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193話 思わぬところに

 スタガで腹を満たした俺たちだったが、続いてマッツに入ろうとしたアネ達をタウさんが止めていた。



「食べ過ぎると大変な事になりますよ」



 あえて「太る」と言わないところが流石だな、タウさん。



「いいのいいのー、子供と旦那の分。うちは食べ盛りが3人もいるから」


「リンのとこは凛ちゃんと珠州ちゃんと大雅くんの3人、あと旦那も入れると4人だw」


「もしかしてリンさんって娘さんの名前凛ちゃんからゲーム名を?」


「ちゃうちゃうw昭和の歌手のリンダからとったのよ」



 そっか、リンさんってキャラ名リンダだったわ。



「長女の名前付けるときにもリンダからとったw」



 そっちがかい。



「パラも買いなよー、結月ちゃん達の分」


「そうだな。パッピーセットでも買うか」


「あ、今の時間ってモーニングはやってないですよね。僕パンケーキとハッシュドポテトが好きなんです。明日の朝、飛んでこよう!」


「俺も買おう。家族いないけど……。いつでも食えるようにアイテムボックスに入れておくぞ」


「メダルがあればいつでも買えるじゃないですかw」


「何を言うか!もしかしたら今だけのダンジョン特典かもしれないぞ」


「え、マジ? 俺も買う」



 今だけのダンジョン特典?確かにありえるな。

 異世界転移からの相次ぐ謎状態だが、どこまでが現実なのかもわからんし、ミレさんが言うようにいつまでこのラッキーがつづくのかもわからん。

 俺も買っておこう。買えるだけ買っておくか?


 あ、そうだ。あっちゃん達にもテイクアウトして持って行こう。


 先日アレ食べたいコレ食べたいって言ってたな。

 俺はパーティ念話が使えないのでフレンド画面からあっちゃん達をクリックして念話を押した。



『もしもーし、フレンド念話通じてる? 通じた人名前言ってくれ』


『はーい、あつ子』

『カオさんお疲れさまです。ユイです』

『カオ君お疲れさま。山川だ』

『ヨッシー聞こえてまーす』

『ユースケです。そっちはどうですか?』


『おう、皆もお疲れさま。あ、今ダンジョンに来てるんだ』


『ラスボスですか?』


『うん。地下ボスのデーモンはクリアした』


『凄いなぁ。怪我はないかい?』


『大丈夫です。俺は後ろに付いていただけで倒したのは彼らなので。で、B1のボスを倒した後にB2の、今、マッツにいるんですが、テイクアウトしていくんで希望あったら聞こうと思って』


『ん?』『は?』『え?』

『聞き違いかな?もう一度言ってもらえる?』


『え…? どこから? テイクアウトして行く……』


『じゃなくて、カオっち、どこに居るって? また迷子か? 迷ってどこまで行った? 怒らないから正直に場所を言ってごらん?』


『いや、迷子じゃなくて今マッツに…』


『はあああ? どこのマッツよ?』


『ダンジョンのB2の……しいて言うなら、マッツ死霊の森店?』


『『『『『……………』』』』』


『ウケない、その冗談』『そうですね』


『カオるんさぁ、もし本当にマッツがあるならさぁ、何でもいいから買ってきてみてよ。見たら信じる』


『そうですね』



 ああぁ……念話のチェックが皆の名前から消えていく。念話を切られた。


 気持ちはわかるけど、誰も信じてくれないとは悲しすぎる。まぁいいや、適当に買って行こう。


 商品を選ぶのが面倒になりパッピーセットを20人分買った。パッピーセットならオマケのオモチャが付いてるから子供らも喜ぶな。

 スタガも買って行こうかと思ったが、注文が難しそうなので諦めた。


 皆はマッツとスタガを行ったり来たりでかなり買い込んでいるようだった。


 大きな袋をアイテムボックスに仕舞い終えたメンバーがポツリポツリと戻ってきた。最後はアネさんだった。



「マッツ行ってスタガ行って、もう一回マッツいったけど、やっぱスタガもと思って時間かかっちゃったー。でもあの映像みたいな店員さん不思議だねー」


「ホントホント、こっちの言った事ちゃんと聞いてるよね? どういう仕組みなんだろうね?」


「皆さん奥のコンビニ行きました?」



 そうだった。奥側にセボンイレボンがあったのだ。ゆうご君の一言に皆が再び騒然となった。



「え、何? どこ? 行ってない! 行く! ね、ね。リン、ほらアレ買いに行こうよ!」


「行くわ! コンビニ!!! アレ買う。ちょっと男子は待っとれ!」


「え、俺もタバコ買いに行きたいんだけど」


「ダメ、先に女子」



 何か解らんが、男女分かれてコンビニに行く事に決まったらしい。


 俺は待っていよう……いや、あっちゃん達がチョコ欲しがっていたよな?あと歯ブラシと歯磨き粉が残り僅かだった。

 シャンプーはとっくに切れてたし石鹸も欲しい。シャンプーとか石鹸ってコンビニにあるかな?


 女子の買物が終わったら俺も行くぞ。



「セボンの奥に薬局あったー。マツチヨ!」


「マツチヨ? 何それ?」


「え、マツチヨって全国区じゃないの? 薬局のマツカワチヨコ」


「まつかわちよこって人の名前じゃんw」


「そうだよ? 創業者の名前が店名の薬局。チェーン店あちこちにあるから全国区だと思ってた」



 それにしてもダンジョンの地下2階に、コーヒーショップにハンバーガー店、コンビニに薬局。


 嬉しいけど、ありなんか?


 俺はメダルに刻まれていた『B2』の文字をしみじみと見つめた。

 使用期限とか使用回数なんて書いてないよな?



 全員の買物が済んで、街の俺の店に飛ぶ事になった。


 念話はさっき何でか怒られてちょっと気まずかったので、メールで今から仲間を連れて戻る事だけを告げ、エリアテレポートで全員を連れて戻った。


 うちの裏庭だ。そこには山さんが立っていた。



「お帰り、カオ君。お疲れさまでした。皆さんもアンデッド討伐とダンジョンボスの討伐をご苦労様でした。部屋を用意してありますし、お風呂も沸いていますのでまずはゆっくりしてください」


「ただいまぁ、山さん、ありがとう。みんなは?」


「中で食事の用意をしているよ。お腹は?」


「あ、食べて来たからそんなに空いてない。クランの皆を紹介するから、そしたら山さん達も食事にしちゃって」



 とりあえず紹介したらまずは、3階の部屋に案内して、風呂は女子が先で、それからリビングで話をすればいいか……と考えていたところに、マルクを抱っこしたあっちゃんが裏庭に出てきた。


 俺の声が聞こえてマルクが飛び出そうとしたのをあっちゃんが捕まえたのかな?


 俺がマルクを受け取ろうと手を伸ばした時、突然誰かに突き飛ばされた。



「あっちゃん! あっちゃんあっちゃんあっちゃん! ゔぁああああ」



 振り向くとリドル君が両手を突き出し、涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔であっちゃんに近づいて行くところだった。



「そ…う、ちゃん? 蒼ちゃん?」



 あっちゃんも目からポロポロと涙が溢れ始めた。



「蒼ちゃん! 蒼ちゃんのバカバカ! 遅いよ! 私を見つけるのにどんだけ時間かけるのよ! バカバカバカ、うわああん」


「ごめん、ごめん、ゔゔ、あっちゃんごめん」



 ふたりがぎゅっと抱き合った。



「ふぇええええん、うえええええん」



 ふたりに挟まったマルクも泣き出した。もらい泣きか?緊迫したふたりの抱擁に驚いたのか?


 マルクをふたりの間から助け出そうと近づいたら、リドル君がマルク、俺、あっちゃんの顔を三回見回した。



「あっちゃん、まさか浮気? カオさん俺の妻と不倫……子供まで」


「ちゃうわ! アフォか」



 俺が言う前にあっちゃんがリドル君の頭をボカンと殴った。それから泣いているマルクの頭を撫でて俺に渡してきた。

 マルクがギュっと俺の首に抱きついた。



「あの、とりあえず、中へ」



 山さんの一言で皆が息をし始めたように動き出した。

 まさかみんなも不倫現場に居合わせた、とか思ったんじゃないよな?



 まずはリビングで大人はお互い顔合わせだ。俺が間に入り、やまと側と血盟側の両方を紹介した。



「さっきは本当にすみませんでした」


「ホントよ、全くもう、恥ずかしい」


「いやぁでもまさか、あっちゃんの旦那さんが月サバにいたとは、驚いた」


「こっちも驚きですよ。カオるんと会えた事も驚きましたが、まさかリドル君の奥さんがカオるんと同じ職場だったとはね」


「世間って本当に狭いもんなんだな。驚いた」


「あ、俺、本名は中松なかまつ蒼司(そうじ)です」


「そうか、皆普段からゲームのキャラ名を使ってるからな」


「いやぁでも、あっちゃん、あ、すみませんここではいつも愛称呼びでしたので、中松さんの出産に間に合って良かったですね」


「今までどおりでいいですよー。中松だと旦那か私か紛らわしいから。私もリドル君って呼ぶね」


「待って、あっちゃんは今までどおり……蒼で……」



 あっちゃんがニッコリと微笑んでいた。リドル君、転がされてるなぁ、いや、仲が良くてヨカッタネ。オジサンはドウセ、ヒトリさ。


 とりあえず顔合わせをしたので、3階の部屋を適当に使ってもらった。リドル君はあっちゃんの部屋へ行くそうだ。




 女性陣が風呂に入り、いつもはどちらかだけだが、今日は続いて男性陣も風呂を使った。

 俺たちはスタガやマックで食べてきたので、やまと屋の皆が食事をしている間はリビングの方で寛いでもらった。



 マッツのパッピーセット、出しそびれた。


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