第47話 明音編 6 終
わたしは今とても幸せ。
私の事を肯定してくれる唯一の人。
笹倉草太……いや、アロン君に出会えたのだから。
だから……だから私は幸せなんだ。
みんな私から離れていった。
友達も家族も、幼馴染も…。
わかってるわよ…全部私の自業自得だってことくらい。
でもだって仕方ないじゃない…
今更どうしろっていうの…
琢磨に謝ろうとした事だってある…
でも謝ってどうなるの?
仮に琢磨に謝ったとして、それでどうなるのか…。
琢磨は優しいからきっと許してくれると思う…。
でも私達の幼馴染としての関係は明確に終わった。
私が終わらせたのだ。
昔の様に仲良しこよしとはいかない。
まずそんな関係、私が望んでいない。
私は優しい言葉で甘やかしてくれる…大人の異性を求めてるんだ。
それを自覚した時、琢磨では物足りなくなった。
いつまでも子供で甘えたがりな琢磨に魅力を感じなくなった。
だから…智也が現れなくてもいずれ私は琢磨と別れていただろう。
それでも幼馴染としての関係が拗れることは無かったと思う。
多少はギクシャクしても、大人になってからあんな事もあったねと笑い合う日も訪れていたかも知れない。
そんな未来を壊したのは他でもないこの私自身だ。
私と琢磨は完全に違う道を歩んだ。
私の歩む道は地獄だ。
後ろ指をさされ、ビッチの称号を押し付けられ、不特定多数に肌を晒し喘ぐ姿を見られている事を危惧して生きていかなくてはならない人生を私は歩まないといけない。
顔を隠し、容姿を変えた所で気付く奴は気付く。
私にVチューバーを勧めて来た三浦先輩がそうだ。
アイツはある日を境に私に関わらなくなった。
今にして思うのはアイツは私に復讐したくて私をVチューバーに誘ったんだ。
自分が手掛ける箱に私なんかを誘ったのは多分私を試すため…、
三浦先輩は最初から私が個人を選ぶと確信してたんだ。
だからわかりきった質問をして私を試した。
いや、実験したんだ。
そして私は見事に彼の罠にハマった。
三浦先輩は私の性格から炎上して私がネットの玩具になると確信していたんだ。
まぁ…それでも炎上したのは結局は私の自業自得。
琢磨の事も、智也の事も…拡散動画もVチューバーで炎上した事も全部が自業自得。
わかってるわよ…わかってるわよ!そんな事…
でも私は…私だって…幸せになりたい…。
もう嫌だ…後ろ指差されるのは…もう嫌だ…
お腹が痛い…胃がキリキリする…
ストレスで抜け毛がヤバい…目の下のクマも…ヤバい。
逃げ出したい…
私をいじめないで…
私を笑うな…私を見るな…私をオカズにするな…
[でもサーヤが配信をまたしてくれる様になってよかったよ。]
[応援してるけど無理しないでね、自分を大事にする事を忘れないで。]
「僕に、とってサーヤの配信が生きる活力なんだ…だから続けて欲しい…でも辛かったら無理しないでね、サーヤの体が一番大事だからね」
温かいコメントだ。
こんなにも温かい言葉をかけられた事があったか…
こんなにも心安らぐ瞬間があっただろうか…
もうアロン君がいてくれたらそれでいい。
彼の為に…彼だけの為に配信しよう…
彼のためだけに生きよう。
そう思える程に私の心に彼は大きい影響を与えた。
だから迷わなかった。
聖剣アロンダイト
[突然申し訳ありません。
僕は貴方のファンであり1リスナーである聖剣アロンダイトと言う者です。この様な形で連絡する事に驚かれるでしょうが信じてもらえたなら幸いです。僕は〇〇大学の〇〇学部に所属している者です、もし、信じてもらえるなら直接会ってお話がしたいです…勿論無理にとは言いません。
見ず知らずの者の言葉を信用できないのは当然の事ですし無理強いするつもりもありません。
だから会うか会われないかはそちらに一任します、勿論会えなかったとしてもファンで居続けていく事には変わりありません。
突然の無茶振り申し訳ありませんでした。]
涙が出た。
アロン君だと…疑いすら…疑う発想すら無かった。
温かい文面から本人だと直ぐにわかった。
彼は実在して、私の近くで見守ってくれていたんだとその奇跡に咽び泣くほど神様に私は感謝した。
神様なんて信じてないけど…。
実際に会ったアロン君は…笹倉草太は凡庸な見た目の冴えないモブ男だった。
琢磨よりもさらに影が薄そうでブサメンではないけどイケメンなんかでは当然なく、良くも悪くも普通の地味な青年だった。
智也とは真逆の…まぁ…陰キャのオタクらしい見た目の男だった。
昔の私ならまず関わらない、それどころか笑ってこき下ろしてる…最底辺のラインに位置するモブ。
それでも私はアロン君が実際に実在する事実が泣くほど嬉しかった。
彼は私を受け入れてくれた。
私がずっと欲していた言葉を放ってくれる。
見た目が地味でモブ顔でも、今の私なら受け入れていける。
今の私は…幸せなんだ…。
満たされている。
満たされているんだ……。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
「いいのか?今は良くても彼女…多分そのうちお前を裏切るぞ?」
僕に三浦はそんな危惧とも取れる言葉を投げかけてくる。
彼なりに心配してくれてるのだろう。
やはり友人とは良いものだ。
「彼女を僕に紹介してくれたのは三浦だろ?その言い草は可笑しかろう?」
「まぁ…そうなんだけど…」
「別に大丈夫だよ…今が楽しければね…その日が来るまで夢を見てるつもりでいるよ」
僕に彼女が出来た、しかもそれがネット上の推しだとかまさに過ぎた夢だ。
彼女の性格的に浮気されるのはほぼ間違いないだろう。
僕と初めて会った時の…あの対面時の明らかかつ露骨ながっかりした顔はそれなりに堪えた。
所詮彼女はリアルな人間。
精神的に弱ってる今は僕に…いや、アロンダイトに依存していても立ち直ればまたスペックの高い男に依存先を変えるだろう。
それがわからない程に僕は馬鹿ではない。
彼女は良くも悪くもそういう人種だ。
僕に惚れてるわけでも好きになったわけでもない。
依存してるだけ。
薄っぺらい愛に飢えてるだけなんだ。
悲しいけどそれが事実だ。
それに…。
不思議と辛さはない。
勿論悲しさはある。
でも、Vチューバーを推すとはそういう事だ。
僕はVチューバー暁サーヤが好きなのであって夏芽明音に恋してるのではない。
アレ等は似て非なる別物なんだ。
良くあるだろ?
推してるVチューバーを他の石油王リスナーに取られたとか、まだそれなら良くて、他の有名男配信者と裏で繋がりがあり、本当は付き合っていて、肉体関係にあったなんてよくある話だ。
それに…
「まぁ…お前がそう言ってくれるなら良かったよ」
「あぁ…それに僕に会った事で彼女、配信をしなくなった…その時点で彼女に価値はないしね…」
彼女は暁サーヤに戻る事はない。
暁サーヤをやるメリットがもうないのだから彼女が配信者を続ける理由がないのだ。
その時点で僕も彼女に価値を見いだせなくなった。
付き合い始めて彼女という存在の面倒くささが骨身に染みてきてるしね。
ワガママや自分本位な考えが多い彼女にげんなりさせられる事は非常に多いのだ。
幻想をブチのめされる要素としてはそれで十分だ。
別れる時はお互い後腐れ無いだろうと確信してる。
まぁ…いい思い出になったよ、DTも捨てられて一つ大人になれた気がする。
我ながらクソ野郎な自覚はあるけど、それはお互い様というやつだ。
だからその日が来るまで僕はこのごっこ遊びを楽しくエンジョイして行こうと思う。
あとがき───────────────────────
これにて終わりです。
作者的にはやり尽くしたと思うのでもう特に書く事も無いとは思いますが何かリクエストがあれば気が向けば続きを書くかも知れないです。
作者が書いた別作品
俺を裏切った過去がある元カノの幼馴染みと会社のオタサーの姫感ある地雷系美女な後輩が俺に擦り寄って来るのだがどうするのが正解なのだろうか?
の佳代編から愛梨をゲスト出演させているので興味のある方は是非。




