103話 閑話 借家のやまと社員
少し時間は戻りその日の午前、乗っ取られた借家
-------(土屋視点)-------
昨日の夕方からハケンが戻ってこない。
やうやく身の程をわきまえて出て行ったのかしら。
頑張って仲間を集めた甲斐があったわね。
ちょっと集めすぎて家が手狭になったけど、男性はリビングで雑魚寝すれば問題ないわ。
あのハケン、石原さん達に取り入ってたのは気に食わないけど。
あら?そういえば石原さんや中松達も見ないわね。一緒に出て行ったのかしら。
それはそれで結果オーライだわ。何しろ6部屋しかないから出て行ってくれたなら万々歳。
どっちにしても私は個室にさせてもらったけどね。
どさくさに紛れて中倉も個室を占拠したのは驚いたわ。抜け目ないわね、ホント。
さっきから台所を探しているのだけど、食べ物が何も見当たらない。
お腹がすいたわぁ。そうだ!どこかに食べに行こうかしら。
昨日みんなで夕飯を食べた時に払ったお金の残りがまだ少しあるのよ。でもみんなの分はないからこっそり行こうかしら。
気づかれないように静かにドアを開けて外に出た。
あら?何か、静かね。都内の日曜日の朝のよう…。
そんなに早い時間じゃないわよね?いつもは人でゴミゴミしてた道も、今日は人がいないわ。
見ると道の両側のお店や家の窓がしっかりと閉められている。木の雨戸のような物が閉めれている。
少し歩いて昨日の夕方に入った食堂まで来た。
朝食も美味しいって話を聞いたから来てみたけど、ここも閉まっている。定休日?街全体が?
店の前でキョロキョロしてたら横道からお爺さんが足早に出てきたので声をかけた。
「すみません、ちょっとうかがいますけど、今日は街中みんなお休みですか」
「あ?」
お爺さんは怪訝な顔をしながら足を止めてこちらを見た。
あら?ちょっと怖そうな人かしら。
「あ、あの、朝食をいただこうと思ったらお店がやっていないので」
「アンタ何言ってんだ、鐘を聞かなかったのか」
「かね?」
「朝から何度も鳴ってるだろ、警鐘の鐘だ。ホラ、アレだ」
話してる最中にも遠くから鐘の音が響いた。
カーンカーンカーンカーン……
「危険な魔物が近くに出たか、何かわからんがとにかく早く隠れるこった」
お爺さんはそう言うと足早に去って行ってしまった。意味不明だわ。
お腹空いたけど戻った方がいいかしら。
家に戻ると中倉がリビングに降りてきていた。
「おはよう、土屋ぁ……何か鐘の音が煩くて眠れなかった」
鐘の音は陽が登ってだいぶしてから鳴り出したから、アナタ結構寝てるわよ。相変わらず図太い性格ね、中倉ってば。
「ねえ、食べるもんないのー? お腹空かない?」
「空いたけど、無いわよ」
「えーじゃ、外に食べに行こうよ」
「それが今日は街中休みみたい」
「え? 祝日?」
「さあ? 何かあの鐘がなったら自宅にいた方がいいみたい」
「え? じゃあ朝食どうするの?」
「知らないわよ」
そう言い捨てて私は二階の自分の部屋へさっさと退散した。中倉がギャーギャーと騒いでる声がリビングから聞こえていた。
ハケンを追い出して清々したと思ってたけど、失敗したかしら。
こういう時に使いっ走りがいないって面倒ね。そうだ!中松にメールしてハケンの居所を聞こう。
中松とか石原さんならハケンと一緒にいそうだし。
そう思い、あの変な画面のフレンド一覧を見たら、石原さん達が一覧から消えていた。
あら?フレンド登録したわよね?
まさ、か、削除したの?
……………、失礼なやつらね。もういいわ!
はぁ、お腹空いた。




