169話 閑話 密談からの
カオとキックは、ある日、街の門の外、人気の無い木陰で密談をしていた。
「キックってさDEじゃん?」
「……はい。」
「あのゲームってキャラの男女を選べたよな? キックって最初から男のダークエルフ?」
「最初からも何も、ずっと男DEですよ?」
「……そっか。いや、あのゲームって現実と逆の性別でプレイしている人も多かった、よな?」
「ああ……初期設定の時少し悩みましたが、見た目…ちょっと。あの、女DEは露出が激しいコスチュームだったので…男の方が忍者っぽくて格好良かったから…」
「そっか、そうだよな。女性キャラのコスって凄かったな。女性ナイトは、確か……ビキニアーマー。女性WIZは身体にフィットしたロングのローブでしかも腿までスリット入ってたな。女性エルフなんてミニスカチュニックで……」
「そうでしたね。…闘ったら絶対パンツ見え…ますね。まぁパソコンの小さい画面じゃ見えなかったですけど。あ……、もしかしてカオさん女性キャラでプレーしてたんですか? あれ? でもこないだのコスプレショー、カオさん男WIZの衣装でしたよね?」
いやあれ、やっぱりコスプレショーだったんかいw
「ええと、WIZは男性、DKNも男性」
「って、事は…もしかしてエルフは女?です?」
「そうなんだよ。セカンドキャラは女性エルフだった」
「へぇぇ、じゃ…エルフ装備は女性用なんですか?」
「それがさぁ、不思議な事にアイテムボックスの中に入っていたのは、男性エルフの装備だったんだよ。チュニックとズボンのセット。」
「……それは…、メインの性別に装備も同期するという事、ですかね」
「ゲームのような世界に転移した事自体が不思議体験だからな、そんな事あっても気にならない。……が、問題はここからだ。キック、他言無用だ。これが漏れたら俺は消される(社会的に)」
キックがゴクリと唾を飲み込む。
「……ステータス画面のさ、名前の所に触れたら、チェンジしたんだよ」
「……………チェンジ…、何が?」
「……ナニが」
「何が?」
「ナニが」
「なに…」
「あ! いや! 確認はしていない! 怖くて封印した! というか、ステータス画面を元に戻した!」
キックはしばし固まっていた。
あれ?リムーブカーズかけた方がいいか?
「えと…つまり、ステータスに表示されている名前はカオさんのファーストキャラで、そこをクリックするとセカンドにチェンジした……って事ですか…………それでカオさん自身もセカンドの性別にチェンジした……で、合ってます?」
「確認はしていないが、たぶん、概ね、おそらくそんなとこ」
「確認…、しましょう」
「そ、そそそ、そうだよな。確認してしっかり封印しないとな」
「今、カオさんは男性ですか?」
「おおう! 付いてるぜ!」
頷いたキックが頼もしく見えた。
誰にも見られない場所で確認をする事になり、俺達はやまとダンジョンに行く事にした。
ギルドでゴルダに確認をしたところ、現在ダンジョンは中断封鎖中という事だった。
「魔法の検証」という理由をあげてダンジョンへの立ち入り許可を貰った。
俺とキックはダンジョンメダルを使って、やまとダンジョンの22Fへと飛んだ。
22Fは何も出ないただの通路だ。
だが、万が一、誰かが入ってきた事を考えて、俺らは通路の奥の方に進んだ。
「じゃ、カオさん。どぞ」
キックに促されてステータス画面の『カオ』のところに触れた。
カシャン。
小さな音がなった。
画面の名前は『カオリーン』に。
目線の高さが若干低くなった気がしなくもない。キックは俺を見たまま固まったいる。
あれか?俺が絶世の美女エルフになったから驚いているのか?
「え、えと、どうです?」
キックが恐る恐る聞いてきた。俺は自分の身体に触れながら答える。
「ある。ない。」
「どっちが!」
「股のはある、胸はない」
「え、それっって性別は変わらないって、事、ですか?」
「……だ。あ、アイテムボックス」
俺はエルブンアーマーを装着した。
アイテムボックスの中のエルブンアーマーは女性用のスカート付きチュニックになっていた。
「割りとよくいるおばさん……、というか、おばおじさん。カオさん、土屋さん達と混じっても遜色ないです」
「……それ誉めてない、よね?」
キックまで巻き込んであんなにドキドキしたのに、結局「キャラ名」をチェンジしても性別は変わらなかった。
本人の性別に同期していた装備が、元のキャラの装備に戻っただけであった。
背やアレが縮んだ気がしたのは全て俺の気のせいだった。
せっかくダンジョンに来たのだから魔法の検証をしていく。でないとゴルダに嘘をついた事になるからな。
検証事項は、俺の大型範囲魔法がダンジョンでどうなるかだ。
キックは以前俺のブリザードが当たっても攻撃は受けなかったと言っていた。
なのでここから離れた隠れた通路に立ってもらい、ブリザードを放ってみた。ブリザードは俺が目視出来る範囲のみに吹雪を起こした。
俺から見えないキックの場所に雪は全く降らなかったそうだ。
次に、地面に向かってイラプションを放つと、地割れが起こるが数分後には元に近い状態の地面に戻った。壁に至っては無傷だった。
外では火事を気にして試せなかったファイアーストームも試した。
自分を中心に巨大な火の渦が発生したが、自分が熱いという事は無かった。MPバーは5%ほど減っていた。とすると20回が限度か。
狭い通路で撃つには勿体ないな。
メテオも試した。…………狭い通路の天井から燃えた隕石がぼたぼたぼた。この高さからだとイマイチだな。迫力が無い。
MPもファイアーストームより若干減りが多いくらいか。ゲームだと半分以上持っていかれたから、連続は無理だった。それに比べたらこの世界は俺、ラッキーだな。
どちらにしても今後の使用は無さそうだけどな。
俺はバッファー(補助魔法をかける人)かヒーラー(回復役)だからな。あと、本業は弁当屋だし。
とりあえずの心配事(うっかり女性エルフにチェンジしてしまう)は解決したので家に帰ろう。
あ、キック、ありがとう。




