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156/222

156話 26Fをちょっとだけ

『26F』の表示があった。


 ふと、思う。それぞれの階段の壁に『22F』から『26F』の表示。


 現在は塔型ダンジョンだとしても、その表示は元はやまと商事のビルであった事を匂わす。だとしたら…。


 やまと商事は40階建てのビルだった。このダンジョンも『40F』が最上階なのでは?


 だが、確信があるわけではない。明らかに職場だった時よりも広い面積を思うと高さ(階数)も異なる可能性もある。

 単純に考えた場合、22階フロアが地上1階とすると、40階は地上19階。外から見た感じ、そのくらい高さだったからそう思うのかも知れない。




「いいか? いくぞ?」



 ゴルダの声に我に帰る。


 この階の魔物を確認したら帰還する予定なので、山さん達は階段付近で待機だ。

 俺は明かり係としてゴルダ達に同行する。頭上に明るい照明をふよふよさせてゆっくり進む。


 さっきまでは石壁の通路だったが、ここは石壁がところどころ崩れていて、植物がはえていた。足場もあまりよくない。


 マップで赤い点を確認するより早く魔物を目視した。5mほど先の壁が崩れたところからもっこりとそれが現れた。


 毛むくじゃらで熊のような、狼のような?…二本足で立ったマッチョな狼?いや、細マッチョな熊か?


 どちらにしても牙を剥き出しにして唸っていることからこちらは敵認定されている。



「……ノールンか」



 フィルが盾を構えてラルフ達の前に出た。


 ノールン?聞き覚えがあるような気もするが思い出せない。ゲームではないのかもしれん。小説で目にしただけかも。

 だが、盾職が前面に出ると言うことは、物理攻撃の魔物か。


 俺の敵ではないな。

 あ、いや、『お前如き、俺の敵ではない』の意味じゃなくて、

『物理攻撃? 俺の担当じゃないな。俺WIZだから』の方の意味な。

 うわぁ、アイツ、爪がすごい伸びてね?


 なんて事を考えていたらフィルが盾を叩いて威嚇した。ノールンはフィルの盾に体当たりをした。

 ノールンの後ろに回ったラルフが斬りつけ、続いてゴルダも一太刀入れた。


 ノールンは背中から青黒い血飛沫を上げて倒れた。

 地面にゆっくり吸い込まれていくところをみると、死んだようだ。地面に飛び散った血も吸い込まれていった。そこには、元通りになった地面と、……リンゴ?


 リンゴがふたつ、落ちていた。


 え?リンゴがドロップ?

 25階のオークが豚肉だったのに、26階はリンゴ???豚肉のが高くね?



「果物か」



 リンゴを拾ったゴルダが戻ってきた。



「しまっておいてくれ」



 ゴルダに手渡されたリンゴを見ると、なかなかに立派なリンゴだった。スーパーに並んだひと籠398円のリンゴとは違う。

 高級青果店に並ぶ、ひとつひとつが編み網クッションで守られて売られている『ザ・林檎』って感じだ。一個800円とかしそう。

 うん、豚肉より高いかもしれん。


 後方で待っていた山さん達の元に戻った。



「あら、ノールンは林檎を落とすのね」


「わぁぁ美味しそうな林檎〜」


「結構良い林檎だね」



 もはや『リンゴ』ではなく『林檎』に聞こえる。



「さて、戻るぞ。全員帰還スクロールを使え」



 スクロールを使った皆んながどんどんと消えて行く。最後にゴルダと目を合わせて同時にスクロールを使用した。



 街の門からは俺のエリアテレポートでギルドまで全員を運んだ。



「今夜はこのまま解散だ。明日10の刻に弁当屋に来てくれ。今後の事をその時に話す」


「わかった」

「はい」

「お疲れさまでした」

「お疲れさまです」

「おつかれー」

「明日な」

「おつかれ」

「ごくろうだったな」



 俺らは歩いて自宅に向かった。


 ギルドから二軒先とはいえこの辺は一軒一軒が大きく、その上裏門から入るので思った以上に歩いた。疲れていたので余計に遠く感じたのかも。近いからと歩いたが、テレポートすればよかったな。



 完全に日が暮れていたので店の皆んなは風呂も食事も済んで、子供達はもう寝ているだろう。

 裏門から静かに入った。裏庭にいたイッヌが小さく「クゥン」と鳴いた。



「ただいま クラたん」



 俺はシェパードの頭を撫でた。今夜はクラたんが夜番か。ドーベルマンのエンカとセントバーナードのペルペルは誰かの部屋か?


 裏口の扉から静かに中に入るとリビングがざわついていた。



「あ、お帰りなさぁい」


「お帰りなさい。お疲れさまでした」


「おつかれ〜」


「無事でよかったです」


「「「「「「「「「おかえりなさい」」」」」」」」」


「なしゃあ〜い」


「ただいま戻りました」


「なんだまだ皆んな寝てなかったのか」


「ナオリンもキックもお疲れさまです」


「ただいまです〜」


「……まです」


「今日泊まっていくでしょう? 3階に部屋用意してあるから」


「あ、お風呂と食事どうします?」


「もう外は真っ暗でしょう? お風呂沸かすのは大変だよね」


「汚れたから入りたいけど今夜は濡れタオルで拭くだけにして

明日の朝入るか」


「そうだねぇ。疲れたから寝たい気もする」


「ご飯どうします?」


「すぐできますよ」


「軽く食べるか」


「ですね」



 アリサやユイちゃんが俺達の飯を用意してくれていたが、他の子供達は俺たちをジッと見たままだった。



「なんだ? 寝ないのか?」


「あはは、話聞きたいんだよね? ダンジョンの話、今日ずっとそれで盛り上がってたもんね」



 子供達がブンブンと頭を縦に振った。ヨッシーとユースケもその中に混ざっていた。



「寝ないと明日の朝起きられないぞ」


「えええ聞きたい聞きたい」



 何故かヨッシーが駄々をこねた。



「しかたないな。飯食ってる間だけだからな」


「子供達はそれ聞いたら寝ること」


「大人で良かった」



 いや、ヨッシー、お前も寝ろ。

 ユイちゃんとアリサが用意してくれた軽食を食べながら、今日あった事を掻い摘んで話した。




「すげぇぇぇ、ダンジョンすげえええ」


「ゴブリンとオークと、えと、ノーク?」


「ノーム?」


「ゴブリンとオークはよく話を聞くから何となくわかるけど、ノームってどんな?」


「ノールンな。あれ? ノールンでよかったっけ?」


「ノールンで合ってます」


「しまったああああ」


「どしたの?ナオリン」


「スマホで動画撮ってくればよかった!」


「ああ、そうだね」


「スマホ……充電したい。カオさん、充電器貸してください」


「あ、僕も借りたい」



 アイテムボックスから出した手回し充電器に群がる大人達を置いて、子供達を2階に追いやった。

 セントバーナードのペルペルがキチンとお座りをして俺の顔を見ていた。



「ペルペル。寝よっか」



 俺もイッヌを連れて2階に上がった。

 俺の部屋のドアの前で毛布抱えたマルクが寝ぼけ顔で座り込んでいた。



「あ、カオさん、すみません。マルクがカオさんと一緒に寝るって聞かなくて…」


「いいよ。今夜は俺ももう寝るから。アリサも自分の部屋に帰ってもう寝な」



 手を伸ばしてきたマルクを毛布ごと抱き上げてペルペルと一緒に部屋へ入った。

 実は俺の部屋にはベッドがない。無いというか、撤去したのだ。


 というのも、マルクとイッヌと寝るためにはシングルベッドでは狭いのである。かと言って8畳の部屋にベッドふたつはきつい。


 なのでベッドを無くして床に段ボールを敷き詰め、その上にカーペット、そして布団(毛皮やシーツと毛布など)を直に敷いた。

 床に直に寝る方がマルクが落ちる心配もないし、イッヌも頭の上やら足元やらと好きなところに移動して寝る事もできて一石二鳥だ。


 今も、俺にくっついて寝ているマルクの頭の上あたりにペルペルがゴロンと横になった。


 おやすみ。



 翌朝、いつものように弁当屋の仕事が始まる。

 寝ているマルクの頭をそっと撫でて静かに布団を出た。一旦顔を上げたペルペルだがまだぐっすり寝ているマルクを見てまた頭を下げた。

 ペルペルはマルクが起きるまで一緒にいてくれるようだ。


 俺はダンと西門に弁当を売りに行き、8時前に店に戻った。



 いつものようにダイニングで朝食を摂っていると、店の方からラルフ達が入ってきた。え?集合は10時じゃなかったか?

 壁にかかった時計(職場からパクってきたやつ)を見るとまだ8時半にもなっていない。


「ちわあっす」

「おはよ」

「昨日はお疲れさん」



 ラルフ、リザイア、フィルの3人だ。ゴルダはいない。

 3人は店内で買った弁当をぶら下げてリビングのテーブルについた。



「早めにきてここで朝食を食べようと思って」



 うちの子らが素早くお茶とスープを出していた。遅れてゴルダも弁当を手に入ってきた。



「早いな」



 そういうゴルダも早いと思うぞ?10時って言ったのゴルダじゃん。

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