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125話 御者を雇おう

 というわけで、ゴルダから教えてもらった馬車屋に翌日みんなで訪れた。



「どういう用途でお使いですか?」



 さっそく寄ってきた店員さんに聞かれた。



「ええと、まず一台は小さいやつだな」


「小さいやつですか?」



 店員さんがふむふむとうなづいていた。



「街の中で買い物とかに行く時用で小回りが効くやつがいいな。主にあっちゃんとアリサが乗る用」



 ふたりを指差したて店員さんに教えた。ふたりが扱いやすい物をプロ(店員さん)に選んでもらいたい。俺たちにはわからないからな。



「え、あたし運転出来ないんだけど、アリサ出来る?」


「いえ……出来ません、馬車乗った事ないですし」


「ていうか馬車って言うくらいだから、馬…だよね?」


「馬ですね」



 店員さんはちょっと呆れたような顔をすぐに引っ込めて笑顔を作った。



「この中で馬乗れる人ぉ、もしくは馬扱える人」



 誰も手を上げない。



「うん、いないな。車の免許は持ってたけど馬の免許は……」



 山さんがブツブツと呟いていた。

 そう言えば、馬…とか馬車って免許(?)いるんかな?この世界って馬車の教習所とかあるのか?


 店員さんはそんな俺たちを見てほんの少し困った顔をしたが、すぐに良い案を思いついたようだった。



「御者を雇えばよろしいかと」


「あぁそうだった、その予定だった。あの、ところで、御者ってどこで雇えばいいんだ?冒険者ギルドに依頼出せばいいのか?」



 するとダンが自信なさげに俺の腕を引いた。



「あの…スラムで、馬扱えるやつ、知ってるんだけど」



 ん?ダンの友達か?知り合いに馬車扱える子がいるとはラッキーだ。スラムに住んでいるなら、俺らの家に住み込んでもらえるかもしれない。



「おお、じゃ、その子に聞いてみてくれ。出来ればうちに住み込みで 馬の世話と御者を頼めるかどうか」



 それを聞いた途端にダンの顔がパァっと明るくなった。



「わかった。ちょっと行ってくる」


「今か?」



 ダンが首を縦に振る。今にも駆け出して行きそうだ。



「なら、1人だけじゃなくて他にもいたら引っ張ってきてくれ」



 それを聞いたと同時にダンは飛び出して行った。

 ダンを見送った俺たちは店員さんに小さい馬車がいくつか並んでいる場所に案内された。



「御者が乗られるという事ですので、小さくても四人乗りをお勧めします。前が御者席で2名席、後ろも2名席で荷物籠もついています」



 ん?4人乗りか。もっと小さい…観光地でたまに見る人力車の馬版を想像していたのだが。

 と、考えていたのが顔に出ていたのか、店員さんにもっと小さいのを案内された。



「こちらはふたり用になります。御者と並んでおひとりだけ乗られる感じですね。一応後ろに荷物籠はついていますが4人乗りに比べて籠も小さくなります」



 確かにふたり用だとかなりコンパクトだな。

 これはもしかすると馬じゃなくもう少し小さい動物、ロバとかミニホースが引くのか?

 いや、この世界にロバやミニホースがいるか知らんが。



「うぅむ、四人用のがいいんかな? どう? あっちゃん」



 あっちゃんとアリサが2人用と4人用の馬車の周りをぐるぐると回って何かを確認していた。

 買い物で買った物が籠に入るかどうかを話し合っていたようだ。



「いいよね、アリサ。4人用にしよ?」


「はい」



「じゃ、1台目はこれで決まりな」



 店員さんに向かって4人用の馬車に決めた事を伝えた。



「2台目は開拓村や街の外に薬草採取に行く時に使う予定なんだ」


「そうすっとそれなりの人数が乗るよな」


「人は5、6人だけど猪とか獣で帰りは荷物が増えてもいいやつがいいんじゃないか?」



 男性陣から意見が上がる。全員で家を留守にする事はない。

 が、数名で狩りに行き、帰りは獲物を積んでこれるような用途で使用する馬車が欲しい。



「なるほど。日帰り程度でそれほど遠出には使用されず、かつ荷物を多く積める感じですね」



 店員さんが考えながら歩き出した。俺たちもぞろぞろとついて行く。



「となると、馬車としてそんなに凝った物でなくてよろしいですね。二頭立てで御者席は2名、後ろは箱型の幌付きです。左右に三名ずつ座れて、奥側と後部側に荷物もそこそこ積める。これなどはいかがでしょう」



店員に勧められたのは、TVで観た観光馬車のような感じだった。



「お乗りになる人数が少ない時は馬一頭でも十分に引く事が可能です。それと、二頭立ての時はさらに後ろに荷車を連結出来ますので、街の外の狩りにも重宝いたしますよ」



 なんと優れものだ!乗る人数によって馬が調整出来る上に、荷車まで連結出来るなんてサイコーじゃないか。

 あ、荷車も忘れずに買わんとな。


 山さんやユースケ達も店員さんの話を聞いて驚いたり感心したりしていた。



「なるほどねぇ」


「馬車すごいな、臨機応変に変化出来るとは」



 お互い顔を見合ってうなづいた。



「んじゃ、これでいいな」


「そうですね」


「だな」



 店員さんもほくほく顔になっていた。そして俺たちはさらに続ける。



「三台目は大きいやつで、他の街や王都まで行く事になった時に使う

遠距離用で何泊もするので荷物もかなり積めるのがいい」



 三台目!一度に三台もの馬車を購入と聞いた店員さんの目は極限まで見開いていた。



「遠距離用でも大小いろいろとございますが、お乗りになる人数は何名ほどでございますか?」


「今はこの街で落ち着いているから、全員での移動はないな」


「そうだよお。ゴージャスな家、買ったばかりじゃん」


「そうですよ!」


「そうなんだけど、いずれ他の街に家族探しの旅とかするだろうし。今、買っておいて馬車に慣れておくのも必要だろう?」


「カオくん……さすがだね、そんな事まで考えてくれてたのか」


「カオっちぃ…ぐすん」


「カオさん」



 店員さんは俺たちが落ち着くのを待ってくれていた。



「数名での移動でしたらこちらをお勧めいたします」



 そう言って案内されたのは立派な馬車が幾つか並んでいるところだ。



「前に御者席、御者がおふたりでもゆったり座れる広さです。その後部、中は四人がお座りになるお席になっておりますがかなり広めのソファーです。夜にはソファーがベッドになりそこにはおふたりが寝られます。貴族の主人と従者がお使いになられます」


「え、じゃ残りのふたりは?」


「ああ、馬車前で火を焚いて外で寝る感じか」


「左様でございます」


「荷物は馬車の上、横、下とかなり積む事が可能です。まぁ貴族様の移動でお使いですと荷物はかなり多くなりますから」



 ふむふむ、なるほど、キャンピングカーみたいなもんか。いや、持ってなかったけどさ、キャンピングカー。好きでよくネットで動画は観ていた。


 結構大きなキャンピングカーなのに、なぜがベッドがダブル一個なんだよね。ソファーは6人くらい座れるのに不思議だったけど。


 動画でキャンピングカーのすぐ外にテントも立てていたのを見て、ああ、そっかと納得したもんだ。



「4人で荷物がそこそこの時は馬を二頭立てで。この馬車も後ろに連結が可能となっております。後ろに箱馬車を連携すればもっと人を乗せる事も出来ます。その時は馬を四頭立てに。さらに六頭立てにするともっと連結が可能です」



 うわあああ、すげえな、馬車!どんだけバージョンアップ可能なんだよ。



「ふうむ、とりあえず二頭立てで購入して、後々用途によって増やせるのか」


「馬車すげぇな」


「カオくん、カオくん、馬車三台買ったら馬が全部で5頭になっちゃうよ?」


「六頭立てで使うとしたらもっとだよ」


「そんなに飼えるか? 家が牧場になるよ」


「馬は2頭にして使い回せば?」


「いや、同時に使う時に馬が足りなくなる」


「あの家、馬車が三台入る場所はあったけど馬はどうしてたんだろう」


「馬車置き場はあったけど馬小屋無くない?」



 俺たちが喧々轟々と話しているのを横で聞いていた店員さんから新発見な意見が出た。



「馬屋場に預けておられたのでは?」


「うまやば?」

「ウマヤバ?」

「うま、ヤバ?」


「はい。馬を預かり世話をしてくれる場所がございます」


「この街の中に?」


「はい。うちの店の裏にも御座います。街中にもう1箇所御座いますよ」


「へぇ、そんな店もあるんだ」


「うちで馬車をご購入された後に裏へ馬を選びに御案内いたします。その際にお預かりのご契約もなされればよろしいかと」


「おおお、至れり尽くせり」


「ありがとうございます〜」


「じゃ、大型はこの連結型で決まりでいいかぁ?」


「はーい」「はい」「おう」



 その後購入手続きと、馬車に必要な諸々の道具も購入、裏の馬屋で馬を選び、預ける契約と、これまた馬に必要なあれこれの購入をした。



「ひとりで来なくてよかったぜぇ。俺、覚えられなかったよ」



 俺は胸を撫で下ろした。



「みんなで覚えれば誰かしらがどこかを覚えてますよ!」


「みんなで同じとこを忘れたら?」



 そんな俺たちに馬屋場の店員さんも親切だった。



「あの、いつでもこちらにお越しください」


「「「「「「「ありがとうございます!」」」」」」」




 ちなみに馬は全部で五頭契約したが、一頭だけお持ち帰りだ。

 あっちゃん達が日々のお買い物に使う小さい馬車は、馬ごと家の裏庭の馬車小屋で飼う事にした。


 ちなみに馬車三台は馬車屋さんが家まで運んで裏庭の馬車小屋に入れてくれた。俺たち無理だから。素人だからね。



 そこにちょうどスラムからダンが戻ってきた。


 連れてきたのはダンと同じような年頃の少年ふたり。

 ひとりは以前一緒に狩りをしたロムという少年、それからもうひとりはその弟だそうだ。


 ふたりは大きく立派な馬車を見て最初は尻込みをした。が、とりあえず小さな買い物馬車が扱えればよいと宥めて住み込みが決定した。


 馬屋場さんで御者の手解きをしてくれる人を紹介してもらう事になっている。ふたりにはおいおい大きい馬車も扱えるようになってもらう予定だ。



 ロムたちふたりを家の中へと案内した。


 一階の三つの8畳部屋は“警備員部屋”にしたい。だからロム達兄弟の部屋は必然的に2階になる。

 2階で空いてるのは16畳部屋がふたつだ。



「ここしか空いてないんだけど、ここでいいか?」


「ええええ! こんな広い部屋!」



 兄弟揃って首をブンブンと横に振った。



「兄弟で一緒に入ってもらうし、いろいろ荷物置いたら狭くなるよ?」


「荷物ないですから!」



 ロムの弟くんが大きな声で否定した。お兄ちゃんのロムはダンをこづいて小声で文句を言っていた。



「もっと狭い普通の部屋ないのかよ」



 小突かれたダンも困ったような顔でボソリと呟いた。



「俺のとこはここの半分だけど…」


「そこと代えてくれ」


「ヤダよ、俺がヤダ。こんな広いとこ落ち着かないじゃん」


「俺らだって落ち着かねぇよ」



 小声から段々とヒートアップして周りに丸聞こえになっていたダンとロムの会話だったが、突然ユースケに矛先が変わった。



「あ、あの、ユースケさんに代わってもらえば」



 ダンがユースケを指差す。



「え、僕も今の部屋で落ち着いてるから。ええと、じゃあ、もうひとり誰か友達連れてくれば?3人いれば広くないんじゃない?カオさん、三台も馬車を購入したしふたりじゃ足りなくないですか?」


「確かにそうだな」



 俺も皆も頷いた。



「それいいじゃん?」


「そうしなよ」


「誰かいないの? 他に住み込みで働ける子」


「馬車系じゃなくてもいいぞ、家事とか」


「鍛治…はいないです」


「カジって家事だよ? 家の事」


「炊事、洗濯、掃除とか」


「男の子で家事できる子いるかぁ?」


「何言ってるんですか! 今時家事も出来ない男は結婚出来ないですよ!」


「「すいません」」



 俺とヨッシーがあっちゃんに土下座した。



「います! 何でもします!」


「スラムは仕事欲しいやつたくさんいるから」


「あの! あのあの、ふ、ふたり、いいかな? 俺の友達」


「にいちゃん、タビーとジョン?」


「うんそう、タビーは俺と同じ歳くらいでジョンが少し下。まだギルド登録出来ないけど、街の仕事、貰えるときはしてた」


「あれ? サッチは?」



 ダンがロムに尋ねた。



「サッチは最近別な奴らとつるんでる」


「そっか」


「4人だと狭くない? この部屋」


「いや! 全然狭くないです! むしろまだ広い!です!」


「あ、敬語使わなくていいよ」


「ベッドをあと3つ追加してパーティションで区切って小さい棚とかをそれぞれ置いたらどうかな?」


「それいいな、寮みたいで」


「じゃ、まずは来てくれるか聞いてみないと」


「絶対来ると思います」


「じゃあ、ダンとロムでひとっ走りスラムまで行ってきて、でその、タビー達?来るならついでに荷物も持ってきて。ロムは自分の荷物、ダンは弟くんの荷物持ってきて。あ、弟くんの名前は何?」


「あ、あの、シュ、シュ、シュロでしゅ」



 噛んだ。

 可愛いな。

 ヨッシー達から念話がきた。



『シュシュシュロ、でいいんか?』


『シュシュロでは?』



いや、シュロだろ、と思ったがちょっと自信がない。



「シュロ?」


「はい、よろしく、おねがいします」


「じゃあ、シュロは留守番な。兄ちゃんらが荷物持ってくるまでうちのマルたんと遊んであげて。俺はダン達と一緒にスラムに行って、タビーの返事を聞いたら寝具屋に飛ぶわ」


「ベッドや棚の購入や設置をする」


「じゃあ僕らは予定通り日常雑貨を見に行きましょうか」


「買ったら都度呼んでくれたら収納に行くよ。大概の大店はブクマしてあるから」


「シュロとマルたんの子供ふたりで留守番させて大丈夫か?」


「ボクできます!」



シュロが不安そうな顔で、しかしハッキリと言った。



「うん、シュロに任せよう。ダン達はスラムに、俺は寝具屋、山さん達は雑貨屋へ。マルたんはシュロとお留守番頼むな」


「あい! おるしゅば する」


「シュロ、頼むな」


「はい!」



 シュロは不安気な顔から一気に明るい顔で元気よく返事をした。

まぁ、イッヌ達もいるからな。

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