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121話 倉庫

 開拓村の作業に参加してからは、毎晩寝るために街の教会に戻っていた。


 俺が帰ってくるまでマルクが寝ないらしく、あっちゃんから早々にヘルプコールが来るのだ。



 朝になると「お仕事に行ってくるからな」と言い、グズるマルクを置いて村へ出掛けていた。


 村の開拓もだいぶ進み、そろそろいっぺんくらい休暇を取ろうかという事になり、その日は久しぶりに一日中マルクと遊ぶため教会へと戻った。



 マルクを抱っこして向かったのは教会の中庭の奥。


 実は結構気になっていたのだ。中庭の謎の女神像。

 いや、べつに謎でも女神でもないのかも知れないのだが、ゲーム脳の俺としてはちょっと気になる。すみません、ゲーム脳とか嘘です。



 ほら、よくあるじゃん?

 銅像を右に3回左に1回回すと地下室への謎の扉が!とか、銅像のボタン(?)を押すと謎の鍵がガチャンと落ちてくるとか。


 いや、うん。妄想のしすぎだとわかっているけど、こんな異世界とかに転移したぐらいだよ?謎の仕掛けがあったっていいじゃん。


 というわけで、マルたんを抱っこして女神像まで来た。



 何か引っかかるんだよな、この像。割とどこにでもありがちな女神っぽい像なんだけど…。



「マルたん、どう思う? この女神像って何か仕掛けがありそうじゃないか?」


「むぅ? めがみたま」


「うん、そうだね。女神さまだね」


「めがみたま、おでかけ、しゅんの」


「んん? お出かけするの?」


「おかいもーいくの」


「ん? 買い物?」



 ああ、そうか。引っかかっていたのが何なのかわかった。


 この像、女神っぽいのに、何故かカバンを斜めがけしてるんだよ。デッカいカバンを右肩から左腰へ斜めに下げている。

 女神の違和感はこのカバンか。(もちろん銅像だから鞄も銅で出来てるが)


 んんん?ちょっと待て。どこかでこれと同じ像を見たような?

 いや、日本で教会なんて行ったことないから、あるとすればTVか?TVで観たのか?


 カバンをかけた女神…カバンをかけた女神…どこで見た?TV?ドラマ?ネット?パソコ……


 アアアアアアア!パソコン!ゲームだよ!ゲームのラインエイジファンタジー!

 各街の噴水前にあった倉庫女神!!!


 そおこぉめがぁみぃぃ!


 マルクを抱っこして像の周りをぐるぐる回った。


 待て待て、落ち着け!俺、ぬか喜びかもしれん。だが、この銅像がゲームの倉庫なら!倉庫ならああああああああ。


 ゲームだとマウスでカーソルを合わせてクリック、なんだけど。とりあえず触ってみるか。どこを?


 そっとカバンに手を触れた。


 

ブインっ



 目の前にステータス画面のように半透明なアイテム一覧が開いた。


 ゲームの時の俺の倉庫だ!

 俺のキャラの、WIZ、ELF、DKN 3キャラ分のアイテムを突っ込んでいた俺の倉庫だ!


 あのゲームではプレイキャラの所持荷物の容量制限がかなり厳しく、その分倉庫に物を貯めていた。


 しかも、無課金の俺にしては珍しく課金で倉庫の容量をかなりUPさせて使っていた。

 WIZは持てない分、仕舞っておくしかなかったからな。



 アイテム一覧を眺めながら当時の記憶を呼び覚ましていた。ポーション結構保管していたんだ、俺。スクロールも山ほどある!武器に防具にアクセサリー。


 それとWIZには必須の魔石!よかったああああああ。魔石必須の魔法とかあるからな。

 そうだ、使わないドロップアイテムも全部突っ込んでいたっけ。



「マルたあん、やったぜぇ、ヒャッホーオゥ」



 抱っこしていたマルクを高く持ち上げたり、そのままぐるぐる回ったり、マルクのプクプクほっぺにチュッチュした。

 マルクはキャッキャと喜んでいた。


 おお? おおおおお!そして何より金がある。138,520,000.G

 結構金持ってたんだな、俺。


 あ、そうだ、思い出した。『(いにしえ)シリーズ』を揃えたくて貯めてたんだ。


 いにしえの帽子、いにしえのローブ、いにしえのブーツ、いにしえのマント……までは揃えたんだが、最後の『いにしえの杖』がめちゃ高すぎて入手困難だったのだ。


 いにしえシリーズは5個揃えてこそものすごい効果を発揮するのだが、残念……、杖はない。


 だが、問題ない。そもそもゲームで『いにしえの島』で狩りをするのに必要な5点だったからな。普通に生活するのにいにしえシリーズはいらん。



 ふ、ふふふふ。このお金があれば借家どころか家を購入しても有り余るな。


 とりあえず倉庫から自分のアイテムボックスに移動しておこう。出せなくなると困るからな。

 出せなく…ッファ!


 30G無ええええええええええええええええ!教会の食費で渡しちまった!マジか?嘘だろ?嘘と言って!

 誰か30円恵んでくれえええええええ



 orz状態で俺は膝をついて項垂れた。ちょびっと涙が出てきた。

 頭をポンポンと叩かれたので顔を上げると、マルクが俺の頭を撫でていた。



「いたぁの? よちよち」


「マ、マルたぁぁぁん」



 くっ、ここに来て『倉庫から出せない事件』に発展するとは!

 ゲームなら、倉庫の周りにはいつも大勢のプレイヤーで賑わっていて、誰かしらが30円、いや、30Gを恵んでくれたのに。


 ゲームを思い出した時、あれ?30G無いと倉庫開かなかった……よな?

 目の前には開いた倉庫、そこに見える俺のアイテム(とお金)。


 …………これ、出せるんじゃね?『138,520,000.』のところを触る。


『金額を提示してください』の文字が表示された。ぜ、ぜぜぜ全額で、と心の中で提示した。だってパソコンじゃないからキーボード無いし。


 俺のアイテムボックスに来た!全額来たあああああああああ!


 俺は喜びのあまり地面をゴロゴロ転がった。

 それを見たマルクも真似してゴロゴロ転がってキャッキャと喜んでいた。


 マルたん、俺たち今日から大金持ちだぜ。





「こらぁ、ふたりとも何やってるの! 泥だらけじゃない」



 俺たちを探しに来たあっちゃんに怒られた。

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