたのが30センチほど突き出していたようだ。

 2枚目の蓋をした事で、棺が15センチ沈んだ。


 ゆうご君やKBBが持って来た蓋を乗せた。



ガガ……



 おう、さらに棺が沈み、完全に床と同じ高さになった。



「棺が完全に沈みましたね。カオるん、そっと手を離してそこから降りてみてください」



 俺はゆっくり棺から離れた。


 ………………。

 大丈夫か?司祭は闇に帰ったのか?



 皆もジッと見つめる。



ズズ…ン



 アカン!俺は慌てて床を押さえた。



「ダメなのか?」


「まだ何か必要なのでしょうか」


「KBB! ここ、踏んでいてくれ!」



 KBB三体が蓋の部分の床に並んで立った。



「とりあえず探しましょう! 何でもいい、何か、封印に関係する何かを」


「封印……スイッチとか、ボタン」


「お札……、魔除け」



 俺はミレさんが言った『魔除け』に引っかかった。闇の神殿、魔除け………、神殿、魔除け、神社の魔除けは狛犬。



「ガーゴイル!」



 俺は大きな声を上げてこの部屋の扉を出た。


 そこにはガーゴイルは居なくなったが、台座がふたつ残されていた。



「報連相!」



 魔物ではないのに棺が報連相で鑑定出来た。なら、台座は?



『ガーゴイルの台座。棺の守り役。互いが向き合えば扉は開く』



「カオるん!」

「カオるん」

「カオさん!」



 俺は台座を持ち上げた。うん、持ち上がる。


 それを持って部屋へと入り、棺の蓋の端っこに置いた。

 もう一台の台座はパラさんとミレさんが運んでいる。



「カオるん、台座の正面はあちらに向けてください。パラさん、そっちの台座は向こうに向けてそっちの端に置いてください」



 ガーゴイルが居なくなった台座はどちらが正面か判別出来ないぞ?とりあえずギギギと動かして回した。

 すると突然、台座にガーゴイルの石像が現れた!


 一瞬、全員の動きが止まった……。様子を伺うが、ガーゴイルは石像のまま動き出しはしない。

 ホッとして皆がまた動き始める。



「クソ重いな、これ」



 パラさんとミレさんのふたりが持っていた台座を置くとそっちもガーゴイルの石像が現れた。

 タウさんの指示どおり、向こうを向いた状態で置かれた。



 棺の蓋の両端にガーゴイルの台座がお互いそっぽを向いた状態で置かれた。


 KBBを棺の蓋から一体ずつ下ろす。三体目を下ろしたが、下からは何も聞こえて来ない。


 闇の司祭、やっとお帰りになられたか。



「これ、もとはここにあったのでしょうね。蓋を開ける為に場所をずらした。棺が上がり蓋を下ろす、また棺があがり蓋を下ろす、そこで闇の司祭が上がってきたけれど、完全復活には何かが足りなかったのでしょう」


「これで解決なの?」



 アネさんが不安そうに呟いた。



「そうですねぇ。どんなに封印をして伝える文献を残しても、また数百年後には繰り返す輩が出るのでしょうね」


「そうだな、全く人間ってやつは」


「でもさ、俺達が後世に向けて色々残してやればいいんじゃないか?」



 俺は思う。



「人間は油断すると魔が差すやつが出てくる、それは止められない。

出てくるのが止められないんだから、出た時の対処をたくさん用意しておけばいいんじゃないか?」


「ん? どういう事?」


「うん、何百年か前の人はここを開けないように色々頑張った。今度は、開けても大した事ないくらい色々用意しとけばいいのさ」


「なるほどー」


「案山子とか、ファイアスクとか」


「うん、他にも、自分らで考えて工夫してさ」


「カオるんはいつも前向きですね。見習いたいです」


「いやぁ、失敗が多いから、俺。前向きじゃないとやってられないのさ。あははは」



 皆んなも大笑いした。


 ちょうど、他のチームからタウさんへ連絡が入ったようだった。



「皆さん、戻りましょうか。お疲れさまでした」


「おう、お疲れさま」

「お疲れさまでした」

「お疲れー」

「お疲れさまでした」

「マジ疲れたなーお疲れ!」

「お疲れさま」


「お疲れさま、俺ら頑張ったな!」



 そうしてダルガの港街へと戻った。


 いや、帰る前に部屋の隅で眠らせた巫女がいた事を思い出した。サイレントをかけたが追い回されるのがウザく、スローもかけた。

サイレントやスローが効くならと、スリープもかけてみたら効いた。


 部屋の隅でぐっすりとお休みいただいていたのを忘れていた。危ない危ない。タウさんも忘れるなんてよほど疲れていたんだろうな。

 白眼巫女をターンアンデッドで消したが、新たな4体は出現しなかった。


 うん。良かった。





------


 ファルビニアの戦いは終結した。


 だが、ファルビニア国は滅びた。


 メサやカルーココやラッシルガルへと逃げ延びる事が出来た民と少数の稀人のみが生き残ったが、最早国としては成り立たない。


 ダルガ、エルアルシアも加えた5カ国での討議で、メサ、カルーココ、ラッシルガルの三国が国境を大幅に北へと広げる事になった。


 ファルビニアの北方は荒れ果てたままとなる。


 しばらくはダルガやエルアルシアからも冒険者が元ファルビニアの荒地を訪れる事となる。

 残ったアンデッドの処理だ。



 この世界、この大陸に落ちた稀人達にとって今回の事は、自分や家族、仲間の命を考えるキッカケになったようだ。


 強くても強くなくて、皆楽しく精一杯生きる、それが一番だと。

 もちろん、どこかの弁当屋も。







 あと、番外編がもう1話あります、女神像の話です。これは短くサクっとね。

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