163話 36Fの戦い
『35F』まで何とか地図作成が出来た。
かなりハイペースで進んで来たので『36F』に上がる階段で休憩をとる事になった。階段に座り食事を摂った。
「もしこのダンジョンがやまと商事のビルと同じ40階建てなら、あと5階で終わりかな」
山さんが食べ終わった弁当の包み(葉)を綺麗にたたんでアイテムボックスにしまった。
「そうだなぁ、36〜39が普通の魔物で40がボスで、ダンジョンクリアってところか」
俺は太いソーセージを挟んだパンの最後の一かけらを口に投げ込みながら、ゲームならそんなところなんだがと考えていた。
「ゴルダ、この後はどうするんだ?」
「あと5階ならこのまま行ってしまいたいわね」
「うむ。泊まるなら昨日の30Fまで戻らねばならない。5階戻って安全域で野営か、5階進んでボスを倒すか」
「魔物の強さもどんどん上がってる。このまま進んで大丈夫か?」
「まぁ、カオの召喚獣がいるから何とかなるかと。もしも途中でどうにもならない強敵が出た場合は、残念だが全員スクロールを使って帰還だ」
「ああ、そうだな。出来れば40Fのボスの顔を拝んで帰りたいがな」
といわけで休憩後は引き続きダンジョンを上がっていく事となった。
『36F』は通路ではなかった、が、セーフティゾーンのような広場でも無い。
巨大な岩や草木が茂る草原の様なフロアだ。
「これは、完全に大型の魔物の領域だな。各自警戒してくれ」
「おう」
「うっす」
大型の魔物…まさかボス部屋か?山さん達が密集体勢を取る。もちろん、オークキングはゴルダ達前衛チームに配置した。
「ドラゴンとかゴジラが出たら即帰還しよう」
山さん、それは逆にフラグ立てになるから言っちゃダメ。
ナオリンがショルダーバッグのポケットに突き刺してある帰還スクを触っている。
キックは両手に剣を持っていたのでやる気なのかと思ったがよく見ると右手に短剣、左手は帰還スクだった。
と、その時前方からラルフの大声が響いた。
「出たぞ!」
「何が出た!」
「オーガ……オーガだ!」
な、なっにぃぃぃ!オーガだと?今、オーガが出たと言ったな!
俺はそこから飛び出し、ゴルダ達の間を走りぬけた。
「おい! カオ、待て」
慌てるゴルダの声を背中で聞き流し、前方にいる緑の巨人、オーガに一直線に走った。
そしてオーガに向かってジャンプして持っていたスタッフで殴りつけた。
バシィっっ
「血ぃ出せ!」
俺がオーガを攻撃した事で俺のサモンであるオークキングもオーガに攻撃を開始した。
オーガはオークキングよりデカかったが3匹のオークキングの敵ではなかった。
地面に沈んだオーガの近くをキョロキョロ探したがドロップは無かった。
「ちっ! ケチヤローが!」
すぐに皆んなが駆けつけた。
「どうしたの! カオくん」
「おい、何してるんだ! ひとりで突っ込むとは!」
「あ、すみません、すみません! つい…。オーガを見ると突っ込むくせが…」
ヤバい、オーガを見た途端ついゲームの記憶が蘇って突っ走ってしまった。
ゲームで、オーガのドロップは『オーガの血』なのだが、これがなかなかドロップしないんだ。
『オーガの血』はパワーグローブを作成するのに必要な材料だ。
オーガ自体の出現率も低い上、ドロップ率まで低いという事で皆血まなこになってオーガを探し回っていた。
と言っても10年以上前だから、その後はもっと良いグローブが出ていたのだろうが。
女神像の倉庫にパワーグローブがひとつしかなかったのは、『オーガの血』が無くて作成出来なかったからだ。
「血」以外の材料は揃ってるんだが。
ゴルダ達には正直にオーガのドロップが欲しくて先走ってしまった事を詫びた。
ひとつだけ持っていたパワーグローブをアイテムボックスから出してゴルダに渡した。グローブをはめたゴルダは驚いていた。
「これは……すごいな。力が湧き上がる」
オークセットは剣、盾、頭、胴、マントの5個だ。そう、手は空いていた。そこにパワーグローブを付けたのだ。
ゴルダが剣を振ると空気を切り裂いた振動が凄かった。
見ていたラルフも欲しがったがひとつしかない。
「よっし! オーガ殺ろうぜ!」
ラルフも殺る気が激ったようだ。それにしても36階、ふふははは、オーガ狩り放題?
「血を絞り取るぜ! 待ってろオーガァ」




