152話 ダンジョン探索の手伝い
一瞬後には街の門の中にいた。
そこにはゴルダや山さんたちもいた。全員無事に帰還スクを使えたようだ。そこから今度はエリアテレポートで家まで戻った。
ゴルダはうちからギルドへと戻っていった。
リビングの時計を確認するともう午後2時をまわっていた。
10時頃にやまとビルへと飛んだので、なんだかんだで4時間くらい経っていた。昼も食べずに。
「腹減ったぁ」
「疲れましたね」
「いやぁ、お疲れ様だったね。みんな」
「お疲れ様です」
「おかえんなさぁい」
「おかえりなさい」
「おかぁりなしゃぁ〜」
「ただいまぁ」
「ただいまっすう」
「ただいまです」
「あ! ばっちぃ!」
俺の足に抱きつこうとしたマルクをあっちゃんが寸前で抱き上げた。
「話聞きたいけど、まずはお風呂へゴー」
「あ、沸かしてきますね」
ロムが裏庭へと飛んでいった。
「え、俺、腹減ってんだけど」
ヨッシーが情けない顔になった。
「ダメ! そんな汚れたままでリビングに入らないで! 全員回れ右!」
「「「「「はい!」」」」」
俺たちは2階の自分の部屋へ着替えを取りに行ってから風呂場へ向かった。
風呂でサッパリ汚れを落としてリビングに戻ると、ダイニングテーブルには食事の用意がしてあった。
ちょっと遅めの昼食を食べながらやまとビルの話をした。
「え、じゃあ、やまとビルもう無くなっちゃったの?」
「うん……てか、無くなったというかダンジョンになったっぽい」
「しかも伸びてたよな?」
「そうなんだよ。上に謎の階が増築されてた。でも階段の壁に23Fとか24Fとか表示はあったんだよ」
「中も完全にダンジョンでしたね」
「なんか複雑ですね〜。事務フロア無くなったって」
「あの……開拓村の皆んなには……どう話せば…」
「とりあえずありのまま話していいんじゃないか?」
「僕が話そうか?」
「あ、山さんから話して……もらえれば助かります」
「じゃあ食べ終わったら菊田くんとちょっと村に行ってくるよ」
「話聞いたらナオリン絶対行きたがりそう」
「ああ、新田さん好きそうだよな」
「スクロール勿体無いからカオくん送ってくれる?」
「あ、いいっすよ」
食後、2人を連れて開拓村へ飛んだ。
村ではそれぞれが作業中だったが近くにいた大塚さんに声をかけて皆んなを集めてもらった。
まだ詳細は調査中であるが死霊の森のやまとビルが無くなり、ダンジョンが出来ていた事を山さんが話した。
『やまとビルが無くなった』のところで皆はショックを隠せない顔をしていた。
『ダンジョン』のくだりを話した時は、驚いてこそいたが『ダンジョン』が何か解らない人はほんのひと握りであった。
俺は皆んなが『ダンジョン』という言葉を知っていた事に驚いた。
「ダンジョン? 知ってますよ。スマホゲームに出てきたし」
「スマホゲームでよく見るよね」
なるほど、そうか。やまと商事の社員さんはゲームなどしない、と思い込んでいた。
確かにパソコンのオンラインゲームはした事はないそうだが、最近は皆、当たり前のようにスマホで時間潰しにゲームをしていたそうだ。
そして案の定、ナオリンが騒いでいた。
「ズルイズルイズルイ! 何でそんな面白い事に誘ってくれないかな! 次は絶対行きますから!」
あ、う、うん。ナオリン、アクティブだなぁ。
皆んなに一通り説明が終わった時、ヨッシーからPT念話が入った。
『おーい、そっち会議終わったかぁ?』
『終わったよ。会議ってほどではないけどね』
『あ、山さん、お疲れっす。カオるん、山さん、こっち戻ってこれる?』
『大丈夫だけど、何かあったか?』
『ゴルダさんが来てます。色々話があるみたいで』
『ユイちゃん、こんにちわ〜』
『あ、新田さん、こんにちわ』
『ナオリンでいいよぉ』
キックとナオリンは村の生活サイクルがスムーズに行き始めた頃にまた俺たちとPTを組んでいた。
当然、パーティ念話はキックとナオリンにも聞こえている。
『わかった。すぐ戻る。あ、キックも一緒に戻った方がいいか?』
『ゴルダさんに聞いてみます』
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『出来れば来てほしいそうです』
『わかった。キックもつれて帰る』
『私も一緒に行きますからね!』
「え……」
「行きますから」
「……はい」
開拓村からキック、ナオリン、山さんを連れて街の家へ戻った。
「何度も悪いな」
「いや、それはいいけど。ギルドで幹部会議みたいのを開いていると思ったから……」
「とりあえず進展を知らせておこうかと。あと頼みたい事もある」
リビングの低いテーブルに飲み物とちょっとした摘めるモノを用意してもらった。
俺たちはさっき遅い昼食を食べたばかりで満腹だったが、女性陣や子供達はそろそろ夕食の時間だからな。
キッチンでは子供達が食事を用意し始めていた。弁当屋の翌日用下拵えをしているバイトの子らもいる。楽しそうだけど、やはり狭いな。
あっちゃんとユイちゃんは自分の食事を持ってこちらにまざった。ナオリンとゴルダにも食事を用意した。
ゴルダはギルドで昼食を取れなかったようで、パンやシチューをバクバクと美味そうに食っていた。
ナオリンは村で昼食はとったそうだが、シチューは別腹とかわけがわからん事を言いながら食べていた。
「でだな、まずはギルドで決まった事だが、あのダンジョンは 『死霊の森ダンジョン』と命名された。いずれは冒険者達に解放する予定だ」
「死霊の森ダンジョン……怖っ」
「かわいくない名前」
「呪われそう」
女性陣には不評のようだ。
「ゾンビがいそうですね」
「いたのはスライムだけどな」
「あと、ゴブリンいたぞ」
「まぁ、まだ2階、3階しか見てないがな」
ゴルダが苦笑いをしながら続けた。
「冒険者に解放する前に問題をいくつか解決しないとならん」
「問題とは?」
「大きな問題が、その場所だ」
「死霊の森。普通の人は近寄らないって前に兵士さんに聞いた」
あっちゃんはこの世界に来た初日に街まで連れて行ってくれた兵士からそんな話を聞いたそうだ。
「その通り。死霊の森は魔物が湧きやすい。しかもアンデッドだ。アンデッドが湧かない安全な時間帯は朝の10刻から昼の2刻あたりのせいぜい4刻だ。なので森にいられる時間が短い」
「確か、やまとビルから森を抜けるまで徒歩で3〜4時間かかりましたよね」
「ダメじゃん。ダンジョンについたら次の日まで帰れないじゃん」
「ヨッシーの言う通りだな。森の外までは馬車で行くとしてもそこからは歩きだ」
「だったら、森を開拓してダンジョンまでの道を作ったら?」
「あ、それいいな」
「ダンジョンまで一直線で馬車を走らせたら1時間くらいで着くんじゃね?」
「え、でも、帰りは?」
「決まった時間に馬車で送り迎えとかいいんじゃないかな?」
「それでも中に居られるのってせいぜい2時間くらいかぁ」
「いや、ダンジョンって言えば泊まりでしょ? 日帰りの方が珍しいよ」
「中入っちゃえば安全じゃないかな? 22Fって何もいなかったですよね?」
「いなかった!」
「確かに」
「そうだな」
「通路は狭いけど、曲がりくねってそれなりに長かったから、結構な人数が泊まれるよね?」
俺らの話しをゴルダは面白そうに聞いていたが、ニヤリとしたあとようやく口を開いた。
「死霊の森にダンジョンまでの道を作る案は面白い。だが簡単ではない。まず、木を切り倒し道を作る間も魔物の襲撃に遭う。そこら辺、何か良い案はないか?」
「そっか、まずそこかぁ」
「ううん……」
「カオくん、何かズバッと道を作れる魔法とか無いの?」
「そんな便利な魔法はないですよ……あ」
「あるの?」
「あ、いや、道を作るとか無理だけど、木を切り倒すなら…。イラプションだったかな? 地割れが出来る魔法」
「ほおお、一度試してみてくれ。明日にでも一緒に行こう」
ダンジョンまでの問題は何とかなりそうな感じか?まぁ、やってみないとわからんが、それはその時考えればいい。
「それから、頼みたい事がある。確か、カオ、キック、ヤマカーはダンジョン内の地図を見られるスキルがあると言っていたな」
ゴルダは山さんの事を“ヤマカー”と呼んでるのか。ヤマカワだからヤマカーに聞こえたのか?まぁいいんだが。
「ここでは見られない。その場所に行かないと使えないスキルだ」
「なら、明日は3人にも一緒にダンジョンに行ってもらいたい。地図の書き起こしを頼みたい。ダンジョン内の地図があれば冒険者は助かる」
「なるほど……」
「わかりました」
「22Fと23Fしかまだ見れないが、明日は書くものを持って行こう」
「はい! はいぃ! 私も行きます! 私もマップ使える!」
ナオリンが立ち上がって手を上げた。やる気満々だな。
「お、おう、お願いする。明日からAランク冒険者のパーティがダンジョンの探索を進める。それに同行してもらいたい」
「え、じゃあ弁当屋どうしよっか」
「カオるんいないと西門前販売が困るなぁ」
「カオっちだけ毎日テレポートで通勤してもらえば?」
「なるほど、その手があったか。8時まで西門で販売してからダンジョンへテレポートすればいいんじゃね?」
「いや、それは無理。ダンジョン内はテレポートが使えない。というかブックマークが出来ないんだ」
「あぁ、そうだった」
「そうでしたね」
「弁当屋をしばらく休みにするか」
「西門前だけ休みでいいんじゃない?」
「てか販売だけならカオさんの代行で誰かいけばいいよね? シールド魔法がお休みって札を配っておく? 次回使える券」
「ギルド前販売も代行立てよう、山さんの代わり」
「販売は教会の子供にヘルプを頼むから大丈夫」
「じゃ、そんな感じかな?」
「スマンな。もちろんギルドから報酬は出す」
「ダンジョンは大事ですよ! ね? カオさん!」
「う、うん。はい。」
ナオリンが意気揚々と宣言した。
そ、そっか…ダンジョンは大事なのね?




