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112話 社員の身の振り方 開拓したくない人

 部長は皆の顔を見回した。



「では、今後開拓に参加するのは、今手を上げた18人と長谷川くんの19人でいいかな」



 手を上げてた人は頷きながら手を下ろした。



「で、残った人らは自分の身の振りをどう考えている?やまと商事という会社はもうないぞ。脱走組の51人が帰らぬ人となった事からも分かる通り、街の外はかなり危険だ。やまとビルに戻るのは至難の技だ」



 山さんの話を黙って聞いていたが、実はビルに戻るのは簡単だ。俺にとっては。


 ビルを出る時にそこをブクマをしてあるのでエリアテレポートで皆んなを連れて戻るのは可能だ。


 だがビルの周りの森やフロアの中にもモンスターが徘徊していたし、

あそこに皆を連れていって皆を守るのは、それこそ至難の技だ。

 それに、そこまで”やってあげたい“とも思えないしな。



「それにビルに戻ったとしてもそこでずっとは生きていけないぞ」


「でもぉ、あそこには、防災グッズがあるはずでぇ。51人死んだから その分の食糧がうくからぁ、結構イケるはず?」



 み、三好今日香、どうなってる、こいつ抜け目ねぇ。どんな世界でも生きていけるんじゃね?


 まぁ、あそこに防災グッズはないけどね。俺が持ってるから。言わんけどね。チラっとあっちゃん達に目を向けると目があって、念話が来た。



『みんな! カオッチが防災グッズ持ってる事、絶対言っちゃダメだかんね』


『はい! わかってます!』


『三好さんすごく怖いんですけど』


『え? カオさん職場の防災グッズ持って出たんですか?』



 ああ、そうだった。

 新田さんとキックとも念話を繋げたままだった。


『さすがですね、カオさん』


 キックから感嘆のお言葉を頂戴した。



『あとで詳しく話すよ』


『いやぁ、さすがカオくんだ。あの状況で防災グッズを持ち出したとは! 冷静な判断だ』



 山さんとも念話が繋がってたっけ。


 山さんは俺らの念話の内容も鼻にかけずに話を続けた。



「で、残りの君らはどうするつもりだ?」



 手を上げなかった面々を見た。

 1係の中堅7名と6係の中野、小川、あと三好今日香か。


 誰も返事をしない。何も考えていないのか、また誰かに頼ろうとしているのか、それとも、本当に考えている最中なのか。(いや、それはない)



「あの……神殿チームはどうしてるんですか?」



 小川さんがおずおずとした感じで口にした。



「神殿チームはギルド、あぁとハローワークのような所に登録して日雇いの仕事で稼いでる、感じか」



 小川さん達が俺らを見たのでうんうんと頷いておいた。



「ただ、元の世界のような事務仕事はほとんどない。街でも身体を張る力仕事がほとんどだ。開拓村よりラクが出来るとは思わないほうがいい」



 山さんが付け足した。じゃないと絶対勘違いするだろう。

 ハローワークでラクチン座って出来る事務仕事〜なんて考えたのが顔に出てたよ、君ら。



「この街に残ってハロワ…えと、ギルド?に登録します」


「私も」


「「「「「「「私も」」」」」」」


「ん〜〜、じゃ私も?」



 小川さんが答えたのに続けて残りの皆んなが返事をした。怪しいなぁ、こいつら。あれほど山さんが言ったのに、自分で考えて決めてなさそうだ。



「では後日 ギルドまで案内をする。今はゴブリン氾濫の後始末でギルドが慌ただしいからな」



 そこで俺は口を出した。



「この際、開拓村組もギルド登録をしておいてはどうですか?街での身分証にもなるしあって困るものじゃないし」


「おっ、そうだな。そうしよう。さすがカオくん」



 山さん、恥ずかしいからちっちゃい事で褒めないで。



「で、仕事はギルドでもらうとして住む場所はどうする?」


「え?ここでこのまま住めないんですか?」



 中野さんが驚いた顔をした。



「そもそも神殿は人が住む場所ではない。あの時は救済措置としてここにひと月お世話になったが」


「救済期間は終了しました」



 扉のすぐ外に神殿長がいたようで、ハッキリと宣言した。



「私達はあなた方がこの街に馴染むようにひと月預からせていただきました。食費も領主より頂戴しておりました。開拓村へもひと月分の食糧は送り続けたはずです。そのひと月を無駄にした方々の面倒を見るようには言われておりません」



 冷たいようだが全くその通りだ。


 中野さんらはお互い顔を見合ったり、山さんへ縋るように目を向けた。



「あのぉ、石原さんたちはぁ、どうしてるの?どこに住んでるのぉ?」



 三好今日香、本当に抜け目ない。怖い怖い怖い。

 が、そこは今、触れてはいけないところなのに触れたな?


 あっちゃんが目を細めた。逆にヨッシーがカッと目を見開いた。



「俺達はあ! 働きながら! 借家に住んでたけど! 土屋らに乗っ取られた!んだよ!」



 ヨッシーが語尾を強めて言った。



「あんの糞ババア」



 あっちゃんがよく通る高い声で言った。



「へぇ〜土屋さんたち、家に住んでるんだぁ」



 三好今日香がボソっとつぶやいたのを俺は聞き逃さなかった。

 良かった。多分、三好のターゲットは土屋に移ったとみた!

 よっし!三好vs土屋、俺たちの見えないところで頑張ってくれ。



「家借りるお金が貯まるまではスラムの空き家で寝泊まりするしかないですね」



 ユースケがふと思いついたように言った。俺たちはダンやアリサからスラムの話を聞いていたのでそれもありかと思った。

 今回ももし教会で断られたら俺たちもスラムに一旦落ち着こうという話をしていたからだ。



「あとはギルドで住み込みの仕事を探してもらうとかですかね」



 ユイちゃんも考えていた事を口にした。もう、ホンっと俺らってエラくね?

 本来は自分で考えなさいねと部長が言ったのにもかかわらず、相変わらず考えられない人達の代わりに俺らが考えてヒントをあげるって、

俺らイイ人。


 というか、俺たちはしばらくここにいるので、早く出ていってほしいというのが本音、だ。


 神殿長も深いため息をひとつついた。



「本来はすぐに出ていってもらうところですが、今回はゴブリン氾濫でギルドが通常業務を行っていない、ということもありますので、いいでしょう。ギルド業務再開までここで寝泊まりしてください」


「ありがとうございます」

「すみません」

「ありがとうございます」



 咄嗟に御礼を口にしたのは開拓村チームの面々だった。



「開拓村に帰る皆さんはもちろん街道が落ち着くまでここにいてくださってかまいませんよ」



 長谷川さんらに向かって神殿長が優しく微笑む。山さんが慌てて中野さんらに向かって叱った。



「ほら、ちゃんとお礼を言って!ギルドの登録までここにいて良いって言ってくださったんだから」



中野さんらは自分らが何故怒られているのかも理解しておらず、なぜかムッとしたままゴニョゴニョと返事をしていた。



 ああ、この人たち、ダメだな。救いがない。すぐに……きっと。

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