122話 家を買う
あっちゃんに怒られたあと教会へ戻り、皆んなを招集した。
「どうした? カオるん」
「緊急のやまと会議をしよう!」
「また魔物の発生ですか!?」
「あ、いや、緊急だけど悪くない緊急」
開拓村の作業から久しぶりの休暇で、みな教会でゴロゴロと寛いでいたのですぐに全員が集まった。
俺はさっきの女神像の件を話した。
皆んなは目を見開いて息をするのを忘れたように固まっていた。ゴブリン発生より驚いてるのは何故だ。
「13億G……カオっち宝くじ当てすぎ」
「うわぁ13億とは」
「すげぇな」
「で、だな、以前から計画していた次の借家を借りる件、借家じゃなくて、家買わねぇ?」
「いや、カオさんのお金ですからカオさんが好きに決めてよいかと思いますよ」
「カオさんお金持ちに……」
「カオっ…カオ様、住み込みの家政婦要らない?」
「あっちゃん、急に様とか気持ち悪りぃな。俺の金って言うか、まさかのゲームの倉庫女神があって中身入っててもの凄くラッキーだった。あったもんは使わんと。で、借家じゃなくて購入しよ。これからギルドへ家探しに行かないか?」
大喜びすると思ったのに何故か皆の尻が重たい。
「ええと、家、買うの反対か? 教会のがいいとか?」
「違う! 俺、また俺達カオるんにぶら下がる事になる。いつもいつもカオるんばかりにおぶさってる」
「そうですね、自分の出来る事が少なすぎて嫌気がさします」
皆、大喜びすると思っていたのでヨッシーとユースケの言葉はショックだった。
「俺が、魔法使えたり大金持ってたりするの、嫌だったか? ただの派遣だから? 俺、威張ってた? 図に乗ってたかな」
「違います! 違いますよ!」
「違う! そんな意味じゃない」
「思った事ないです、カオさんが派遣だからとか!」
「カオくん違うから」
「じゃあ何で……」
「…………逆ですよ。僕らがいつもカオさんにぶら下がって図にのってるんじゃないかって考えてしまうんです」
「俺……皆とは仲間、家族だと思ってた。だから長男が家族のために尽くしちゃダメなの?」
「僕らも家族と思ってます! 僕は思ってます」
「私だって思ってる!」
「私も」
「だけど、不出来な次男はいつも兄貴に全部やらせてるのが辛いんだよ」
「ええと、僕…はどのポジションですか?」
「山さんは養子にだされた本当の長男」
「なるほど」
「もしさ、もし俺に魔法とかなくてお金もなかったら、皆は仲間に入れてくれなかったか?」
「そんなわけあるか! 絶対一緒に頑張るよ!」
「はい! そうです!」
「俺もそうなんだよ……。別に皆が金持ってなくても魔法使えなくても一緒に頑張りたい。俺は皆より恵まれていて魔法とか使えるから、俺は自分の出来る範囲で頑張ってるつもりだ」
「……そうですね。長男が宝くじ当てたら家族はウハウハですね。しかも仲の良い家族なら、皆んなで使い道考えるかも」
「そうだろ? そうだよな! さすがあっちゃん!」
「ふむ。長男のカオさんが宝くじで家を買ってくれるなら喜びましょうか。養子に出されてた元長男ですが、一緒に住まわせてくださいね。ヨッシー、カオさんへのお返しは今後出来る範囲でしていきましょう」
「うん…です。カオ兄ちゃん、家買ったら俺も住まわせて」
「おうおう! 皆で住もうぜ。もちろんダンとアリサとマルクもだ」
そうして俺らはギルドへ向かった。
街もギルドもだいぶ落ち着いてきている。俺はゴルダに家購入の相談をした。
「なるべく街の中央でギルドか市場に近いとこないか?あ、借家じゃなくて購入ね。ふっ、金はある。」
ちょっとドヤ顔になっていたかも知れない。
今後ギルドの仕事をしていくならギルドに近い方がいいよな?職場に近く通勤がラクなのはサイコーだ。
元いた世界で片道2時間の通勤だったのは辛い思い出しかない。
だって往復4時間だぜ?毎日4時間!だから今度は、出来ればギルドから徒歩5分圏内がいいなぁ。
部屋は、ヨッシー、ユースケ、山さん、俺、あっちゃん、ユイちゃん、ダン、アリサ、マルク(いずれ一部屋)、で最低でも9部屋か。
キックやナオリンが来た時用に客間もほしい。
教会から住み込みで何人か来てもらうかもしれない、だから…全部で15部屋くらいあるといいなぁ。
あと店をやるスペースも必要だ。何の店かは決まっていないが、資金はある。(ドヤぁぁ)
みんなでゆっくり話し合おう。
あ、あと、犬を飼いたいから(というか、俺のイッヌを出したいから)中庭みたいのもほしいな。
そこに小さい畑も作って新鮮な野菜を食卓に(あっちゃんが)並べる。うん。肉ばかりじゃダメだからな。
「おい」
妄想膨らませていたらゴルダからどつかれた。(軽くだが)
「あ、はい」
「ここに近いのがちょうど一軒あるぞ」
ゴルダはそう言ってゴワっとした紙みたいな物をカウンターの上に広げた。
「ここから2軒先だ。結構な大店の商人が住んでいたんだが王都へ移動した。以前から王都への移店を考えて準備していたらしいが、先日のゴブリン騒ぎで慌てて出て行った」
「部屋数はどのくらいだ?です?」
「今更敬語はいい、いつも使ってないだろう」
笑われた。
広げた紙を指差しながら、
「建物は三階建てだ。一階は表通りに面した店、奥側は炊事場と広めの食堂、使用人の部屋が3、それと品を保管していた倉庫が3。二階は表通りに面して窓がある家族用の部屋が5、裏側に客間が2、使用人部屋が3。三階は表側に主人夫婦のデッカい部屋がひとつ、その両側に続き間がふたつだな。で、裏側にはお妾さん用の部屋がふたつと使用人用が5部屋だったか」
「えええええ!本妻と妾が同居ぉ? 平気なんか、それ」
ビックリして叫んでしまった。周りにいた人らに注目されてしまった。
「王族や貴族は普通にあるぞ。あと今回越した商人くらいの大店になると、まぁ、たまにはある」
「えぇと、ちょっと聞くが、一夫多妻オッケーなん?」
「一夫多妻に限らずだがな」
「えええ!」
「貴族の奥様が複数の男を屋敷に住まわせるとかもよく聞く」
目が点に……、いや、ラノベあるあるだったわ。
「お前さんらがいた世界は違うのか?」
「……俺がいた国は一夫一妻だ。他の国もだいたいは…そうかな? まぁ、内緒で囲ってるってのは普通にあるか」
「お前は?」
「……………オレは! まだ! ひとりもいないよ!」
涙目で叫んでしまった。
周りから可哀想な目で見られた。いいもん。そんな目で見られるの慣れてるもん。グス。
「家の話に戻すぞ」
「はい。お願いします」
「家はそんな感じだ」
「え?トイレ、便所とか風呂は? もしかして外かぁ」
「外…と言えば外だが、この家は裏庭が広い」
そう言って目の前の紙を指さす。
「家の裏側、ここからここまでが敷地だ」
指でさされた場所に目を落とす。
なるほど、紙に書かれた家の部分に比べると裏庭はその5倍くらいの広さがありそうだ。
「この敷地は塀で囲まれているが、塀が途切れているところが裏門で、裏道に面している。ここから道を進むとすぐに上の大通りに出る。そこを渡れば市場への小道だ」
ふむふむなるほど。市場も結構近いな。やはり引っ越し先にスーパーは必須だよな。
あとは病院があれば、なんだけど、この世界に“病院”はない。ちょっとした病気や怪我は自力で治すそうだ。
冒険者などの大きな怪我は安くないがポーションを利用するそうだ。王都や大きな街は神殿に回復魔法を使える人がいるらしい。
出産は近所の経験者や産婆さんのような人がいれば頼むらしい。ちなみにあっちゃんがこの世界で見てもらった産婆さんは南門近辺の産婆さんだったので、この近辺で探そう。早急に。
「お前さん、金に余裕が出来たみたいだが? この家を買ってまだ金が残るなら、小さな馬車も買え。この家は大きな商人が使っていたから裏庭に馬車を置くスペースがある。大きな馬車でも3台は入る広さで屋根もある。馬車置き場と家は屋根で繋がっているから、雨が降っても濡れずにすむそうだ。その馬車小屋の反対側に便所、風呂、井戸がある。こっちも屋根付きだ」
おおおぅ、夢が膨らむなぁ。内見したい。
「内見…実際見てみたいな。そっちの手が空いてる時でいいから見てみたい」
「おう、いいぞ? 今から行くか?」
ありがたい。……けど、ゴルダ、ヒマなのか?たまに遊んであげようかな。




